移住
時間は流れて明日には城に移住という日まで来た。
火竜の卵に大きな変化は見られないのだが,
耳を当てると小さく『トックン、トックン』と心音も聞こえてるので問題もなく育っているのだろうと思う。
城の落成式も昨日滞りなく終了した。
式には3国から王侯貴族の面々が参列してくれたのだ。
夜は新生コンラット国の重要人物の紹介等も行われた。
王は言わずと知れたユークだ。
王妃は、ミーシャが当然第一王妃で、リオ、レミー、カーラと続く。
宰相には、若いのだが優秀で庶民派だと言うマホガリアからの推薦者、セドリックと言う30歳人族の男が就任する事になった。
このセドリックは元商人で人付き合いが得意な人物で各国の受けも良くユークもとても気に入っていた。
近衛騎士は団長のユージン以下300名と少し増えていた。
ユージンは近衛の統括官と言う役目だが、下に騎士隊と魔法騎士隊の2つが有る。
騎士隊の隊長には若いのだがアリシアが、ユージンの推薦で就任した。
魔法騎士隊の隊長にはドロシーと言う50歳の女性が就任したのだ。
どちらの隊長も女性だがこれは圧倒的に女性の応募が多すぎて、採用したのが女性ばかりだったからだ。
ドロシーが非常に高齢なのには理由があった。
今回採用した騎士の平均が20歳前後なのだが魔法騎士は信用が無いと危ないからとアルバが元仲間に口を聞いてくれたのだ。
そこで来てくれたのがドロシーだったのだ。
ユークはドロシーの事は全く記憶に無いのだが、小さい時には会った事も有るらしい。
アルバの息子なら自分の息子と同じだと快く引き受けてくれたのだ。
後は庭師等の使用人筆頭がアベル一家だがその他にもセルトの冒険者ギルドの紹介で、2組の元冒険者家族が常駐してくれる事に成った。
機会が有れば紹介しよう。
お待ちかねの(待ってない?)侍女だが総勢30名採用された。
ユークの世話は勿論ミーシャ達がするのだが、ミーシャ達にも当然侍女がつくのだ。
ミーシャ達は必要無いと言ったのだが、王妃に侍女の1人も居ないと問題も出るとセドリックに説得され4人で1人だけ付ける事になったのだ。
名前はエマ、獣族猫種の23歳の女性だ。
彼女はユークが開放した元アレックスの奴隷だった女性で、助けられた恩を返したいと応募してきたのだった。
街の復興もかなり進んでいるのだが、まだ住民は入れていない。
今は、石畳を敷き詰めて区画の整理が終わったところだ。
王宮が完全に出来上がってからと考えていたのと、城には火竜が居ると宣伝してからと考えていたから孵化待ちなのだ。
城で働く人達には面接の時に火竜に事は話してある。
いざと成ればユークが助けるからとも言ってある。
火竜の事を聞いて応募を取り消すのも多いだろうと思っていたが、ユークの高名が勝ちすぎて全く減る事はなかった。
実際王宮の規模もハンパ無い大きさなので完成するまで、何処まで大きくなるか解らないと言うのも理由なのだ。
城はそれ程大きくないがそれでも侍女の個室と謁見室、宰相や団長の執務室に他貴族の執務室も有る。客室が40部屋と晩餐会用の大部屋等等かなりの大きさだ。
ユーク達の執務室や私室もかなり広い。 寝室だけでも50畳は有るのだ。
当然ベッドも特注で15人は楽に寝られるし浴室は個室でも今までの3倍以上の広さがある。他にも侍女達が使う大浴場も勿論ある。
大浴場は女性専用だがユークは使用可能と侍女達が決めた事を教えられたがミーシャ達には出来るだけ禁止と注意された。
出来るだけと言うのは、ユークも男だからたまには誘惑に負けるかも知れないから少し位なら侍女にもお情けを掛けて良いと言う配慮だ。(常に誰かが側に居るので、絶対に行けないと思う)
