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プラティズ レコード  作者: 荒屋敷ハコ
プロローグ
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プロローグ ~セレン~

プロローグ~セレン~


 誰かとすれ違えばたいてい

「あら、族長さん。お久しぶりですね」

 とか、

「一年ぶりですね、元気でしたか?」

 と呼び止められるので、ファウダはその度に立ち止まり、

「いやぁ、相変わらずですよ。そちらも無事で何よりですね」

 とあいさつしていたので、時間ばかりが無駄に過ぎていった。

 今も、あいさつから立ち話に突入するパターンに入ってしまったので、セレンは壁のように立ちはだかる父の背中をじっとりと眺めながら、ため息をついた。

 今日、何度目のため息だろう。

 ため息をつくたびに重くなっていく気持ちを振り払おうと、セレンは首を振った。

 夏に近い日差しが容赦なく、セレンに降り注いできた。ただ立っているだけでもじんわりと汗が吹き出てくるが、風が吹いたら吹いたで細かい砂が舞い上がり、辺りを白く染めた。おかげで昨日今日建てられたテントも、その小麦粉みたいな砂にまみれ年季が入ったようになっていた。

 こんな所にいたら、砂のかたまりになってしまうわと、セレンは

「ねえ、まだなの!」

 と父の背中をつついた。

 父は一瞬だけ振り返った。その顔にはうるさいなとかいてある。

「待ちきれないよ、帰っちゃうよ」

 セレンは再び父の背中をつつく。

「……じゃあ、これからちょっと用事がありますんで」

 父が愛想笑いを顔に貼り付けつつ、言った。

「そうですか、残念ですね。また近くに来たら寄ってくださいよ」

「はい、そうしますよ。ではまた」

 父はそう言いながら片手を上げた。

 相手はペコペコとお辞儀しながら、人の流れの中に消えていった。

「もう、遅すぎ」

 セレンは父に怒りをぶつけた。

「まあ、そうかっかするなよ。族長というのはそれなりに面倒くさいものなんだ」

 セレンの父、ファウダのなだめには、少しばかりの愚痴が含まれていた。

「面倒臭かったら、相手にしなきゃいいじゃん」

「そうもいかないだろう、この一年無事に旅ができたんだ。みんな俺と話したがってるし、誰が無事かを確認するのも、俺の役目だ」

「族長やめちゃうとか」

「まぁ、な。この一ヶ月くらいしか役に立たない族長だけどよ、はい、やめますっていかないだろ?」

 一ヶ月しか役に立たない族長。

 プラティ族は年に一度、夏至の日を中心とした約一ヶ月の間、この地にとどまる。それ以外はずっと旅をして回るのだ。

「確か、この辺だったんだよな……。お、あれだ、あれだ」

 ファウダはセレンの手を放し、歩くスピードを上げた。

「ちょっと待ってよ、父ちゃん!!」

 セレンは慌てて、父の後を追う。

 足の長さが違うから、小走りにならないと追いつけない。ここで迷ったら、迷子確定だ。

「おんぶしてやろうか?」

 ファウダはにやにや笑いながら、セレンを見た。

「嫌よ。小さい子どもじゃあるまいし」

 もうそんな歳は過ぎてしまったのよと、断った。

「俺から見れば、まだまだ小さい子どもだがな」

 全く誰に似たんだろうね。

 ファウダはぼやくと、セレンの手を引いて歩き始めた。

「ここだ、ここだ」

