神官戦士長オブライエン
俺の名はオブライエン。
今年で四十のオッサンだ。
生まれた家は貧乏だったが、いまはそれなりに裕福な暮らしをしている。
三十と半ばで、妻を迎えることもできた。
子供も一人いる。
幸せだ。
そんな俺の仕事は、神官戦士長。
そう、長。
レイワイト王国の神官戦士団のトップ。
この俺が?
などと俺がもっとも驚いている。
あと、回復魔法も使えるようになった。
それもこれも、あの恐ろしい体験をしたからだろう。
いや、あの黄金に輝く英雄の率いる軍の一員となるために訓練に励んだからかな。
神は見ていてくださる。
努力は裏切らない。
さて、俺の話をするなら欠かせない、目のことを言っておこう。
俺の目は【弱者の目】と呼ばれる特殊な目だ。
相手の力を察することができる。
まあ、自分を基準に見たものを強い弱いと判断する程度だ。
しかし、この目によって俺は数々の危機を切り抜けてきた。
頼りになる相棒だ。
ただ、頼りにしすぎちゃいけない。
矛盾しているかもしれないが、この心構えは大事。
すごく大事。
そして、最近になって自分より強い者は少なくなったけど、慢心は駄目。
油断は禁物。
そうでなければ、黄金に輝く英雄の率いる軍の一員にはなれないだろう。
そんなふうに常に自分を戒めながら訓練をしていると、警備の話がやってきた。
まったく。
予定にない仕事を。
三人の王たちが、来賓をもてなすのね。
その会場の警備。
はいはい、お任せあれ。
まあ、直前でなく数日前に連絡をくれるだけましか。
妻と子には、その日は遅くなるとしっかり言っておこう。
神官戦士団の警備場所は、会場周辺だった。
なので、いつもの鎧姿。
武器は剣を腰に。
まあ、使うことはないだろうけど。
控室も準備してもらったので、交代で休憩しながら夜まで警備。
食事は自前で用意した。
どこかに任せると、毒が仕込まれた場合に困るからな。
それはよろしくない。
おっと、来賓が会場入りする。
コーリン教の重要人物との話だが……
フーシュや、フーシュの息子まで同行するクラスか。
まだ若そうだが……
んんん?
俺の目が焦っている。
【弱者の目】が焦る。
なるほどなるほど。
そして思い出した。
一瞬だが、目にした覚えがある。
あの村で、黄金に輝く英雄の近くにいた幼児だ。
当時はそこまでではなかったが、いまは黄金に輝く英雄に近づかんばかりの光を発している。
うむ、素晴らしい。
……
あー、副官。
信用できる部下を数人つれて、あの来賓の周囲につけ。
そうだ。
フーシュの横にいる者だ。
会場内は俺たちの警備対象外?
武器は持ち込めない?
知っている。
だから警備ではない。
礼服に着替え、周囲にいるだけでいい。
責任は俺が持つ。
行け。
そして、なにかあったらすぐに俺に連絡を頼む。
なにごともなければいいのだが……
まあ、トラブルが起きるよな。
わかっていた。
ああいった光を発している者は、トラブルに巻き込まれやすい。
騒がしい会場内から、副官が飛び出してきた。
「報告!
フーシュさまが王子たちを相手に暴れています。
止めるために会場内に入りますか?」
……待て。
なぜフーシュが暴れた?
原因は?
「例の来賓と、王子たちの会話です」
会話だけではあの女は暴れんだろう?
「来賓が村長を目指すと言ったのを、王子たちが笑ったのが気に障ったようです」
……
なるほど。
なるほどなるほど。
よし、神官戦士団全員に通達!
俺たちはフーシュ側につく!
「え?
ほ、本気ですか?」
本気だ。
総員、抜剣!
行けっ!
王子たちを捕えろ!
邪魔する者はすべて排除だ!
縛ってもかまわんが、絶対に殺すな。
殺すのは俺がやる。
なかなかの難事だった。
やはり、王たちを護衛している衛兵は強いなぁ。
コーリン教に腰が引けていたので倒せたが。
だが、コーリン教のお偉いさんからストップがかかったので、王子たちの首は切れなかった。
そこは残念。
あ、いや、違う。
これでよかったんだ。
激情に任せて処刑すると、来賓……アルフレート殿が気にしてしまうかもしれないからな。
うむ。
法の裁きに任せたい。
ん?
どうした副官?
なにかあったのか?
「コーリン教と王国から、調査官が来ました。
今回の事件の聞き取りをしたいと」
おお、そうか。
調査官は調査が仕事。
協力するように。
嘘は駄目だぞ。
すべてを正直に。
俺があと少しで王子たちの首を取れたとこも、しっかりと伝えるんだぞ。
俺が処刑される可能性?
そうなったらちゃんと逃げるから、気にするな。
後日。
歩いているアルフレート殿を見た。
おおっ、自信に溢れる姿。
素晴らしい。
「あの戦士長?
似てますけど、彼はアルフレート殿じゃないでしょ?」
いや、アルフレート殿だ。
「身長とか全然、違うじゃないですか?
兄とかですって」
副官は細かいことを気にするなぁ。
だが、俺の目はごまかせない。
アルフレート殿だ。
「しかし……」
納得できない副官を止めたのは、いつのまにかいたフーシュ。
「彼は成長したのです」
なるほど。
素晴らしい。
「いやいやいや……」
副官がまだ納得していないようだが、気にしない。
うん。
楽しくなりそうだ。
宰相 「誰?」
フーシュ「成長したアルフレートさまです」
宰相 「いやいやいや……」
副官 「ですよね。ですよね」
貴族娘A「誰です?」
フーシュ「成長したアルフレートさまです。近づかないように」
貴族娘A「(私好みに成長してくれたのですか!)」
貴族娘B「(前の姿も嫌いじゃなかったけど!)」
貴族娘C「(いまの姿も素敵!)」
副官 「(う、受け入れるのが早すぎる。これが貴族の柔軟性)」




