さよならまでの49日
私の恋したあの人は、なんの前ぶれもなく現れ
木枯らしのように去っていった。
私は、その人のことをかたときも忘れたことはない
その人の名前は、
「臼井 優斗」
これは、3年前のこと
私がまだ高校生だったころのこと
私は、都会の高校に行くことにした。
私の住んでるこの町は、すごい田舎..
そんな暮らしがいやになり私は、家を出た。
都会に1人暮らしは、とても不安だったけど
今まで見たこともない都会のすごさに
圧倒されっぱなしだった。
高いビルにたくさんの大きなお店
それに、車と人の多さにもびっくりした。
高校、行ってみた。
私は、始めてみる大きな高校を見て興奮した。
年甲斐もなく校門まで走った。
ズッテ~~ン
こけっちゃった..
恥ずかしい..
私は、いそいで立った。
あれ!?
靴がない
私は、辺りを見回して見たやっぱり靴がない
すると、誰かに声を掛けられた
「あのう..」
「探してるのってこの靴ですか?」
だれ?
私は、ドキッとした。
かっこいい
私は、とりあえず
「ありがと^^」
とだけ言って受け取った
その男の子は、私とあまり年が
変わらない感じだった
その男の子は、
「何年生ですか?」
って聞いてきた。
私は、どきどきしながら
そういうのが、ばれないように
私は
「1年生です!」
「今日からこの学校に通うことになったの」
すると、男の子は
「おぉ~じゃあ同級生じゃん」
と言ってきた。
男の子は
「俺、臼井優斗っていうんだぁ~」
「君は?」
とうれしそうに聞いてきた。
私は、
「桜井優花って言うの!」
「よろしくね!」
と明るく言ってみた。
臼井君は、
「優花か~」
「かわいい名前だね!」
と言ってくれた。
うれしくてうれしくて..
臼井君は、
「クラス発表一緒に見に行こうぜ!」
「ゆ、ゆうか!!」
と少し照れながら言った。
私は、つい笑ってしまった。
だって顔、真っ赤だし..
照れてる顔かわいいし..
私は、
「ごめん..」
「いいよぉ~」
「一緒に行こぉ~ 優斗君!」
言ってみた。
やば!?
やりすぎだったかな?
でも、優斗君は
少し笑いながら、
「じゃ!行こっか!」
と言った。
掲示板を見てみた!
えぇ~~と
字が小さくて読みにくかった。
もと珍しい名前だったらよかったのに..
と思っていたら
優斗君は
「優花! 同じクラスだぜ!」
と言った。
私は
「え!?」
「どこどこ?」
と聞いてみた。
すごく驚いていた。
自分のだけじゃなくて私の名前まで
探してくれるなんてすごく目がいいんだな
と思った。
優斗君は、
「ほらあそこ!」
「B組だよ!」
と指で指しながら
言ってきた。
私は
「あ! ホントだぁ~」
「やったね~これからもよろしくね!」
と言ってみた。
優斗君は
「おぉ~」
「仲良くしようぜ!」
と言ってくれた。
それから、私たちは教室に入った。
クラスには、いろんな子がいた。
暗そうな子
面白そうな子
怖そうな子
そうそう優斗みたいな
優しくてかっこいい人
あ!?
今、私、優斗君のこと呼び捨てしたよぉ~
やばぁ~
でも、そういう関係になりたくないといえば
うそになる
はずかしいところを見られたのは、
だいぶ堪えたけど..
まんま、私のタイプだった。
すると、優斗が
「なぁ! 優花おまえどこ住んでんの?」
って聞いてきた。
私は、なんて答えようか一瞬迷った。
だって実家は、すごい田舎だし..
でも、私は気がついた。
今は、そこに住んでない。
だって1人暮らししてるじゃん!