荷物等はワープの魔法でコンラットに屋敷毎移動させてそこから侍女達に運んで貰った。
この屋敷は後で元に戻すのだ。
建物毎転移させた事でユークの凄さをセルトとコンラットにいる人達にまざまざと見せつける事に成った。
ユークも今更隠す気は無かったのでやりたい放題だ。
卵はユークが壊れない様に運んだ。
荷物の移動はそれ程掛からないが洋服の量はかなり有ったので半日がかりになってしまう。
午後からは侍女や城で働く人の荷物が届く予定だ。アベル一家の荷物は屋敷の方に移動してたのでまとめて運んできた。
アベル達が住む家とユージン達の隊舎もすでに完成してるので、今日1日はあちらこちらで引越しが行われている。
明日は就任式と全職員の顔合わせの立食パーティーが開かれる。
本来料理は別の料理人が作るのだが、侍女達が兼務すると言う事なので雇っていない。
必要が有れば後で雇う事に成ってる。
屋敷をセルトに戻すとユーク達のやる事は完全に無くなった。
他が勝手にやってくれるからだ。
ミーシャ達も暇そうだ。
いい機会だからと王都以外の元からある平民区と言われていた地区を見て回る事にした。
この区域は規制もしてなかったので、住人も住んでいる、
勿論全員がユークの事を知っているし歓迎もしていた。
セルトとマホガリアとの行路も確立され少しずつ裕福に成ってきたからだ。
しかしユークは国王とは呼ばせ無かったのだ。
気恥ずかしいからだとユークは言う。
「ユーク様、王妃様、お揃いでお散歩ですか!」
「ええ、今日から移住します。これからは宜しくお願いします!」
何処までも低姿勢な国王達だった。
「何か困った事があれば何時でも城に来て下さいね、」
ミーシャも答えて挨拶をする。
次から次へと交わされる挨拶に少し疲れてくる。
露店の店主等はあれもこれもと次々に食べ物や飲み物を持ってくる。
ゆっくり散歩も出来無いと早足で回って城にもどった。
「逆に疲れたね」
「ご主人様の人徳です」
とミーシャが言うと、さも当然とリオ達も頷くのだ。
カーラがゆっくり散歩したいなら護衛を付けるものだと教えてくれた。
「ご主人様なら威圧すれば誰も近寄れませんけどね」
リオが怖い事を言う。
「流石にそれはしたくないよ」
苦笑いしながらユークが答える。
「カーラの言う様に護衛でもつける?」
「ご主人様なら護衛の護衛になりかねないわよ」
確かにと皆で笑いながら城に戻った。
引越し作業はまだ続いていたのだがそれ程バタバタとはしてなかった。
セドリックに何か無いかと聞くと大量の仕事をくれるのでユークからは絶対に聞かない。
仕方無いと私室でのんびりする事にした。
レミーはユークのお茶の用意だ。
ミーシャ達のお茶はエマが用意する。
「エマも一緒にお茶にすれば?」
ユークが聞くのだが侍女だからと直ぐに部屋から出ていったのだ。
「旦那様、エマは仕方無く私達に付いて貰ってますけど手は出さないで下さいね」
「出す訳無いだろ」
「旦那様は優しいですから直ぐに侍女達を甘やかせてしまうでしょ、そうなると情も湧いて離せなくなって・・・・」
と、カーラに順序良く説明された。 全く否定できなかった。
暫くのんびりしているとエマがノックしてきた。
「王妃様、パーティーの用意ももう少しで終わりますのでお召し換えを」
着替えをさせようと呼びに来たのだ。
ユークを1人にしては成らないと決めているのかミーシャから順番に着替えに行く。
戻ってきたミーシャは着崩れ無い様に立ったままで待機しているのだが、どうにも疲れる。
リオやレミー、カーラの着替えが終わり、ユークの着替えと言われたがユークは断った。
