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神様の棄児  作者: ryo-KK
2章 仲間
17/88

人攫い稼業

ミーシャは、買った食材をリュックに入れて、背中に背負っている。服はユークに買って貰った、お気に入りの水色のワンピースだ。


ワンピースにリュックと言う、アンバランスな、よく目立つ出で立ちだが、すでに顔で目立っているので、周囲の人もリュックには目が行かない。


アイテムの売却に、冒険者ギルドに向かったユークの方へ、買い物を済ませて歩いていく。


この街に住みだして、まだ日が浅いのだが、同じ道程を辿るだけなので、問題はなかった、否、無いはずであった。


いつもの様に、12番街の商店で買い物を済ませ、平民区の11、10番街を抜け、9番街の商人ギルドへ行こうとしたのだ。 家のある貴族街を、突っ切って行くほうが近いのだが、奴隷身分のミーシャには、貴族街を歩くのは気が重く、遠回りだが、気楽な平民区画を通っての、買い物が常っだった。

ミーシャ的に、11番街だけは、好きになれないのであった。


理由は至極簡単で、11番街は、酒場や娼館の多い区画だからである。 雰囲気がどうとかでは無く、ミーシャと同じ奴隷身分の女性が、多く働かせれていて、ユークの奴隷で幸せ一杯の自分との、ギャップに申し訳なく思ってしまうからであった。





ユークが、ようやく10番街の中程まで来たその頃、ミーシャは、11番街の中頃を、ようやくこえて、10番街の境界線が視認できるあたりで、事件は起こった。


時間は、既に夕刻を過ぎており、あたりは薄暗くなり始めていた。


突然、ミーシャの前に、頑強そうな人族の男が、5人立ち塞がった。


男たちは、ミーシャを舐めまわすかの様にながめてから、声を発した。


「よう わんこちゃん! 可愛い格好で男漁りか~~」


他の男たちは、ケラケラ笑っていた、周囲の住人は、知らんぷりをして、そそくさと逃げていく。


「何か御用でしょうか?」


ミーシャは、強い口調で、言葉をぶつけた。


「御用ですか、だとよ~~、やっぱり奴隷だったか~~」


大きな声で、ミーシャを蔑み、反応を楽しんでいるのだ。


「奴隷身分に間違い有りませんが、ご主人様を、お待たせする事は出来ませんので、通して頂けますか」


「ご主人様だとよ~~、は~~~きゃわゆいね~~~~あははは」


「今日からは俺達がお前のご主人様になてやるよ! へへへへ」


「毎日可愛がってやるよ~! 子犬ちゃん!」


「子犬だし、ペロペロとくいだろ~~」


等と、代わる代わるに卑猥な罵声を浴びせてくる。


「私のご主人様は、ご主人様だけです。 あなた達の様な人の奴隷には、たとえ殺されても成りません」


はっきりと告げるミーシャだが、相手を逆なでするだけである事に気づいていない!


「へ~~そんなに今のご主人様がいいのかよ~~!そうか雌犬だから 夜の営みが忘れられないいんだろ~~」


「「「はははははははは」」」


大笑いする男たち。


「ご主人様の良さは、あなた達の様な輩には、一生解るはず有りません」


輩呼ばわりが気に障ったのか、周囲の人並みが途絶えたからなのか、男たちは、ミーシャを取り囲み、近づいてきた。


「近寄らないで下さい。 私に触れられるのは、ご主人様だけです」


「だから俺達が、ご主人様だって、言ってんだろ!」


無理やり手首を掴まれ、路地の方に連れて行かれそうになる。


ミーシャは、ユークの事を思い出した。


(ご主人様は、きっと私を迎へに、こっちに向かって下さっているはず)