そして私は、自信を持って
「志木島だよ!」
って答えた。
「あぁ~志木島かぁ~」
「じゃあ近いじゃん!」
「今日、遊んで帰るか?」
と優斗は言った。
私はひとつ返事で
「うん! いいよ!」
と言ってみた。
優斗はとてもうれしそうな顔をして
「んじゃ、どこ行きたい?」
って聞いてくれた。
私は、引っ越してきて間もないので
この辺がぜんぜんわかんないから
私は
「私、引っ越してきたばっかりで
土地勘ないのごめん..」
「優斗のおすすめでいいよぉ~」
と言ってみた。
優斗はちょっとにやけながら
「俺のことなにいきなり呼び捨てしてんだよ!」
「んまぁ~今日は俺にまかせろ!」
と言った。
あれ?
優斗、呼び捨てされんの
ぶっちゃけ嫌なのかな?
もう少しの間は、君付けでいこうかな?
でも、今のは完全にでちゃったんだしなぁ~
私は
「お願いします。」
「優斗様.」
と言ってみた。
優斗は、笑っていた。
そして、優斗は
「優斗でいいよ~」
と言った。
どっちやねん!
ほんとにツッコミそうになってしまった。
そういう所も優斗の魅力なのかもしれない
魅力?
何いっての私
やっぱ私、完全に恋しちゃってるよぉ~
どうしよう..
友達?
なんだよね?
でも、友達なんだからいいじゃん!!
片思いでも私の近くに手の届くところに
優斗は居る
私は、これからも優斗と
ちょうどいい感じの関係で
いいから近くにいたい
そして、私たちは
駅前のデパートに行くことになった
ゲーセンで1時間近く遊んだ
すっごく楽しかった
でも、時間は待ってはくれない
優斗が
「遅いしもう帰ろっか?」
と言った。
私は、仕方なくうなずいた
でも、帰りたくなかった
だから、私は
「ねぇ優斗」
「1回だけでいいからプリクラ撮ろうよ!」
と言った。
優斗は、あまり考えることなく
いいよと言ってくれた。
うれしかった。
好きな人とプリクラなんて撮ったことなかったから
私は、いままでの中で1番いい顔をしていたと思う
撮り終わってケータイに2人とも受信した。
帰りにバスの中で私は、
その写真を待ち受け画面にした。
これで、いつでも優斗の顔を見ることができる
優斗は、あのプリをどうするかわかんないけど
持ってるという事実だけでとってもとっても
うれしかった
その次の日から
毎日、私の家に優斗が迎えに来るようになった
最初の日は、
優斗は、すこしびっくりしていた
「お前1人暮らしだったのか?」
と言った。
私は、少し恥ずかしかった。
だって貧乏な田舎暮らししてたなんて
言えっこない。
でも、優斗はそれ以上なにも言わなかった。
私の気持ちを察したのだろうか?
私は、優斗のそういう所が好きだ!
あまり追求せずちゃんと人のことを考えてくれる
だから、私は優斗に恋したのだろう
それから、私はいままでよりもっともっと
優斗のことが好きになった。
優斗と居ると幸せな気分になれる。
悲しいことがあっても優斗の笑顔で立ち直ることができる
優斗は私にとって必要不可欠の存在になっていた。
毎日、優斗に待たせないように寝ぼけた顔を
見せないように早起きするようになった。
優斗は、すごくサッカーが上手だ!
