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いつの間にか眠ってしまったのだろうか?
父の帰る物音で目覚めると、辺りは真っ暗だった。夢の内容は良くは覚えていなかったけれど、とても嫌な夢だった。
「ルーチェ、いるのか」
父親の声は、不安げだった。
「父さん、ここにいるよ」
ルーチェは起き上がり、、ベッドの端に座った。
「そこにいたのか」
ミロンドはランプに明かりを灯した。
「うん、寝てた」
「そうか。遅くなったな。食事買ってきたから、一緒に食べよう」
「ねぇ、父さん。母さんは大丈夫?」
ルーチェは父の顔を見た。
ミロンドは少し困ったような顔をしていたが、ルーチェに向かい合うようにしてしゃがみこむと、
「今は落ち着いて寝ているよ」
ルーチェの顔を見て言った。
「母さん、元気に、なるかな……?」
父親の顔を見た瞬間、今まで抑えてきたものがこみ上げてきた。
途中から、言葉にならなかった。
ミロンドはルーチェを抱きしめた。
ルーチェは父の腕の中で思い切り泣いた。今まで泣き虫だったけど、これ以上に泣いたことがないくらいに、泣いた。
自分の涙で、あの嫌な出来事を全て洗い流したかった。狂ったように泣き叫ぶ母の姿など、見たくなかった。昨日からの続きの、元気な母の笑顔が見たかった。
「きっと大丈夫だよ。元気になるさ」
ルーチェがひとしきり泣いて落ち着いた頃、ミロンドが言った。
「だから、たくさん食べて元気をつけておきなさい。いつまでも落ち込んでいたら、母さんだってきっと悲しむからね」
父の言葉に、ルーチェは泣いて腫れぼったくなったまぶたをこすりながらうなずいた。