嵐の予感
昨夜の疲れか、だるさの残る体を無理やり覚醒させて目覚める。
ご主人様が目を覚ますのは、もう少しだけかかる。
何時もユークより早く目を覚まし、ユークの目覚めを待つのもミーシャの日課だった。
毎日1番先に顔を見て貰いたい、1番先に声をかけて貰いたい、この先リオさんがご主人様の奴隷と成っても、それだけは譲れない。
毎日、ユークの顔の向きに合わせて覗き込んだり、時には強引に抱きついて、自分の方に向かせる事も有った。
リオさんが来たら、それもどうなるのか解らない。
なにしろ、リオさんは自分より大きいものを、持っているのだからと、考えてしまう。
ユークの事だからリオさんも一緒に寝ることになるだろうとは、重々承知もしている。
出来るなら独占もしたい、今後のことを考えるとやっぱり不安もある。
だけどもユークの決める事に従う事にも不満はない。
何が有ってもついて行くだけ、だから、2人しか居ないこの時間だけは、大切にしたかった。
「んんっ」
(ご主人様のお目覚めだわ)
ユークの顔を覗き込み、目が開かれるのを待つ。
少し目が開いたタイミングで、口付ける。
「おはよう御座います、ご主人様」
「おはよう、ミーシャ」
こうして、ミーシャの1日は、始まる。
ユークは、リビングで目覚めの紅茶を飲んでいる。
ミーシャは、急いで朝食の準備に取り掛かっていた。
朝食は、2日に1度買ってくる、パンと、魚介のスープ(種類は日替わり)にサラダの3品が定番だ。
片付けが終わるのを見計らって、ユークは、予定を話し始める。
「昨日の依頼がまだ有ったら、受けるから用意してからギルドに行くから」
「わかりました」
何時もの様に、2階にあがり着替え、装備を身にまとう。
予定の依頼は、片道3日掛かるラチェタ村の依頼だと解っているので、野営の道具もユークのマジックポーチに入れる。
普段から入れておいても良いのだが、手入れもしないと行けないので、倉庫化している、客間の1部屋に置いてある。
本来ならば、野営の準備は必要無いのだ。どこまで行ってもユークのワープで、家に戻れば済むのだから、しかし、今回行く場所は、ユークも初めてなので、馬車をチャーターして行くので、無闇にワープは使えない。
片道だけの予約で、帰りはワープで帰ってくる予定だった。
用意が整い戸締りをして、冒険者ギルドに向かう
ギルドには、依頼を探す冒険者で、賑わっていた。
ユークとミーシャも、掲示板に向かった。
大半がCランク以下の冒険者ばかりなので、Bランクの依頼書は、邪魔もされずに見ることが出来た。
Bランクの依頼書を見てると、そこは、お前たちが見る依頼は無いぞ、とか言ってくる冒険者も居たが、その都度
ミーシャが、Bランクですからと言い返していたのは、楽しかった。
目的の依頼書はまだ、貼ってあったので、剥がして受付に持っていった。
レミーは居なかったので、空いてる受付に持っていき、ランクの確認を済ませて、依頼を受けた。
商人ギルドで、ラチェタ村まで馬車を借りる手続きをする。
馬車は、1日幾らで、ラチェタ村まで、3日掛かるので、御者付きで借りる事にした。
(馬車だけでも借りれるんだ)
料金は、1日1800Gで、3日分の5400G支払った。
馬車の旅は、快適なのだが暇で仕方がないと実感した。
「馬車の操縦って、難しいの?」
御者に聞いたつもりだったのだがミーシャが答える。
「馬に乗るよりは簡単です」
「ミーシャは、御者出来るんだ」
「出来ますよ」
ふむっと考えてからミーシャに聞く
「馬車があれば、便利だよね?」
「必要無いと思われます」
肯定されると思っていたのに、あっさり否定されてしまった。
「どうして?」
聞かれたミーシャは少し考えてから
(ご主人様のワープが有れば、必要だとは、思えませんし、馬のお世話や維持費も掛かります。)
御者にワープの事を聞かれない様に、念話ではなしてきた。
「たしかにそうか」
「はい」
解って貰えた事に嬉しかったのか笑顔で、頷いた。
ラチェタ村までの道中は、別段変わったことも起きずに予定の3日で無事到着した。
すぐさま、村長の家を聞き向かったが、何やら慌ただしくて、直ぐには取り次いで貰えなかった。
しばらくまたされ村長が現れたのは、20分後だった。
「お待たせしました。 村長のバルゴンと言いますじゃ」
バルゴンと名乗った村長は、妙齢80位のドワーフ族の男だった。
「いえ、依頼を受けて来たユークです。隣がミーシャと言います。」
主人に紹介されて、ミーシャも軽く頭を下げた。