サッカーのことは、よく知らないけど
優斗が好きな競技ならとサッカーについて
いっぱい勉強した。
そして、試合の日は
毎日、応援に行った。
ゴールを決めると私に
グーの手を伸ばしてくる
私も、それに合わせて
優斗に手を伸ばす
もう決まりのようになっていた。
しかし、私と優斗の関係をよく思わない人も居た
私は、よく嫌がらせをされた。
でも、優斗は明るく励ましてくれた。
それで、元気が出る。
そして、今日靴箱に行ってみたら靴がなかった
どうしようかと思って目に涙を溜め悩んでいた。
すると、優斗がしゃがみながら言った。
「おい、はだしじゃかえれね~だろ」
「背中に乗れ!」
私は、
「え!?」
「私、重いし..」
「いいから乗れ」
と言った。
私は、しょうがなく優斗の背中に乗った
優斗は、軽々と私を背負い歩き出した。
優斗の背中は、とっても温かかった。
そして、優斗の背中に耳をあてると
優斗の鼓動が聞こえた
なんだか、不意に生きてるって
幸せだなと思った。
こうして、2人が一緒に居る
それが、すごい奇跡のように思えてきた。
優斗の背中に居ると帰り道があっという間だった
もう着いちゃったの
って言ってしまいそうだった。
私は、
「ありがとう」
「重かったでしょ?」
「大丈夫?」
と聞いてみた。
優斗は、
「どこが重いんだよ」
「めっちゃ軽かったぞ」
と言った。
そして、バイバイと言って優斗は帰ってしまった。
体には、まだ優斗の温かさが残っていた。
次の日、優斗が靴をプレゼントしてくれた。
「靴ね~と学校いけね~だろ」
と優斗は言った
私は、昨日おんぶされたことばっかり考えてて
靴を買うのを忘れていた。
優斗には、ホント感謝してもしきれないくらいだった
ほんとに小さなところにも目が届く
すばらしい人だなと思った。
私は、早速プレゼントしてもらった靴を履いた
ふつうの学校靴なのにどんなに高いものよりも
うれしかった
優斗は、照れくさそうに
「さ、履いたらさっさと行くぞ!」
「早くしないと置いてくぞ!」
と言った。
私は、
「は~い」
「ありがとね!!」
「この靴、一生大事にするから!!」
と言った。
優斗は、
「そんな安い靴でいいならいくらでも買ってやるよ」
と言った。
歩いていった。
とっても幸せな気分だった。
それからも、嫌がらせは続いたが優斗が居たから
なんてことなかった。
優斗が励ましてくれる。
それだけでなんにでも耐えられる気がした。
いつもどおり勉強していつもどおり優斗を見つめていた
6時間目終わって私は、トイレに行った。
帰ってくると机の上に紙が置いてあった。
私は、それを開いてみた。
そこには、
[放課後話があるので体育倉庫に1人で
来て下さい
臼井優斗 ]
と書かれていた。
話って何だろう?
もしかして…
なんていろいろ妄想しながら
体育倉庫に行った。
そこには、誰も居なかった。
まだ来てないのかな?
でも、クラスが同じなのになんで体育倉庫なんだろう?
というかなんで体育倉庫が開いてるんだろう?
ま、まさか..
と思ったときには、もう遅かった。
ドンと背中を押され私は、体育倉庫の中に倒れこんだ
立ち上がったときには、もう遅かった。
ドアは、閉められ鍵も閉められていた。
あ~あ
やっちゃった..
なんでもっとはやくきずかなかったんだろう?
あたしって馬鹿だ..
もう自分で自分がいやになる
そうだ、優斗に電話をかけよう
でも、気がついた
私は、かばんを教室に置いてきてしまった。
電話かけられないじゃん..
しょうがないから私は、扉をたたきながら
助けを求めた。
「だれか助けてだれかだれか」
叫んではみたが、なにしろここはとっても
人気がないところだったから..
それでも、だれか通るかもしれないと思って
ずっと叫び続けた。
そして、ついに声が出なくなってしまった。
もう、だめだ。
今日は、金曜日。
運が悪ければ月曜日までここに居なければいけない
そう思うと急に悲しくなって
泣きじゃくった。
泣いて泣いて泣いてこれでもかってくらい泣いた
でも、泣くのにも疲れ果てその場にじっとしていた
もうこのまま死んでしまうんだと思った。
だれにも、見つからず私は死ぬんだと思った。
お父さん、お母さんさようなら
私を生んでくれてありがとう
そして優斗ありがとう
私なんかと一緒に遊んだり登下校してくれて
もっともっと優斗と一緒に居たかった。
もうなにもかもあきらめたとき
ドアが静かに開いた。
そこには、一番みたかった最高の笑顔があった。
優斗は、
「やっと見つけた」
「靴やかばんはあるのに優花がいないからすっと
探してたんだ」
と優しく言った。
泣きつかれて涙は、涸れていたと思ったが
また、あふれてきた。
私は泣きながら
「私このままみんなに忘れられて死んじゃうんだと
思ったよぉ~」
と言った。
すると、優斗が
「バ~カ」
「俺の大事な人をそう簡単に死なせて
たまっかよ!」
と笑顔で言った。
え!?