 ファウダはとあるテントの前で立ち止まると、無造作に入り口の布を払った。

「ミロンド、いるかあ?」

 彼の呼びかけに応えるものは、誰もいなかった。

「なんだ、留守か。なら、こっちだ」

 ファウダはすぐ隣りのテントの入り口を開けた。

 セレンはそんな父の様子を黙ってみていた。

「よう、ファウダじゃねえか。誰かと思ったぜ」

 ファウダよりも背は低いが、年齢は同じくらいの男が出迎えてくれた。

 胴回りが太く、樽のような体格。剃ることもせず伸ばし放題にした口ひげ。まるで山賊ねと、セレンは思った。顔が赤いところを見ると、お酒でも飲んでいたのだろう。

「サイラス、おめーまだ死んでいなかったんだ」

「あったりめぇよ。そう簡単に死んでたまるかってぇの」

 サイラスと呼ばれた男は豪快に笑った。

 ひとしきり笑い終えると、

「丁度良かった。ミロンド達もいるんだ、入れよ」

 親指で中を指した。

「隣りのテントに誰もいなかったから、そうかと思ったんだ」

「まぁ、そういうこった。ミロンドが剣術大会で優勝したから、祝杯をあげてたんだ。お、可愛い子を連れてきたんだな。リラか?セレンか?」

 ファウダの後ろに隠れていたセレンに気づいて、サイラスが声をかけた。

「セレンよ」

 セレンはサイラスを見返した。

「あははは、少々手強そうだな。ま、遊び相手ならいるぜ。男ばっかりだけどな」

 サイラスはテントの奥の方を顎で示した。

 明るい日差しのもとにずっといたため、テントの中はとても薄暗く感じたが、小さな人影が何人かいることをセレンは確認した。

サイラスに促されるままに、ファウダは敷物の上に腰掛け、セレンもその隣にちょこんと座った。

「遊んでこなくていいのか?」

「いい」

 父親の問いかけに、セレンは短く答えた。

 どうしてここに来ちゃったのだろう?

 セレンは後悔していた。何も考えずに父の誘いに行くと答えた自分が悪いのだが。いざ来てみれば、知らない人が、知らない話をしていて、まるで自分が空気になったみたいだった。ここで何も喋らずにずっと座っているのが苦痛だ。かと言って男の子と一緒に遊ぶのも気が引ける。

「あら、可愛い子が来たのね。これ、食べる?」

 セレンの隣に座っていた女の人が、小さなおまんじゅうを差し出した。

 セレンは驚いて、その女の人を見た。

 驚くほどに細くて白い手。黒絹のような美しくて長い髪。柔らかい春の日だまりのような微笑み。

「どうしたの?おまんじゅうは嫌い?」

 彼女は小首を傾げた。

「い、いえ。ありがとうございます」

 セレンは慌てておまんじゅうを受け取った。

「ファウダさんの娘さんね。どう?おいしいかしら?」

 おまんじゅうを口いっぱい頬張ってたので、うまく喋ることもできず、セレンはうなずいた。

 おまんじゅうはとてもおいしかったし、何よりも居心地の悪さもなくなっていた。

「久しぶりだな、族長さん」

 おまんじゅうをくれた女の人の隣に座っている男がファウダに声をかけてきた。

「族長って言うなよ、ミロンド。名ばかりだよ。あんたに言われると皮肉にしか聞こえん」

 ファウダはため息を付いた。

 セレンはミロンドを見た。

 父親と歳はあまり変わらないと思うが、ミロンドのほうが落ち着きがあるように見える。まっすぐにものを見る瞳、大きな体の割にはどことなく緻密な雰囲気があって、それが顔の良さと相まって人を引き付ける魅力になっていた。

