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「おかげでたくさん楽しめたよ。ありがとうな」
しばらくして3人の男は、ニヤニヤ笑いを浮かべながら立ち去っていった。
それを合図として、口々にアイリーの名を呼びながらみんなが一斉にかけ出した。
アイリーは大きな木の根本に座り込み、裸のまま自分の服を掻き抱きながら泣いていた。
「だめ、みんな来ないで。誰も来ちゃだめ」
仲間の姿を見るなり、アイリーは長い髪を振り乱しながら泣き叫んだ。
「母さん……」
いつもと違う母の様子に、ルーチェはその場で立ち尽くすほかなかった。
「来ないで。誰も見ないで。いや!!」
手がつけられない程に泣きじゃくるアイリーを、ルネとサーシャがなだめていた。
「ルンカの病院が近くにあったはずだ。そこまで運ぶんだ」
サイラスが指示を出す。
ルーチェの頭の中は、ぐちゃぐちゃだった。
こんな狂ったような母の姿を見るのは、初めてだった。ルーチェの知っている母親は、いつも穏やかで、静かで、優しかった。たまには叱られる時があるけど、こんなではない。あの3人組は、母に何をしたというのだろう。
「いやよ、来ないで。触らないで」
暴れるアイリーをミロンドがなだめながら抱きかかえ、去っていった。ルーチェはそれを、まるで他人事のように眺めていた。
「ソルシェ、ルーチェ、部屋に戻ろう」
オーレンが声をかけてきた。
ルーチェはそれをぼんやりと聞いていた。
「ルーチェ」
フェルセがルーチェの手を握ってきた。
ルーチェはフェルセの手を握り返した。