大事な人?
私、優斗の大事な人になれたの?
すると、また優斗が
「何きょとんとしてんだよ」
「お前にぶいなぁ~」
「だから、お前のことが好きだって言ってんだよ」
と顔を真っ赤にしながら言った。
びっくりした。
なんて言ったのかよくわからなかった
す、好き!?
「え!?」
「ほんとに!?」
と言ってみた。
「優斗は、こんなときにうそなんか言うかよ!」
と優斗が言った。
私は、優斗に何も言わずに抱きついた。
優斗は、最初びっくりした顔をしていたが
やさしく私を抱きしめてくれた。
こうして私たちはカップルになった。
優斗は、とっても優しかった。
いままでも一緒に居たけど彼氏となった優斗は
今まで以上にやさしかった。
そして、また2人でゲーセンに行った。
今度は、カップルとして..
2人ではじめてのデートだった。
そして、今回は2回目のデート。
今回は、町のデパートに行くことになった。
でも、休みの日だったので
制服で行くわけには、いかなかった。
私は、何を着ようかすごく迷った。
だって都会の女の子は、すごくかわいい服
だったから田舎で着ていた服を着るのは
少し恥ずかしかった。
なにを着ようかな?
どうしよぉ~
服買いに行こうかな?
でも、お金なんてぜんぜんないし
がんばりすぎてる気がするかな?
そんなこんなで今までの服を着ることに決めた
日曜日が楽しみでしかたがなかった。
デートの日まであと2日
早く日曜日にならないかな
そして、日曜日になった。
最寄りの駅で集合になった。
9時に集合だったけど
私は、早めに行った。
着いたのは、8時45分だった。
早く会いたくて居るはずもないのに
15分も早く..
ざわざわと動き回る人の群れ
その中に光るものを見つけた
そう
優斗を..
私にとっては、なくてはならない
いわば太陽なのだ。
優斗も私を見つけたみたいで軽く手をあげた。
私は、うれしかった。
まさか私なんかにこんな瞬間が訪れるなんて..
そして、優斗は
「早かったな! まだ15分前だぞ」
と言った。
私は
「だって、優斗に1秒でも早く
会いたかったんだもん」
と言った。
優斗は、顔を真っ赤にしながら
「実は、俺も..」
「昨日の夜も寝られなかった。」
と言った。
私とのデートをそんなに大事に思って
くれていることがなによりうれしかった。
そして、優斗と1本早い電車に乗った。
今回のデートに行く場所は、
この近辺では一番大きい
1000坪以上はあると思う。
まずは、2人でショッピング!!
2人でおそろいのキーホルダーを買った。
それに、お互いの似合いそうな服を
選びあったりした。
次に、映画だ。
デートということで恋愛系の映画を見た。
好きな人と見る映画はいつもの何十倍も楽しい
それに、キュンとするシーンではついつい
優斗のほうを見てしまう。
それは、優斗も同じみたいで
何度も目が合ってしまった。
そのたびに、お互い照れながら
目を逸らすのだ。
映画が終わりそうになったとき
優斗がぼそりと言った。
「キスしていい?」
私は、なにも考えられなかった。
キ、キス?
でも、返事をする前に
私の顔のすぐ近くに優斗の顔があった。
私の唇が優斗の唇と重なっている。
私は、とてもびっくりしたが
なんだかとてもうれしかった。
そして優斗が少し照れながら
「嫌だった?」
「ちょっと強引でごめん..」
と言った。
私は何か言わなきゃと思って
「ううん、とってもうれしかったよ」
「きっと私は今、世界で1番幸せものだよ」
と言った。
優斗はうれしそうに無邪気に
「これから先もずっと一緒でいような。」
「いつでも、どこでもお前のことは
俺が守る」
と言った。
すっごいベタなセリフだけど
優斗が言うとすごっく感動した。
そして、映画が終わった。
優斗は、少し照れながら手を差し伸べてきた
その後、ゲーセンに行った。
もちろん2人でプリクラを撮った。
2人の最高のショットだ。
1回目のデートからいろいろありすぎて..