「依頼の集落が、何処にあるか教えて貰えますか?」
「集落は、ここから半日程南に行った、セルト火山手前の、森に有りますじゃ」
「ところで、慌ただしかった様ですが、なにか有ったんですか?」
暫く黙っていた村長だが、心配するユークを見て話し始めた。
「村の娘が2人、帰って来んのですじゃ」
「大変じゃないですか!」
「この村は、南にオークの集落が出来た為に、北の森で、狩りや山菜を摘んで、生活をしてるのじゃが、山菜を積みに行ったまま帰って来んのですじゃ」
「北の森には魔物は、居ないのですか?」
「今まで確認されたことは、ないですじゃ」
「危険なところとかは?」
「こんな事は、初めてですじゃ」
「見に行きましょうか?」
少しでも、力に成れるならと、ユークは提案する。
「今、村の男衆が探しに行ってますのじゃ、帰ってくるまで待ってて貰えませんかの」
ミーシャと顔を見合わせ頷いた。
1時間程すると男が1人、走って帰ってきた。
「どうじゃった」
「ゴ、ゴブリンが、巣を作りかけてます。」
「ゴブリンじゃと!」
ユークは立ち上がり、ミーシャの肩をぽんっと叩いた。
それだけで、ミーシャも納得して、立ち上がる。
「どこですか方向だけ教えてください」
「行って下さるのか?」
「時間が有りません 大体の場所で良いので、教えてください」
「案内します」
男が言ってくれたがユークが走ったほうが、遥かに早いので断り大雑把な場所を聞いた。
聞いて、暫くは普通に走り、村人が見えなく成った所で、ミーシャを抱き上げ教えられた方に全力で駆けた。
走りながら探索も発動させる。
教えられた、場所に近づくと魔物の気配と近くに人の気配があった。
「村人が居るからここから走るよ」
ミーシャを降ろしミーシャに合わせて走る。
村人に事情を話しすぐさまゴブリンの巣に入っていった。
ゴブリンの巣は、森の外れの崖にある洞窟に巣を作っていた。
中に入ってライトの魔法で、灯を確保して、気配のある方へ、駆け足ですすんだ。
5分とかからずにゴブリンの遭遇した。まだ5匹しかいなかったので、エストックで、頭を突き1擊の元に倒していく。
魔法を使わないのは、村の女性達が近くに居るからで、巻き込まない為だ。
あっさりと討伐が終わり、気を失ってる女性の頬を軽く叩き覚醒させる。
恐怖から、ユークをゴブリンと勘違いしたのか、逃げ様としたが、ミーシャが優しく語りかけた事で、助かった事が解った様で、ボロボロと抱き合い泣き出した。
「大丈夫ですか? 何もされませんでしたか?」
矢継ぎ早に問かける。
ゴブリンは、繁殖の為に女性を攫う魔物だ。
もしゴブリンに性行為をされた女性は、だんだんとゴブリン化してしまうので、もし性行為されてたら、可愛そうだが殺すしかないので、聞いたのだ。
「大丈夫です。何もされてません。」
ミーシャと2人で、ホッとする。
ドロップアイテムも落ちているのだが、少しでも早く村に返してあげようと、無視して洞窟を出た。
外にいた、村人達に女性達を任せて、一緒に村に戻った。
村長や攫われた女性達の家族が次々にお礼に来たが、気にしないでと言いそのままオークの居る森へミーシャと向かった。
「先程の女性は、幸運でしたね」
「幸運?」
歩きながらミーシャが話しかけてきた。
「はい、今日、偶然にもご主人様がこの村に来られた幸運です」
「僕じゃ無くても、誰かが来てたら助けられたと思うよ」
「そんな事はありません! ご主人様だからあの時間で救出できたのです。 もしほかの冒険者の方が来たとしても、案内されて着いた頃には、あの女性達は多分行為をされた後だったと思います」
「何にせよ無事で良かったよ」
「はい!」
そんな話をしながら歩く事半日、目的の森に着いた。
回りに誰も居ないので、一度家に帰っても良かったのだが、被害が出てもダメなので、そのまま討伐に向かった。
探索のスキルを再度発動させると、ギルドで聞いた通り、4つの集団が引っかかった。
一番近くは走れば5分程で行けるので、そこからと、向かった。
ミーシャも見とれる無双っぷりで、いつ目の集落は、5分と掛からずに崩壊した。
ここには7匹のオークが居た、オークのドロップアイテムは棍棒だが、数も多くなるので流石に邪魔だと思いそのまま放置した。
(売っても大した金額じゃないしね)
そのままの勢いで、4つの集落を潰すのに2時間は掛からなかった。
一応ステータスを確認してみたが、白のままだった。
ミーシャも同じだった。
