ピエール
パーティーの最中に感じた気配はそれ程恐怖と言う物では無かったが、間違いなく魔物の気配だった。
「ユークちゃま、近くでまもにょにょ気配がしましゅ」
緊張したり慌てるとクララの赤ちゃん言葉はひどく成るみたいだ。
「うん解ってる。 ミーシャ、リオ」
「「はい」」
「確認に行くから付いてきて」
「「はい」」
「レミーにカーラ、クララはこのまま何も無かった様にしてて原因が解ったら知らせるから」
頷いた3人を残して、少し休むとセドリックに告げて会場を抜け出した。
魔物の気配は寝室からだ。
もしやと思い急いで寝室に向かった。
考えていた通りで卵が少しずつ割れている。
まだ中からは出て来ないが動いてるのも確認できた。
もしこのまま暴れられると部屋が大変な事になるだろうと急いでドームにワープした。
レミー達に念話で孵化しようとしてることを知らせてセドリックにも話して貰った。
問題が起きることは無いが隠す必要も無いからと話してもらったのだ。
暫くするとレミー達とユージンがドームに駆け込んできた。
丁度その時欠けた卵の隙間から顔を出したのだ。
何が起こるか解らないので、ユーク以外は少し離れて貰っている。
火竜の赤ちゃんはユークを見て大きく口を開けて『ぴぇ~~~!』と、鳴き声を発した。
ユークは残りの殻を少しずつ壊し火竜の赤ちゃんを取り出した。
赤ちゃんはユークを親だと思ってるのか頭をすり寄せて来た。
どうやら危害は無い様だとミーシャ達も近くに来て良いと呼んだのだった。
インプリンティング(刷り込み)はどうやら成功したらしい。
ミーシャやクララが撫でても嫌がらないのだ。
「名前を決めて上げないといけませんね」
ミーシャの言葉にクララが答える。
「ぴえ~る!」
「ピエール?」
おもわず聞き返してしまった。
「どうしてピエールなの?」
「ぴぇ~~るって鳴いたから」
る、が聞こえたかは疑問だがクララには聞こえたのだろう。
「宜しいのでは有りませんか」
ミーシャは賛同している。
「そんなのでいいの?」
「はい、喜んでるみたいですから」
言われて赤ちゃんを見てみると確かに喜んでるみたいだった。
ユークは火竜の赤ちゃんを見ながら名前を教えた。
「今日からお前はピエールだ。」
ピエールと名付けられた火竜は『ぴぇ~~~!』と大きく一鳴きして羽をばたつかせた。
こうして火竜の赤ちゃんはピエールと命名されたが問題はこれからだった。
レミー達は思い思いの食材を持って来るのだが全く食べようともしない。
1時間程色々試したのだが全くダメだ。最後の手段とドロップアイテムの火竜の肉をあげてみたのだが無駄に終わってしまった。
ミルクかとも思い水とミルクを用意した。
水は飲むのだがミルクは口も付けなかった。
手詰まりだと皆が思った時にレミーが気づいたのだ。
「ピエちゃん大きくなってない?」
言われて見ると少し大きくなっていた。
最初体長60cm位だったのだが80cm位に成っているのだ。
ユークがよく見ていみるとピエールの足元にうっすらと黒い靄がかかっているのだ。
その靄を少しづつ吸収しているのだ。
その後も1時間位観察を続けていると先程よりも大きくなっていた。
しかも羽根を動かし少しだが浮くことも出来る様に成っていた。
ピエールを離れた所から呼んでみた。
「ピエール来い!」
ピエールは走りながら時には飛び跳ねてユークの元に駆け寄ってくる。
「ミーシャも呼んでみて!」
ミーシャに声をかける。
同じ様に声を掛けるとミーシャの方にも飛び跳ねながらよっていく。
段々と浮いてる時間も長くなってきた。
もう一度ユークが呼ぶと飛んだのだ。
高度は低いが羽根をしきりに動かし見事に飛んで来たのだった。
ユークは腕を横に伸ばして腕にとまらせようと此処に来いとピエールに叫んだ。
見事にユークの腕にとまったピエールの喉元を撫でてやるとピエールは喉を鳴らして目を閉じるのだった。
ユージンも試しにと呼んでみたが完全に無視されていた。
どうやらユークの匂いの強さで、判断しているようだった。
クララの言う事も勿論聞いたのだ。
ピエールを藁束の中に座らせてユーク達は城に戻ろうとする。と、慌てて付いて来るのだ。
ユークだけ残り皆には先に戻って貰う。ピエールに効くか解らないが、ここがお前の巣だからここで寝るように言う。
ピエールは寂しそうな目でユークを見たが大人しく丸く成って目を閉じたのだった。
ユークは羽根の辺りを撫でてから屋敷に戻った。
屋敷ではまだパーティーが続いていたので、皆に暫くドームに近づかない様に注意した。
その後暫くしてパーティーはお開きとなった。
ユーク達は部屋へ戻り風呂に入って休む事にするのだが。
ユークの入浴には当然ミーシャ達が入って来る。ここまでは普通の事だ。
しかしミーシャ達の入浴には当然の様にエマも入って来るのだ。
侍女服は着たままだがこちらは完全に全裸だ。
ミーシャ達になら見られても恥ずかしくないのだがエマに見られるのは流石に照れる。
