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プラティズ レコード  作者: 荒屋敷ハコ
第2章 ~セレン~
32/36

2-11

                  11

 プラティ族は、旅を続けなくてはいけない。

 てな訳で、サピドゥルの首都、シュロスタを抜け、北上することにした。目指すは隣国のウティ。何と言ったって、芸術と美食の国だもんね。おいしいものたくさん食べたいし、新しい衣装だって揃えたい。

 なので、ウティまでの連絡船が出ているテスの街がとりあえずの目的地。距離としては、馬車で10日くらいかな。

 シュロスターテス間は、プラティ族がよく通る道なので見慣れた感がある。あと、他のパーティにも出会いやすいんだよね。

 夏の光がさんさんと降り注ぎ、昼間の旅はきつい時期になってきていた。幌の中にいれば少しはましだけど、馬たちは大変だと思う。

 森の中に入ればまだましになるとは思うけど、周りにはそんなものはなく、畑ばかりが広がっていた。

 行けども行けども同じ景色に飽きて、アーテルは馬車の隅で伸びきっていた。その隣でララが寝息を立てていた。彼女は昨晩一睡もせずに火の番をしてくれていたので、眠いに違いない。リュシェーナは一番後ろで、飽きもせずに景色を眺めていた。

 ルーチェはアーディンでのんびりとした曲をかき鳴らし、あたしは衣装の繕いをしていた。

 大きく変わったのはレイシアの位置で、今まではエフェルと一緒に御者席にいたが、すっかりニーナに奪われてしまっていた。今は静かに薬草の整理とかしている。

 どうやらエフェルはニーナに一目惚れをしてしまったらしい。何かというと、エフェルはニーナの近くにいたがっている。

 ニーナもそれを嫌だと思っていないみたい。むしろ、嬉しそうにしている。

 ニーナは美人だし、エフェルもいい男といえばそうなので、2人並ぶと絵になる。

 かわいそうなのはレイシアの方で、あたしやルーチェと一緒にいることが多くなった。仲の良いエフェルトニーナを見る度にため息をつくレイシアを、何とかしてあげたいんだけどね。

 ちなみに、あたしもルーチェも、お互い好きだから一緒にいるわけではないんだよ。まぁ、弾き手と踊り手という関係だからっていうのはあるけど。ララとリュシェーナ、エフェルとレイシアというコンビを組んでたから、お互いずるずると一緒にいるわけ。

 ヒヒーン、ブルルルッ

 馬がいななく声とともに、馬車は急停車した。

「どうした?」

「どうしたの?」

 あたしとルーチェはほぼ同時に、馬を御していたエフェルに訊いた。

「矢が、飛んできたんだ。ちょっと様子見てくる。ニーナは幌の中に入ってて」

「分かったわ。気をつけてね」

 心配そうにニーナはエフェルを見送った。

「私も行くわ」

 さっきの衝撃で起きたのだろうか?

 ララが弓矢を手に取ると、馬車を降りた。

「リュシェーナ、何か気付いた?」

 ルーチェが訊くと、リュシェーナは首を振り、

「馬車の後ろだけを見ていたから、何も分からなかったよ」

 と、申し訳なさそうに答えた。

 誰かに狙われる覚えは、ない。

 強いて言えば、怪盗ヴィーヴォラが計画を邪魔されたことによる腹いせに、とか?シムドがまたちょっかいを出してきたとか?矢を放って威嚇するモンスターとか、ニーナの喧嘩相手とか。

 考えても、分からないものは分からない。

「遅いね」

 あたしが言うと、レイシアとリュシェーナがうなずいた。

「待つしか、ないだろう?」

 ルーチェはアーディンを弾き始めた。

 ゆったりと、落ち着いた曲。

「よく弾いてられるよね」

 あたしの言葉に、ルーチェは何も答えず弾き続けた。

 そう言えば、弾き手が楽器に魔力を込めると、聴いている人の感情を操れると聞いたことがある。

 ルーチェはもしかして、あたしたちの不安を取り除いて、気持ちを落ち着かせる曲を奏でているんじゃないのかな?そう言えば、さっきよりも不安な気持ちがなくなったような気がする。

 しばらくして、エフェルとララが帰ってきた。

「どうだったの?」

 レイシアが訊くと、

「よく分からないわ。どこへ行っても誰もいないもの」

 ララが首をひねった。

「何もないことが分かったんだ。先を急ぐぞ」

 エフェルはそう言いながら、馬車に乗り込んだ。

「ニーナはそのまま幌の中にいてくれよ」

「分かったわ」

 エフェルの言葉に、ニーナはそう言ったきり黙ってしまった。


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