綺麗な花だけ有れば良いと言って何時ものスタイルで参加することにしたのだ。
エマが退室して、ユークは自分の妻達をゆっくりと見回す。
「何度見てもミーシャ達は綺麗だ。改めて言うけどこれからは前と状況も変わる。だけどずっと一緒に居て欲しい」
「勿論です。ご主人様、死んでも離れませんから」
ミーシャが言いながら抱きついてくる。
ユークは受け止めてキスをする。
「私も離れませんよ。奴隷が王妃なんて分不相応ですが、ご主人様の御側からは捨てられても離れません」
リオも胸を押し付ける様に抱きついてくる。
同じく受け止めてキスをする。
右手は自然と胸に行っていたが無意識だ。 と、思う。
「ユーク様の子供は私が産むと決めてるのよ、絶対逃がさないから」
違う意味では怖いのだが、レミーも可愛い妻だ。
受け止めてしっかりとキスをする。
「旦那様以上に素敵な男性等いませんわ。これからもずっと愛し続けますわ」
カーラとも抱き合いキスをする。
この状態になると必ずもう1人現れる。
当然クララだ。
クララは最近成長期に入ったのか身長もかなり大きく成って来た。
もうすぐレミーに並ぶ位だ。元々舌っ足らずで言語もまだぎこちないがしっかりもしてきた。
今まではペッタンちゃんだったのも多少の盛り上がりを見せていた。(イェ~イとかではないよ)
「ユークしゃま」
(おしい)
「わたしもいっしょでしゅよね」
(これまたおしい)
「もちろんだよ、おいで!」
クララもユークに抱きついてくる。
皆と同じ様にキスをする、
最後にウサ耳を撫でて会場に向かった。
会場に5人の美女をエスコートして入ると会場は一斉に拍手に包まれた。
真ん中まで歩いて行き、セドリックから紹介を受けて一言挨拶をする。
「今日は皆の顔合わせです。無礼講ですから大いに楽しんでください。侍女職の皆さんも手が空いたら参加してください」
続いて王妃を代表してミーシャが挨拶をする。
「皆様、ユーク様の為に集まって下さって本当に感謝してます。この国の舵取りはセドリック様に任せてばかりでご迷惑をお掛けします。ユーク様と新しいコンラット国の為に皆様の力をお貸しください。私達からもお願いいたします。」
ミーシャの言葉に妻達+クララが一斉に頭を下げた。
セドリックの乾杯の合図を皮切りにパーティーが始まった。
ユークはミーシャ達と色々と動き回り挨拶しながら話をして行く。
アベルやエルダも騎士や侍女等の違う職種の人達と楽しそうに話していた。
それぞれが楽しい時間を過ごしてくれているようでユークも嬉しかった。
侍女トークin厨房
「まだ~」
「鴨のコンフュもう直ぐ完成するわよ」
「飲み物ももっと出して」
「早く終わらせて参加しないとユーク様とお話出来ないわよ!」
「解ってるわよ!あなたも口じゃ無くて手を動かしなさい」
侍女トーク パート2 in会場
「ほら、あなたから行きなさいよ」
「無理よ、王妃様が離れてくれないもの」
「順番に王妃様と話に行くから交代でユーク様を引き離しましょ」
「ミーシャ王妃は難しいと思うわよ」
「最大の難関ね」
「もう皆で一斉にユーク様に抱きついちゃう?」
「私はユージン様とお話してくる」
「私は酔った振りして抱きついちゃった。うふっ」
「ずる~い、それでどうだったのよ」
「大丈夫って優しく抱きしめて頂いたわ。ユーク様の体は服の上からでも解る位たくましくて、いい匂いがするの」
「それでそれで」
「だめ、もうメロメロよ。私、ユーク様の女に本気でなってみせるわ」
「そんなの皆狙ってるわよ」
城中が笑い声で満たされている時にユークとクララだけがある気配に気づいたのだった。