「エマ、風呂は良いから外で待っててくれるかな?」
「ユーク様のお言葉でもそれは聞けません。」
「いや、ミーシャ達の裸を触って良いのは僕だけだし、エマの服も濡れるから」
言うとエマは黙って出ていった。
直ぐに戻ってきたエマは全裸だった。
「エ、エマなんで!」
「服が濡れると指摘されましたので脱いできました」
「そういう事じゃ無くて、目のやり場に困るから」
「ユーク様になら見られても問題有りません。」
「僕に問題が起きるから・・・」
「それも問題有りません。」
流石にミーシャ達もユークの女性が増えるのは好ましく無いとエマを追い出した。
寝室に戻りユーク達はベッドで早めに休んだのだった。
ガールズトーク inベッド
㋹「エマもユーク様狙いなのね」
㋕「エマはまだましな方よ、会場では何人も旦那様に抱きついて来てたわ」
㋷「あれはお酒のせいでは無いのですか?」
㋕「お酒の匂いなんてしてなかったわよ」
㋹「ミーシャはよく黙ってたわね」
㋯「ご主人様程の方なら侍女が寄って来ても仕方ないわ、目くじらばかり立ててはご主人様にも迷惑が掛かるもの、多少は侍女達にもご主人様の優しさをわけて上げないと恨まれるでしょ」
㋹「恨まれてもミーシャなら独占すると思ってたわ」
㋯「それならあなた達も近づかせないわよ、それでもいいの?」
㋷「それはダメです!」
㋕「そうよ私達も妻ですから、独占は許しませんわ」
㋯「でしょ、侍女も同じよ。ご主人様を好きになるのは当然だもの、妻の余裕も見せておかないと暴走されても困るからね」
㋹「さすがミーシャね恐れ入ったわ!」
翌朝、朝食も早く済ませてピエールの元に向かった。
ドームの扉を開けるとピエールはユーク達を見て一気に飛んできた。
昨晩よりも更に大きく成っていた。
体長も1mを超えていると思われる。
このままだとミーシャ達は危険だとピエールに目前で着地する様に指を差す。
まだ子供だからなのかそのまま突進して来た。
ユークは少し前に飛び出し受け止めて、ピエールを叱った。
怒られてるのが解ったのか尻尾を垂らして下を向いてしまった。
余り叱ってばかりも可愛そうだとピエールに頭を撫でながら飛び回るように指示してみた。
一鳴きした後飛び上がり昨日より遥かに高く飛び回っている。
実験とばかりにピエールに念話で『来い』と言ってみた。
すると言う事を聞いたのだ。
目前に降りるように指を差すと今度はきちんと着陸したのだった。
ミーシャ達もピエールを撫でてやると尻尾をパタつかせて喜んでいた。
今度はブレスの実験だ。
中央に鎧を着せた人形を数体用意してユークがファイアで焼き払う。
ピエールを見て違う人形を指差したが上手くいかなかった。
ピエールは飛んでいき人形を掴んで戻ってくるのだ。
口で息を強く吹く姿を何度も見せてもう一度指を差すと、ピエールは解ったのか必死に息を吹こうとしているのだ。
だが全くブレスが出ることは無かった。
まだ無理なようだった。
ユークは真似だけでも出来た事をしきりに褒めてやった。
ミーシャ達の言う事もよく聞いて数人の騎士にも合わせたが攻撃をするなどの危険な行為は全くしなかったのだ。
ユークの実験は成功で有ると言えるだろう。
しかしこれはユークだから出来た事なのだ。
後にこの話が広まり商売になるのではと冒険者を大量に雇い卵を採取した商人が羽化させたがそのまま咬み殺される。その後街に火竜がいると大事件になったのだ。
ユークが退治に向かい事件はおさまったのだがこの時の火竜は懐く事もなかった。
これはユークの圧倒的な力を感じて、従う事で身を守ろうとした結果なのだ。
ユークを怒らせてはいけないとユークの匂いの強いミーシャ達にも従ってるのだ。
ミーシャ達を守ろうとしたユークの行動も見て学習したのだろうがピエールが勝手に誰かを襲う事はこれからも無かった。
ユークは最後の実験とピエールをワープで外に出したのだ。
ピエールに飛べと命じて自由に飛び回らせる。
大きくなってからだとパニックになるだろうがピエールはまだ1m程なので余り気づかれない。
気づかれても鳥が飛んでいる程度にしか思われないのだ。
たっぷり外の世界で遊ばせてから念話で『来い』と呼ぶと暫くすると帰ってくるのだ。
これで、何処に居ても呼び出す事が出来ると確信したのだった。
ピエールの世話はクララが率先してやると言うので任せることにする。
世話をする時は監視用に絶対騎士を付ける事も了承させた。
ピエールにもクララと仲良くしてる姿を見せわざとクララに危害を加えようと騎士にさせてユークの威圧で抑える所も見せておいた。
その時の威圧感にピエールは少し震えていたがユークは優しくピエールを撫でてやる。
その優しい気配も解るのかピエールはユークに首を擦り付け甘えて来るのでクララと一緒に何度も撫で摩ってやった。
翌日には実験の成功が各国に報告されて、コンラットへの住民の移住が解禁されたのだった。




