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プラティズ レコード  作者: 荒屋敷ハコ
第2章 ~セレン~
36/36

2-15

                  15

「俺達はこれから出発するから、元気で旅を続けるんだよ」

 次の日の朝、宿の食堂で朝食を食べていると、ミロンドさんがやってきた。

「どこへ行くの?」

 ルーチェが顔を上げた。

「ルマ川を下って、ラーデンへ出るつもりだ。ルーチェは?」

「テスからウティへ向かうつもりだよ」

「そうか、気をつけてな」

 ミロンドさんはうんうんとうなずいた。

 相変わらずのいい男だよね、ミロンドさんって。大きくて、優しくて。ちょっぴり渋めで、強くて。

 あたしはミロンドさんの横顔を見ながら、ぼんやりと考えていた。

 そのいい男ぶりから、男女問わずファンが多いんだとか。そんなミロンドさんに愛された、アイリーさんはどんな気持ちだったのだろう。

 あの日、不安になっていたあたしに声をかけて、おまんじゅうをくれたアイリーさんの事を思い出した。朝霧のような、美しさの中にもはかなさをもった人。

 それに、アーディンの演奏はすごかった。未だにあの演奏以上のものを、あたしは聞いたことがない。今なら、体が勝手に動き出してしまうレベルだよね。もしかしたら聴き入っちゃうかもしれないかな。

「……しておいてね」

 ルーチェがあたしを見ていた。

「ん?えっ?なに?ちょっとぼうっとしてた」

 あたしが訊き返すと、

「全く。また寝てたんだろ」

 ジトッとした目で見られた。

 その一人息子、ルーチェはあたしの近くにいるが。

 すっごく身近な存在なので、よく分からない。ただの友達って感じ。

「寝てなんか、いません」

 あたしは反論した。

「はいはい。で、こっちもそろそろ旅立つから準備しておいてって、言ったの」

 ルーチェがもう一度言ってくれた。

「あの、ミロンドさん」

 ニーナが立ち上がった。

「ん?何だい?」

「あの……母のこと、よろしくお願いします。私、母のことをずっと憎んでいたんです。だからあんな事言っちゃって。でも、本当は、母は寂しがっていたんじゃないかって……」

 最後の方は、言葉になっていなかった。

「大丈夫だよ。サーシャさんはそんなに弱くはないよ。ニーナちゃんも、大変だったね」

 ミロンドさんはそう言うと、ニーナの肩をぽんぽんとたたいた。

「はい。どうもありがとうございます」

 ニーナは涙を拭うと、しっかりとした声で言った。

「じゃあな」

 ミロンドさんはそう言うと、片手を少しだけ上げて手を振ると、食堂を出て行った。

「……俺達も準備して、出発するか」

 ミロンドを見送った後、エフェルが言った。

「ウティ、楽しみだね」

 リュシェーナがうっとりと言った。

「なにが一番楽しみ?」

 レイシアが訊いてきたので、

「それはもちろん、おいしいもの!!」

 あたしは自信を持って答えた。




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