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暇人と転校生

うちのクラスに変な転校生が来た。


オレの通う私立白鴉しりつはくおう学園は小学校から大学までのエスカレーター式。

一応外部受験も応募してるけど高い偏差値と学費のせいで滅多にいないから、普通科とはいえただでさえ珍しい外部生が二学期の半ばっていう中途半端な時期に来るっていうからどんなヤツかメチャクチャ噂になってた。いわく、小柄な大和撫子の秀才で編入試験に満点で通ったとか。いわく、超絶ブサメンの馬鹿で試験には親のコネで通ったとか。

あることないこと入り乱れて結局よくわかんなかったけど、オレは初等部から中等部になっても代わり映えのないクラスが少しでも面白くなるなら男だろうが女だろうがどっちでも良かった。



校則で染髪や脱色を禁止されてるせいで黒一色に統一されてる俺達のなかで、金色の男子転校生はめちゃくちゃ目立った。肌は白くて薄い唇が色付いてなかったら死人にしか見えないし、何より金色の眼なんて見たことも聞いたこともない。そんな顔が、来た時から眉一つ動かさない無表情なもんだから益々不気味だ。


黒泱綺紗こくおうきさです。よろしくお願いします。」


無表情の棒読みで、ここまでよろしく感のないよろしくは初めて聞いた。席はオレの隣だった。まさかこんなに面白そうなヤツが来るとは思わなかったオレは興味津々で声をかけた。


「よお、オレは天城飛鳥あまきあすかよろしくなー。」


「ああ、よろしく。」


「なー黒泱ー、」


「綺紗で良い。」


「あ、そ?じゃ俺も飛鳥でいいよ。」


見た目に反して中身は案外気さくな奴なのかもしれない。


「な、綺紗ってさーその頭って染めてんの?金眼はカラコン?」


「髪も眼もいじっていないし、勿論ハーフとかでもない。私は純日本人だ。」


「えー嘘だろー!」


「歯に衣着せないんだな君は。もとは黒髪黒目だったんだが、昔高熱を出してその後遺症で色が抜けたんだ。少しずつ色が戻ってきてるから、そのうち黒髪黒目に戻るかもしれないね。」


「マジかよ。なんかワリィ。」


謝れば、黒泱は本当にちょっとだけ笑った。


「気にするな。私も初めて見た時は不気味過ぎて驚いたよ。」



やっぱり、話してみたら案外気さくでノリが良い。無表情で棒読みなのはどうやらデフォルメみたいだ。


最初のうちはみんな黒泱の不気味な見た目と寄せ付けない雰囲気にびびってたけど、オレが楽しそうに話すのを見て気を許したのか次第にオレ達を囲むように集まってきた。


「え⁈黒泱って高瀬会長と住んでるのかよ⁈」


「ああ、親同士が顔見知りでね。家の事情で居候させて頂いてる。」


高瀬会長っていうのはこの学園全体の生徒会長のことだ。綺麗な顔に綺麗な微笑みを常備して成績は常に学年一位。細身のわりに運動神経も良くて、生徒会長になる前は剣道やテニスなんかの大会の助っ人によく借り出されていたらしい。

そんな絵に描いたような王子サマだから、勿論女子からの人気も高い。


「いいなぁー、高瀬会長と同じ屋根の下なんて羨ましいー!」


「嫉妬しちゃうー!」


「私服の高瀬会長も絶対カッコいいよねー!」


「会長と毎日ご飯食べれるなんて羨ましいー!」




湧き立つ女子達に無表情で引き気味の黒泱の肩に手を乗せる。


「驚いたか?まあ、あれだ。お前が女じゃなくて良かったな。」


おそらく初日からイジメの対象になっていただろう。女の嫉妬ほど怖いものはない。


「ああ、全くだ。」





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