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サイラス達と一緒にルーチェは自分の部屋へと戻った。
「ルーチェ、1人じゃ寂しいだろ。こっちにいるかい?」
サイラスの申し出に、ルーチェは首を横に振った。
「……1人でも、平気だよ」
笑顔が、作れなかった。
「そうか。寂しかったらいつでも来ていいからな」
サイラスの言葉にありがとうと礼を言うと、ルーチェは自分の部屋に入りドアを閉めた。
それからそのまま、ベッドに突っ伏した。
心にぽっかりと、穴が開いた気分になった。何もする気力もわかない。泣くことさえもできない。いっそのこと、大声で泣きわめくことができたなら、すっきりするかもしれない。
心臓の鼓動に合わせて、傷がじんじんと痛んだ。いつもなら少し転んだだけで、大げさに泣いて甘えたが、今は傷なんてどうでもいいことだった。
昨日のこと、今朝のことすら、遠い遠い出来事のように思えた。夜の提灯、人の流れ、ハサナン人の男のニヤニヤ笑い、寒気、母の声。そんなものが渾然一体となって、ルーチェの頭の中をかき回し続けた。