栄養管理はしっかりしましょう
学校の転入手続きだけでなく住民票の住所変更まで既に完了していたらしい。
「学校の手続きのことはよくわかりませんが、今日は土曜日ですよね。市役所はお休みのはずでは。」
「市長と知り合いだから、色々融通してもらったんだ。学校の方は理事長に話を通してもらった。」
「顔が広いんですね。(いらないことを!)」
「偶々ね。あ、そうそうこれ。君のお母さんから預かってたんだ。」
見覚えのある白無地のポーチには見覚えのあり過ぎるそれに私の保険証と印鑑が入っていた。
「ありがとうございます。」
私の保険証や印鑑はポーチの中に入れて常に学生鞄に入れたままにしてある。あるものと思い中を確認せず持ってきたのだが、それが目の前にあるということは、母がわざわざ私の部屋に入り鞄からポーチを持ち出したということになる。
(父が入院したと聞いて、何故私の保険証を持って行く必要がある?)
ともすれば嫌な方向に傾く自分の思考を振り払い、今後のことを考える。
「燈夜さんは、病院に行かれたんですか。」
「うん。偶々会社の近くにいたから君のお母さんの代理で付き添っていったんだ。」
「父の容態は、どうでしたか。」
会ったことも無いため興味や関心も希薄だが、彼の回復次第で私の滞在期間が決まるのだ。
「一命はとりとめたよ。まだ意識は戻ってないけど、容体は安定してきてるからじきに戻る。ただ、意識が戻っても暫くは療養とリハビリになるだろうね。職場復帰には早くても一年はかかると思う。」
一年。
最低でも一年は居候することになるかもしれないのか。
友人という関係は、一年間離れていても持つのだろうか。
秋になると日の落ちが段々早くなっていく。
今後のことやお互いについて話しているうちに外はすっかり暗くなっていた。
「引っ越し蕎麦はお昼に出前で頼んじゃったし…夕飯は何が良い?」
「よろしければ、夕飯は私が作ります。一応、簡単な料理は出来るので。」
「いいよいいよ、出前とるから。」
「お昼に奢ってもらいましたから。冷蔵庫の中漁っても良いですか。」
「いや、というか、うちの冷蔵庫飲み物しか入ってないんだよね。」
「え、」
「俺、料理出来ないからさ。いつも出前か中食だよ。偶に外食したりもするけど。」
「……そ、育ち盛りなのに…。」
「ちゃんと成長してるから大丈夫だよ?」