火山の近くの森だからなのか木々は茶色く変色しているのが殆どで枝だけの木も多かった。
付いた時点で陽もとっくに落ちていたのにそのまま歩き続けると朝になるだろうからと、ワープを使い一気に村に戻った。
辺境の村なので、ワープが使えるのがバレても構わないだろうと言う判断だ。
村長の家の前にワープしたのだが、深夜だったので、誰にも見られなかった。
村長の家をノックして討伐の終了とワープの事、それと棍棒をそのまま残してあるので、村で好きにしてくれと言い、村長が部屋を用意してくれたので、そのまま休んだ。
翌朝、村長が起こしに来る少し前にミーシャに起こされた。 柔らかい口付けと共に。
確認の為と、昨夜聞いたアイテムの回収の為に村の男3人が馬車で、出かけていった。
帰ってくるのは、早くても夕方になるだろうという事なので、のんびり過ごして待つことになった。
「予定外の事件も有ったけど、遠出もたまにはいいね」
ミーシャとおしゃべりしながら時間を潰す
「ご主人様と一緒ならどこでも楽しいです。」
可愛いことを言ってくれる。
そんなたわいもない会話をしている時に、ユークはふとあることを思い出した。
「そうだ!」
「どうかなさいましたか?」
「いや 前に念話の話ししたでしょ」
「はい」
「その時、距離がどうとか言ってたでしょ」
「はい」
「今なら試せるんじゃないかと思うんだ」
今ならユークだけ家に戻ったり、来る時に野営した場所に行ったりして、距離を測れるのでは、と考えたのだ。
「そうですね」
ミーシャも納得してくれた。
村長に与えらてる部屋に戻りユークだけワープして家に戻る。
念話と念じて、ミーシャの名前を思い声をかける
(ミーシャ聞こえる?)
さほど待たずに返答があった。
(はい、聞こえます、ご主人様)
(今は、家なんだけど一度念話を切るから、ミーシャからもやってみて)
(わかりました)
一度違う事に意識を切り替えて念話を終了する。
5分程待ってみたがミーシャからの声は届かなかったのでユークからもう一度声をかけた。
(ミーシャ聞こえる?)
(はい、聞こえます)
(ミーシャからは、この距離だと駄目みたいだね)
(そのようですね)
(もう少し近づいて、試すから待ってて)
(解りました)
ミーシャの返事の後に、2日目の野営地にワープして、もう一度ユークから、声をかける。
(ミーシャ?)
(はい)
(さっきみたいにもう一度お願い)
(解りました)
こんなやり取りを繰り返したのだが結果1km位しかミーシャからの念話は、届かないことが判明した。
ユークの念話の距離は、正確には解らないが3日の距離は、楽に話せると解っただけでも収穫だった。
ミーシャの待つ、ラチェタ村の村長の家に戻り、確認の為に、村を出た人達の帰りを待つ。
帰って来たのは、村長の言った通りに夕方頃だった。
確認が取れたと、依頼完了証明書を村長から受け取り、ゴブリン討伐の追加報酬として、金貨5枚の50万Gを受け取って、一気に王都の自分の家までワープした。
居間で装備を外して、証明書だけ持って、ユーク1人でギルドに向かった。
ミーシャは、装備の後片付けと、夕食の準備の為にのこったのだ。
ギルドには、レミーが居たので、レミーに証明書を渡し報酬の100万G、閃貨1枚を受け取った。
閃貨は始めて見る貨幣っだった。
ユークは、金額にしたら閃貨5枚以上持っていたのだが、報酬やアイテムを売ったお金が貯まっただけなので、閃貨で貰える報酬は初めてだったのだ。
「これが閃貨なんだ」
「ユーくん、閃貨初めてなんだ」
「うん」
「私は、報酬とかで、何度か払ってるから知ってたけど、普通に生活してたら閃貨なんて、一生見ない人が多いからね」
「そうなんだ」
「閃貨なんて、使うの貴族位よ」
納得して帰ろうとすろとレミーが引き止めた。
「ユーくん待って」
何か忘れ物かと振り返る
「今日、彼女・・・ミーシャさんだっけ、は、一緒じゃないの?」
「あぁ~、ミーシャは家で、装備の片付けや夕食の用意してるよ」
「そっか」
「ミーシャに何か用事? 何なら明日来るように伝えるけど?」
「お願いしていいかな?」
「りょーかい、伝えておくけど、時間は?」
「出来ればお昼に」
解ったと伝えて、家に戻る。
途中で、ドルトスに帰ってきたことも伝えにいった。
家具は出来てるので明日持ってきてくれる事になった。
家に帰って、レミーからの伝言をミーシャに伝え、食事を済ませ、4日振りの風呂に入る。
風呂でミーシャと楽しんだ。
その後ベッドでもしっかり楽しんでから、眠りに落ちた。