「オレか?オレは喋らなさすぎる。だからみんなが勘違いしているだけだ」

 ミロンドはそう言うと軽く笑い、酒を一口飲んだ。

「ところでまた剣術大会で優勝したんだよな、おめでとう」

「またでもないよ。去年はタイランに負けたからな」

「タイランはしょうがないよ。あいつは、化け物だ。そういうお前だってそうだな」

 ファウダは豪快に笑い飛ばした。

「何話してるの?お二人さん、無事に帰ってこれたから積もる話でも?」

 二人の話に割り込んできたのは、とてもスタイルのいい女の人だった。

 出るところは出すぎるくらいに出ていて、締まるところは無駄なくきゅっと締まってる、そんなスタイルの良さ。おまけに目鼻立ちがはっきりとした美人。

「久しぶりだな、サーシャ。こっちのパーティにいたのか」

 あーあ、声が上ずっちゃってるよ、父ちゃん……。

 セレンは小さくため息をついた。たしかにあんなナイスバディを見せつけられたら、男の人なんてイチコロよね。

「だって、楽しいもん」

「でもよ、たまには帰ってやったほうがいいぜ。ニーナちゃんも寂しがっているだろうし」

「もーおー。分かってるって、族長さんっ」

 サーシャはそう言いながらファウダのコップにお酒をドボドボと注いだ。

「分かってねぇよな」

 サーシャが去ったあと、ファウダがぽつりといった。

「オトナのジジョーってやつ?」

 頭を抱える父に、セレンはこっそり話しかけた。

「まあ、な。そう言うもんだ」

「族長って色々大変なんだね」

「ああ、って、ませたこと言うなよ」

 ファウダは顔を上げた。

「なによー、心配してやってんじゃないのよ」

「おまえは自分のことだけ考えてろ。大人の事情に首を突っ込むな」

 冷たく言われて、セレンが反論しようと口を開けた時、

「仲の良い親子だね」

 ミロンドが感心したように笑った。

「こいつがマセガキなだけだよ」

 ファウダはセレンの頭の上に手を乗せた。

 すかさず、やめてとセレンは払いのける。

「そうかな、素直な感想だったんだがな」

 ミロンドは首を傾げた。

「何が素直な感想だ」

 ファウダはそう言うと、サーシャによって注がれたお酒をがぶがぶと飲んだ。

「アイリー、何か一曲弾いてくれないか?」

「ええ、そうね。何か楽しくなれそうな曲、弾こうかしらね」

 セレンの隣にいた女の人はそう言って穏やかに笑った。

 そして懐から両手で抱えるとちょうど良くはまるくらいの弦楽器を取り出した。

「えっ?アイリーちゃん弾いてくれるの?」

 サーシャが手を叩いた。

「おっ、待ってました!」

 サイラスが叫んだ。

「母さん、アーディン弾くの?」

 子どもたちの輪の中から、一人の男の子がぱっと飛び出してきた。

 セレンがその少年に興味を持って見た瞬間、向こうも同じ思いだったのか、

「あ!」

 目があってしまった。

 男の子と言うよりは、その華奢さといいい、柔らかい雰囲気といい、女の子と言われても納得してしまうものがあった。

「ルーチェ」

 ミロンドに呼ばれ、彼は視線を外した。

「なぁに?父さん」

「ここに座ってなさい」

 ミロンドの言葉にルーチェはうなずくと、父親の膝の上にちょこんと座った。

「恥ずかしいけれど、一曲弾きます」

 アイリーはぺこりとお辞儀すると、楽器を構えた。

 最初の一音が弾かれたのを合図に、アイリーの細く白い手は流れるように音を紡いでいった。

「!!」

 その手の素早さにセレンは心を奪われた。

 流れる水、風の音、広がる大地、草原の海。それはセレンのよく知っている曲に間違いはない。だが、アイリーが弾きだす音楽は奥行きがあって、深みがあって、壮大だった。

 結局、アイリーが手を止めるまで、セレンはかのじょの創り出す音の洪水の中にどっぷりとはまり込んでしまった。それは、周りで聴いていた誰もがそうなのだろう。

 アイリーが演奏を終えた瞬間、テント内は静寂に包まれた。

「やっぱ、アイリーちゃんすごいよ。ゾクゾクしちゃったわよ」