優斗はずっと一緒でいようって言ってくれた。
ずっと..
返事は、できなかったけど
とってもとってもうれしかった。
早くも、もう2回目のデートの約束をした
今度は、優斗の希望でサッカーの試合を
見に行くことになった
サッカーには、ぜんぜん興味はないけど
優斗が好きならとOKした。
それに、サッカーについても
少しだけ勉強した。
ルールくらいは、わかるように。
1週間後の日曜日に約束した。
1回目のデートからすっごく
優斗を気にしてしまう。
授業もまともに受けれないくらい..
やっぱり私は、優斗が好き。
とってもとっても好き。
私に対するいじめは、
体育倉庫の件からなくなりつつあった。
今は、普通に優斗と仲良く話すことができる
でも、いじめられてたときは、
みんなの視線が怖くて優斗と話すことが
できなかった。
やっと話せるようになったのが
幸せだった。
このままずっと大好きな優斗と一緒に
居られる。
それだけですごく幸せだった。
1週間がたった。
優斗との2回目のデート
サッカーについては、しっかり勉強したので
ルールくらいは、わかる。
これで、優斗とサッカーを楽しめる。
すごく楽しい時間を過ごせる。
集合場所に行った。
やはり、また優斗を
すぐ見つけることができた。
だって輝いてるもん。
優斗を見つけるのは、
世界で1番早い自身がある。
私は、優斗の後姿に声を掛ける。
「優斗!」
「おはよ!!」
優斗は、にこっと笑った
そして、
「なんかわり~な」
「お前、サッカーなんて好きじゃね~だろ?」
「ほんま、ごめん」
と言った。
私は、優斗の優しさが身にしみた。
ちゃんと私のことを考えてくれているんだ~
と思ったら笑みがこぼれてきちゃう。
優斗は
「なにニヤニヤしてんだよ」
と言っている。
私は、思わず優斗に抱きついた。
優斗は最初びっくりした感じだったが
やさしく抱きしめてくれた。
改めて優斗は、大きくて温かいな
と思った。
優斗の胸に顔を押し付けると
優斗の心臓の音が聞こえる。
当たり前のことだけど
優斗は、ちゃんと生きてるんだな
と実感した。
優斗は、
「そうだ!」
「俺のサッカー観戦に付き合わせた
お詫びとしてジュースおごってやるよ」
と言った。
ここは、遠慮なく..
「ありがと^^」
と言った。
優斗に買ってもらってコーラを左手に
右手は、優斗の手を握っている。
『サッカーのスタジアムの中で
お前が迷子にならないように手を
繋いでやる。』
だって~
優斗かわいい!!
2人で手を繋いで歩いた。
大きな試合なのか観客はみんな
そわそわしている。
私たちは、席に座った。
すると、席の近くで大声で
叫びまくってる人がいた。
優斗は、少し顔をしかめながら
「あ~いうやつらのことをフーリガンってんだ。」
「あいつらは、試合観戦じゃなく暴れることを
目的としてるやつらだから気をつけろよ!」
と言った。
私も少し聞いたことがある。
要注意人物と指定された人は、
スタジアムに入ることもできないらいし..