ユークは、ミーシャに、なかなか合わないな~と思いつつも、11番街の方に着実に向かっていた。


11番街から来る人達が、何やら騒がしいのに、ユークは気になり、すれ違った人に聞いてみた。


「何か有ったのですか?」


「ああ! 11番街で、綺麗な女の子が絡まれてるらしいぞ」


綺麗な女の子と聞いて、ミーシャだと直感で感じ、ユークは人目もはばからず全力で駆けた。

ユークが全力で走ると、後に旋風が発生していた。


連れて行かれそうになってるミーシャの目に、10番街から、物凄い速さで飛んでくる塊が見える。

暗さと速さで、塊にしか見えないのだが、ミーシャには、はっきりとユークだと認識出来た。


(ご主人様が来て下さった。)


ユークの視界にも、路地に連れて行かれるミーシャがはっきり見えた。


(ミーシャ)

 

路地に連れられミーシャから、ユークが見えなくなった時に、ミーシャは大声で、叫んだ。


「ご主人様~~~~~~~~」


ミーシャの大声にビックリした、男達だったが、助けなんか来るはずも無いと無視して、ミーシャを、引きずる様に連れて行こうとする。


刹那、ミーシャの姿が男たちの中から消えた。 ついでに、ミーシャを掴んでいた男の手首も消えていた。


ユークが、男の手首をダガーで切り落とし、ミーシャを抱きかかえる姿が、ミーシャには、はっきりと見えていた。

ユークの手が、ミーシャを抱きしめようとした時に、ミーシャからユークに抱きついていたのだ。



あまりの速度で手首を切り落とされた男は、痛みすら感じずに、未だ気づいていなかった。


「遅くなってごめん」


ミーシャを気遣い詫びた。


「ご主人様は、きっと、来てくださると解ってましたから、怖く有りませんでした」


剣が有れば、ミーシャでも勝てるだろう男達だが、丸腰のミーシャは、まだまだ非力なEランク冒険者なのだ。


二人の会話に、我に返る男達だが、見えない攻撃で手首がなくなっている。  恐怖以外の何者でもなかった。


狭い路地を男達は、我先にと逃げようとする。 ユークは、ミーシャに手を出した事に怒っていた。

  

ミーシャにダガーを渡し身を守らせて、全力で男達を追い越し路地を封鎖した。


「じょ 冗談だったんだよ~」


先頭で、ユークに道を塞がれた男が告げた。


だがユークは、聞く気もない。 刹那、ドンッ と言う音と共に、男の腹にユークの拳がめり込んだ。


殴られた男は、路地の建物の高さ位まで浮き上がり、地面に叩きつけられた。


残った男達は、ミーシャの方に向き直るのだが、ミーシャの手には、先程まで無かったダガーが握られている。


逃げ道の亡くなった男達は、その場に座り込み土下座して、ユークに謝罪した。


許すつもりも無いユークは、ミーシャに視線を向け


「ここから近い、東門の門番を連れてくるから、ミーシャは見張ってて」


と告げる。


「わかりました!ご主人様」


「何かしようとしたら、殺していいから!」


と脅しもかけといた。


ユークが去って、男達にミーシャが言う。


「あの方が私のご主人様です! あなた方が、どんなに頑張っても、ご主人様に勝てるはずも無いのが解ったでしょう! この後、あなた方が、どうなるのかは興味も有りませんが、もし今後、ご主人様を怒らせるような事をしたら命は有りませんよ」