 サーシャの言葉によって金縛りが解けたかのように、拍手と賞賛の嵐がテント内に巻き起こった。

 セレンはふとルーチェを見た。彼は自分がほめられたかのように、満足そうな顔をしていた。

「アイリーさんて、すごいんですね」

 隣で頬を赤らめながらアーディンを大事そうに抱えているアイリーに、セレンは声をかけた。

「ありがとう。私は、ただ、アーディンしかなかったから……」

 アイリーは遠慮がちに笑った。

「母さん、やっぱり母さんの演奏がすごかったよ」

 ルーチェが後ろからアイリーに抱きついてきた。

「ありがとう、ルーチェ」

 アイリーはルーチェの方に顔を向けた。

「僕も、もっともっとたくさん練習すれば、母さんのように弾けるかな?」

「うん、大丈夫よ。ルーチェはアーディンのことが好きなんでしょう?」

「好きだよ。でもね、母さんのことがもっと好き」

 ルーチェはニコっと笑うと、アイリーの顔に頬をすり寄せた。

「よぅ、おまえが夏至の日に生まれたボウズか。大きくなったな。いくつになったんだ?」

 ファウダがルーチェの方を向いた。

 ルーチェは突然のことで驚いたのか、母親の背後に身を潜めた。

「……9歳」

 ルーチェは今にも消えそうな声で答えた。

「別にとって食おうとしているわけじゃねえんだ。おいで」

 ファウダはルーチェに笑いかけながら手招きをした。

「ルーチェ、大丈夫よ。行っておいで」

 アイリーも必死になってルーチェをなだめているが、動きそうにもない。

「……父ちゃん、あの子怖がっているよ」

 セレンが父の脇腹をつついた。

「知ってんだったら、何とかしてくれよ」

 ファウダが小声で頼み込んだ。

 やれやれ。

 セレンは小さくため息をつくとルーチェの方を向いた。

「ねぇ、あんたルーチェって名前なんでしょ。何の遊びをしていたの?」

「……かるたとか、あやとりとか」

 あんた誰?というような顔でルーチェはセレンを見た。

「あたしもまざっていい?」

 セレンの申し出に、ルーチェはこっくりとうなずいた。

「あたし、セレンっていうの。さっきのはあたしの父ちゃん。見た目はクマみたいで、口は悪いけど、性格は悪くないわ。面倒くさいって言うのが口癖だけど、本当はよく気がついてね、まぁ行き過ぎて心配症っていうのね。いきなり殴ったりはしないわ」

「セレンちゃん、よく見ているなぁ」

 ミロンドが笑いをこらえながら言った。

「うちの父ちゃんがどんななのか知ってるの?」

「昔、一緒のパーティーだったからね。オレと、ファウダとサイラスと」

「ふうん、若いころの父ちゃんってどんな感じだったの?」

「今と変わらないよ」

 ミロンドはちらりとファウダを見た。

「ミロンド、セレンに余計なことを言うなよ」

 それに気づいたミロンドが釘を差した。

「分かっていますよ」

 ミロンドはふふんと笑った。

「父ちゃんてさぁ、なんか変りようがないって気がするのよね。後でまたいろいろ聞きたいな。父ちゃんがいないところでさ」

「お安いご用で」

 ミロンドは肩を震わせて笑っていた。

「ということで、大丈夫。安心して」

 セレンはルーチェに笑いかけた。

「う、うん。分かった……」

 ルーチェは渋々返事すると、ゆっくりと立ち上がりファウダの方へと歩み寄った。

「やっと来たか」

 ファウダはルーチェを笑顔で迎えた。

 ルーチェは小さくうなずくと、ファウダとセレンの間に座った。

「やっぱ男の子のほうが可愛いよな。素直で可愛いところがさ」

 ルーチェを前にして、ファウダがぼやいた。

「なによぉ、せっかく連れてきたのに」

 セレンが抗議の声を上げた。

「そういう一言がうるさいの」

 ファウダはセレンをちらりと見ると、言葉を続けた。

「にしても、大きくなったよな。アイリーの産後の肥立ちが悪くなってな。お乳が出ないからって、ミロンドとルネが走り回っていたのがつい最近だと思ってたのにな。もう9年か。どうりで年取るわけだ」