あんな人たちとは、絶対かかわりたくないよ。
プロの試合は初めて見たけどすごいってことは
一目瞭然だ。
優斗も私のことそっちのけで
試合観戦を始めてしまった。
優斗はほんとにサッカーが好きなんだな
と思う。
ひとつのことに一生懸命になれる優斗は
素敵だと思う。
一生懸命の優斗に見惚れ
初めて見るサッカーに見惚れた。
サッカーの試合は、勉強したおかげか
とても、楽しかった。
好きな人と楽しいことを共有すること
以上に幸せなことはないと思う。
そして、長くも短いサッカーの試合が
終わった。
優斗は
「ごめん.. 俺ばっか楽しんで..」
と申し訳なさそうに言うので
私は
「そんなことないよ!」
「すっごい楽しかったよ」
と言った。
すると、優斗は
「だよな~」
「サッカーって最高だよな!」
と言った。
私は、うん!!
と答えた。
そして、また手をつないで帰り始めた。
そして、階段の手前に来たところで
いきなり後ろから怒鳴られた。
あのフーリガンの男だ。
私たちは、無視するように歩き出した。
すると、フーリガンの男は
私の肩をつかんだ。
私は、ひっと声をあげた。
優斗は、状況を確認したみたいで
フーリガンの男に
「やめてください」
「彼女も嫌がってるじゃないですか!」
と少しやさしめに注意した。
フーリガンの男は謝るどころか
優斗につかみかかった。
「おい! に~ちゃん」
「俺に喧嘩売ってんだよ。」
「相手してやるぜ」
と言ってきた。
優斗は、フーリガンの男を
鋭くにらんだ。
私は、
「優斗、もうやめよ」
「こんな人ほっとけばいいよ」
と言った。
すると、優斗は少し落ち着いた感じだった。
しかし、相手のフーリガンの男は
ぜんぜん変わってない。
「おい!何、睨んできてんだよ。」
「やんのか、コラ!?」
と怒鳴り続けている。
そして、フーリガンの男は
暴れだした。
優斗は私をかばおうと私の前に立った。
優斗は、フーリガンの男に殴られた。
3,4発殴られている。
なんとかしなきゃと
「もうやめてください!」
っと言った。
すると、フーリガンの男が
私に殴りかかってきた。
そして、優斗が完全にきれた。
そして、フーリガンの男を殴った。
「おい! 彼女は関係ねぇ~だろうが!」
と言った。
フーリガンの男は、
「なんだよ。テメー」
と怒りくるって優斗を突き飛ばした。
優斗は、飛ばされていった。
そして、階段を転げ落ちていった。
その一瞬がスローモーションのようだった。
ゆっくりと優斗が階段から落ちていく。
周りの音が消えた。
何も聞こえない中、落ちていく。
優斗まって行かないで..
私を置いて行かないで..
「優斗~~」
気づいた時、私はそう叫んでいた。
階段の下で優斗は赤い液体に囲まれ
ぐったりと倒れている。
フーリガンの男はヤベって顔をして
一目散に逃げていった。
階段に残された、私と優斗
ふたりだけ
私は、優斗に駆け寄った。
優斗、優斗
呼びかけても反応を示さない。
優斗、死んじゃいや..
はっと私は、我に戻った。
病院に電話しないと..
じゃなくて、救急車呼ばないと
119
と、押した。
電話口から落ち着いた口調で
「救急ですか? 消防ですか?」
と聞かれた。
でも、私は落ち着けるはずもなく
「きゅ、救急です。」
「男の子が階段から落とされて」
「えぇっとえぇっと」
「と、とにかく助けてください。」
とすごい早口で叫ぶように言った。
電話の人は、相変わらず落ち着いた口調で
「救急ですね。」
「場所は、どこですか?」
と聞いてきた。
そうだった!
「えぇっと○○スタジアムです」
と少しだけ落ち着いて言った。
電話の人は、
「わかりました。」
「では、すぐ救急を向かわせますので
わかりやすいとところで待機していて
ください」
と言った。
私は、優斗のそばから離れた。
わかりやすいところに居なきゃと
走り出した。
救急車早く来て
早く、早く
早く来てよ。
呼んでから1分もたってないのに
ずっとそんなことを考えってしまっていた。
5分ほどして救急車のサイレンの音が
聞こえてきた。
き、来た。
救急隊員の人たちを優斗へと誘導した。
優斗は相変わらず呼びかけに反応しない。
優斗は、救急車に乗せられた。
救急隊員の1人に
「あなたも来てください」
と言われた。
私は、優斗と共に救急車に乗せられた。
できれば、死ぬまで乗りたくなかった。
ましてや、好きな人の付き添いとしてなんて..
