前途多難を示します
しきりに横になって休むよう勧めてくれる高瀬青年に恐縮しながら丁重に断わりを入れると、青年は私を1人用のソファに座らせ上から膝掛けを掛けてくれた。至れり尽くせりでどうすれば良いのか分からず動揺していると高瀬青年に苦笑されてしまった。
「あの、すいません。」
「一々謝らないでよ。お礼もいらない。これから家族になるんだから、こんなの当たり前でしょ。」
そんな礼儀知らずな当たり前は知らないし、こんなに優しい家族も知らない。
しかし差し出された紅茶に礼を言おうとしたら笑顔で先手を打たれてしまい、結局何も言わずに口にしてしまった。居心地が悪い。
「美味しいです。」
「薄めに入れたカモミールティーにメープルシロップが入ってるんだ。本当は眠る前に飲むと良いらしいんだけど、落ち着くでしょ?」
居心地が悪い!!
恐る恐る高瀬青年を見ると、向こうもこちらを見ていたのでしっかり目が合ってしまった。
(ーーーーッまたか!)
引いたはずの症状がまたもや襲い掛かってきた。幸い、流れ込んでくる量が先ほどよりは少ないようで激しい頭痛と眩暈に襲われるだけでとどまっている。
しかし青年が全く目を逸らさないので此方も剃らせない。というよりなんだか逸らすなという雰囲気が青年から伝わってくる。可笑しい。普段なら不気味がられて目なんかあわないのに。
「今日は高瀬さんのご両親は何時頃お帰りになられますか。」
先ほどよりはマシだが黙っていると頭痛に意識が持っていかれそうなので平静を装って話題を振る。
「親?」
質問の内容が予想外だったのか高瀬青年は年相応なキョトンとした表情になった。隙を見計らってさり気なく視線を紅茶に移す。
(絶対こっち見てる。)
「帰ってこないよ。」
「は、」
「二人とも忙しいからね。滅多に帰ってこないんだ。」
どうしてそれで私を預かることにしたんだ。