「その話は父さんと母さんから聞いてます。僕が夏至の日に生まれなかったらば、死んでいたって言ってました」

 ルーチェは静かに言った。

「そうだよな。冬なんかに産まれてたら、あの状態じゃもう駄目だったろうな。プラティ族の言い伝えには、夏至生まれの人は、何か特別な星の下にうまれたとされるんだ。ましてやルーチェは夏至以外だったら、育たなかっただろうと。強運だか何だか知らねぇけど、自信持って生きろよ」

「はい」

 ファウダの言葉に、ルーチェは真っ直ぐな眼差しで答えた。

「ルーチェは9歳か。ところでセレンはいくつだい?」

 ファウダはセレンを見た。

「おなじ9歳よ。余計なことは考えない」

 セレンが釘を差した。

「さて、ルーチェ行くわよ。あたしもカルタ取りやりたくなっちゃったから」

 ファウダが口を開けるよりも早く、ルーチェを引き連れてセレンが逃げた。

「いいの?」

「いいわよ。構わないわ。どうせすぐ忘れるんだし」

 酔っ払ってルーチェと話した記憶すらなくなっちゃうんじゃないの、とセレンは思った。

「ルーチェ、どこ行ってたの?」

 ルーチェに声をかけてきた少年を見て、セレンは驚いた。

 年の頃はセレンとだいたい同じくらい。少し大きめなローブを着て、癖のない真っ直ぐな黒髪を肩につく辺りで切りそろえてあった。ここまでなら、占い手希望の少年によくある格好だった。

 その少年の顔が、セレンが今まで見てきたどの少年よりも美しかった。テルバ族の焼く白い磁器のような肌、切れ長の瞳と吸い込まれてしまうほどの青い目。全体的に神秘的なオーラの漂う少年だった。

「母さんのところへ行ってた」

「ルーチェは甘えん坊だからね」

「悪かったね」

 少年の言葉に、ルーチェは口を尖らせた。

「ところで、その娘はなんて名前なの?」

 少年が、セレンを見た。

「セレンって言うんだ」

 ルーチェの紹介を受けて、セレンはペコリと頭を下げた。

「ぼくはフェルセ。あそこに座っているのが、僕の兄さんのオーレン」

 フェルセは、少し離れたところに座っている少年を指した。

「あら、ファウダさんのところの娘ね。おやつ持ってきたから、食べてね」

 女の人がふかし芋をお盆に乗せてやって来た。

「ぼくのお母さんだよ」

 フェルセが教えてくれた。

「よろしくね」

 フェルセの母は、セレンにふかし芋を渡した。

「ありがとうございます」

 セレンは笑顔で受け取った。

 本当はさっきもらったおまんじゅうでお腹いっぱいになってたけど、残しては悪いと思い、無理矢理全部食べた。

「帰るぞ」

 セレンがふかし芋をを全部食べ終えた頃、父が迎えに来てくれた。

「え?もう帰るの?」

 まだ一緒に遊んでないのに。

「まだ寄るとこあるし、あんまり遅くなっちゃうと、母ちゃんに心配かけちゃうだろ」

「……だってさ。ということで帰るね」

 セレンはルーチェを見た。

「また、あえるかな?」

 ルーチェの目は少し寂しそうだった。

「たぶんね。来年とか?」

 セレンはそう言って笑いながら、立ち上がった。

 じゃあね、ばいばい。

 みんなに別れを告げて、セレンとファウダはテントを出た。

 テントの外は相変わらず砂で煙っていた。

「ねぇ、父ちゃん肩車して」

 セレンは父の袖を引っ張った。

「あれ、もうそんな歳じゃないって言ってたのは、どこのどいつだ?」

 ファウダはにやにや笑っていた。

「ちょっと、疲れちゃったのよ」

 甘えるのも、悪くない。

 ルーチェを見ていたら、ちょっとだけ羨ましくなった。それになんだかんだ言って父ちゃんだって嬉しそうじゃないの。

 セレンは父の肩に乗って、自分のテントへと帰った。


はじめまして。荒屋敷ハコです

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