身分相応と分不相応というものがありまして
燈夜さんは家事が全く出来ないらしい。
洗濯や掃除は業者に頼んでいたそうだ。改めた冷蔵庫はミネラルウォーターと牛乳とフルーツジュースという飲み物専用庫と化していた。
幸い米と調味料は未開封の状態で置かれていたので冷凍庫に唯一入っていたミックスベジタブルと炒めて炒飯を作った。卵はなかった。
「炒飯なんか挑戦したことすらないよ。」
「紅茶は上手に入れられるのに…。」
只々炒めただけのあまり美味しくない炒飯に感動する彼が心配になってきた。
「一人ならともかく、私の分までとなるとお金がかかるでしょう。燈夜さんがよろしければ居候させていただいている間は私が家事をしましょうか。」
あまりにもあまりにもな生活様式だったのでうっかり言ってしまったが、流石に年頃の男が少女に面倒を見られるのは嫌だろう。
少なくとも自分の分だけは自分でやろう
「え!いいの⁈有難う!」
と思ったけど全然気にしてなかった。むしろ喜んでる。
「そろそろ手料理が恋しかったんだよねー。あ、じゃあクレジットカード渡しておくね。」
「結構です。」
ブルジョワか!
どれだけ裕福に暮らしていれば初対面の餓鬼にクレジットカードを渡す気になるんだ。
目を見張ったわ。
「買い物に行く時はその都度燈夜さんにいただきますから。」
「カードを?」
「現金でお願いします。」
ジーンズの尻ポケットから真っ黒なカードを出してくる彼は恐らく私とは180°価値観が違うのだろう。