サイレンの音がすごく大きな音で聞こえる。
優斗は優斗は私のせいで階段から落ちたんだ。
私が、要らない事を言って殴られたから
優斗が怒って突き落とされたんだ。
完全に私のせいじゃない!
優斗ごめんね..
ごめんね..
ホントごめんね..
謝っても謝っても謝りきれない
優斗の手を握りながら泣きじゃくった。
しばらくすると、救急車は止まった。
どうやら病院に着いたようだ。
優斗はそのままベットに乗せられて
連れて行かれた。
私は、待合室で待たされた。
いつのまにか涙も涸れていた。
ただ優斗の無事を祈った。
たぶんまだ1時間程度しか経ってない
けど、もう何十年もずっとここにいる
ような感じがした。
がんばれ優斗
ずっと一緒にいようって言ったのは
優斗なんだから優斗が死ぬなんて
ありえないよ
優斗、今どこに居るの?
大丈夫?
あたしのことわかる?
祈りながら待っていた。
よくわかんないけど
何かを待っている。
優斗..
なんだか人の気配がした。
顔を上げるとお医者様が立っていた。
「臼井さんのお連れの方ですか?」
と聞いてきた。
私は、
「はい..」
と答えた。
お医者様は
「臼井様は、階段から落ちたことにより
頭を強打されたことにより頭部打撲してますが
意識は清明なので様子を見ましょう」
と言った。
ということは、意識が戻ったってことかな?
「え!?」
「じゃあ優斗は?」
と言うと
お医者様は
「今日は、もう帰っていいでしょう」
と言った。
私はとにかく
「ありがとうございます」
と言った。
状況は、いまいちよくわからなかったけど
帰れるってことは問題ないってこと
だよね?
よかった!
「もう少しの間お待ちください」
とお医者様は言った。
しばらくして少しだけ元気そうな
優斗がでてきた。
優斗は、すまなさそうに
「優香のこと守るって言ったのに
守ってやれなくてごめんな..」
と言った。
なんで?
何で優斗が謝るの?
優斗は命がけで私を守ってくれたのに..
私は、
「そんなことない!」
「優斗は私のこと守ってくれたよ」
「それに悪いのは私だよ」
「私がかってにいらないこと言って
勝手に殴られて、で優斗は..」
「ほんとにごめんなさい」
と本気で謝った。
優斗は
「おいおい..」
「そんなの、お前ぜんぜん悪くね~じゃん」
と笑ってくれた。
うれしかった。
もう二度と優斗の笑顔がみられないかも
なんて妄想した自分が馬鹿だったと
思っちゃう
ほんとによかった
私の気持ちを覚ったのか
「心配かけて悪かったな..」
と、ぼそりと言った。
優斗の優しさが胸にしみて
私は、優斗の前では泣かないと
決めたはずなのに泣き出してしまった。
そんなこんなで家まで送ってもらった。
優斗は今日のことは、
だれにも言わないでくれと
私に言った。
親を心配させたくないのだという
私は仕方なくいいと言った。
でも、よかった
優斗は生きてる
明日も明後日もずっと一緒にいられる
あの事故のせいで優斗といる時間が
どれだけ大切であるかわかった気がする
人間は永遠に生きられるわけがない
いつなんどき死んでしまうか
わからない
私は帰ろうとする優斗の背中に
「あした、優斗の退院祝いをしよ」
「あさ11時に絶対○○駅にきてね」
と叫んだ。
優斗は片手を挙げ
「おぅ!」
と言った。
絶対だよ! 絶対約束だからね
と心の中で約束した。
夜、私はいつも以上にごしごし体を洗い
顔も歯もいつも以上にピカピカにした。
やっぱり、いつでも最高の私を
優斗に見てほしい。
明日の服は何を着ようか1時間くらい
悩み続けた。
私には、どんな服が似合うんだろう?
1人でのファッションショーが始まった。
鏡の前とタンスを何往復もした。
悩んだ結果、かわいらしいピンクの
ワンピースを着ることにした。
少し丈が短いかもしれないけど
お気に入りだし、自分にも
似合ってると思う。
夜はワクワクして眠れなかった。
なんだか初デートの時と同じくらい
緊張する。
優斗は、私のことを見てなんて言って
くれるかな~なんて想像してたら
眠れなかった。
優斗が好きだ。
優斗を愛している。
優斗が居れば他に何もいらない
そんなことを考えた。
そして、いつの間にか私は、
深い眠りについた。
ぴぴぴ~
目覚まし時計の音が響いている。
は!
起きなきゃ!
早めに起きて髪をブローして
顔をきれいに入念に洗った。
今日は、とってもきれいに髪が
セットできた。
今日は、薄めにお化粧をした。
いつもつけない香水もつけた。
優斗は、絶対かわいいねって
いいってくれるよね。
早く優斗の反応が見たいな
また、約束より早く行った。
あ!
今日は、あたしのほうが早かった。
やったぁ~
初めて優斗に勝てた。
少したつと優斗がきた。
いつもの笑顔で優斗が来てくれた。
優斗は来るなり私の変化がわかったようだ。
優斗は
「お!?」
「今日は気合、入ってるね」
「優香は化粧なんていらないだろ」
「あんまり似合ってないぞ」
とふざけ半分風に言った。
私は、すごいショックを受けた。
ひどいひどすぎる。
優斗のために一生懸命に
おしゃれしてきたのに似合ってないなんて
最低!
私の怒りがマックスになり
きずいた時にはもう怒鳴っていた。
「優斗なんて大嫌い」
「最低」
「なんでそんなひどいことを
スラスラ言えるの?」
「私は、優斗がすごく私のことを分かって
くれていると思ってたのに..」
って..
それでも、私の怒りは収まらなかった。
優斗なんて大嫌いだ。
もう顔なんて見たくない。
そのまま私は帰ろうとした。
優斗は
「おい!」
「どこ行くんだよ」
と言いながら私の手を掴んだ。
私は、その手を振り払った。
「触らないで」
そう怒鳴ってそのまま歩き続けた。
すると優斗が
「優香ほんとゴメン」
と謝ってきた。
私は少しびっくりして振り返った。
優斗は少し安心したように笑った。
なんだか優斗の笑顔を見てたら
怒ったことなんて忘れて
しまいそうだった。
優斗は
「頼む..」
「ここに帰ってきてくれ」
と言った。
私は、優斗のほうに走り出していた。
優斗..優斗..
私は優斗に抱きつこうとした。
すると、優斗は
支えを失ったように倒れこんだ。
優斗なんで?
なんでまた?
「優斗、起きてよ」
「冗談でしょ?」
と言った。
優斗は何の反応も見せなかった。
あの時と一緒だ。
また、優斗が..
でも、今度はどこも打ってないのに..
頭なんて打ってないのに..
そして、また聞きたくのない
サイレンの音が近づいてきた。
いやだ。
いや!!
また、優斗を連れて行くの?
優斗..
優斗..
3年たった今、やっと
あの日のことを思い出すことができる。
あの後、病院に搬送された優斗の心臓は、
救急車の中で2回も止まった。
それでも、また動き出した。
きっと死にたくないと思っていたんだろうな
それでも結局、優斗は死んでしまった。
どうして私は、あんなどうでもいいことで
おこちゃったんだろう?
優斗は冗談で言っただけなのに
私は、かぁ~となっておこっちゃった
いくら後悔しても、もう優斗はいない。
優斗、最後に笑っていなくてごめんね
怒った顔が最後だなんて..
ほんとにごめんね
もう離れ離れになっちゃったけど
これからもずっと1人で生きていくね
優斗のことは、絶対に忘れないからね
それまで、私のことを待っててね。
ずっと待っててね