ミーシャは、ここぞとばかりに、ユークの凄さを自慢した。 自分の主人は、最高なのだと。


門番を連れて帰ってきたユークは、男達を立たせ、門番に引き渡した。  翌日、事情説明に伺う事も了承して、ミーシャを連れて東の入り口から、貴族区画に入り家に戻った。


家で、ミーシャからも事情を聞いて、食事を取った。


ミーシャが、終始、べったりくっついて来たが、ユークは何も言わず好きなようにさせていた。


何事もなかった様に振舞っていたのだが、かすかに震えていたのを、知っていたからだ。


風呂に入り、少ししてから寝室に向かった。


薄手の布団に潜り込み、ミーシャとキスして、お休みと言うと


「今日は有難うございました。 ご主人様、 大好きです!」


と囁き、もう一度、ミーシャの方から求めてきた。


当然 美味しくいただきました。




翌朝、朝食を済ませ、ミーシャと連れ立って城の方に行き、衛兵に昨日の事件で呼ばれていると告げる。


しばらく待つように言われて待っていると、中からシルバーの鎧を身に纏い、背中に大振りの両手剣を背負った騎士がやってきた。


「その方達か、 昨日の事件の参考人と言うのは」


騎士の問いかけに頭を下げて答えた。


「武装もしてない様だし、そのまま付いてこい」


衛兵にも頭を下げて、騎士について行く。


城を横目にしながら進み、自分の家位の大きさがある建物の前で止まる。


騎士は、そのまま中に入っていき、ある部屋の前で止まり、此処で待つように言われた。


男はノックして、中に入っていった。


しばらくして、男が中に入るようにと告に出て来たので、言われるまま中に入った。


中は執務用の机が1つと、来客用のソファーセットが有るだけの、質素な部屋だった。


「アイスラーク、御苦労であった、下がっていいぞ、」


「はっ!失礼いたします。」


アイスラークと呼ばれた男は、再敬礼して、退室していった。


「ま~、立ってないで、座っていいぞ」


礼を言いソファーに座る、ミーシャは後ろで立っているようだ


「お嬢さんもお掛けなさい」


丁寧に言われたのだが


「いえ、私は、ご主人様の奴隷ですので、ご主人様と同じ扱いはお受けできませんので、このままでお願いします。」


1mmも引くことのない姿勢で、こたえたのだった。


「主人の君の言う事なら聞くのでは?」


そう言われ、ミーシャに座るように言うのだが、聞きそうにない


「ミーシャ! 相手が、座って良いと言って下さってるのに、断るのは、相手にも失礼だよ、 僕も恥をかく事に成るから、言われた様にすわって」


ユークが恥をかくと言えば、流石に従ってくれた。


「それでは、失礼します。」


そう言って、横に座った。


男が前に座って、自己紹介を始めた。


「俺は、この王都近衛騎士団・団長のユージンだ。  硬い言葉はあまり好きじゃ無いんでな、お前たちも普通でいいぞ」


堅苦しいのはユークも苦手なので、正直助かる。


「ありがとう御座います。 僕は、貴族区画2番街に住む冒険者で、ユーク、隣は、ミーシャと言います。 宜しくお願いします。」



「ユーク殿とミーシャ殿かよろしくな。 早速で悪いが、いくつか聞きたい事があるので答えてくれ!」


「「わかりました」」



二人の返事に頷き返し質問をしてきた。内容は、どういう状況で事件になったのか、とか、逃げたやつが居なかったか、とか、相手がミーシャに吐いた暴言だとか、どうやって手首を落としたとか、かなり詳細に聞かれた。


「捕まえた奴等は、みな賞金首でな、 王都とパーン商業都市あたりで、人攫い稼業を繰り返していた奴等でな。」


(まんま 犯罪者だったんだ)                                                    

「ユーク殿とミーシャ殿の証言とほぼ合致してる。 多少違いはあるが、2人の証言の方が正解だろう」


そう言って、証言をメモした紙を畳んで、机に仕舞った。


「もう1つ聞いていいか?」


「答えられる事でしたら何なりと」


ユークの肯定の返事にニカッと笑い、話し始めた。


「いやなに、大したことじゃ無いんだがな、手首を切られた奴が知らないうちに切られたと言っててな、それが気になって、どんな技かと思い聞いてみたくなった。」

                            

「別に技なんて無いですよ! 周りが暗かったのも有りますし、元々冒険者ですから、素早いのも重なっただけだと思うのですが」


「そうか、確かに時間的にも暗くなってる時間だな、 ところで、ミーシャ殿は、ユーク殿の動きは見えたのかな」


「はい!私ははっきりと見えてました。 ですから落ち着いてられました」


「そうか! もう一つ噂を聞いててな」


「噂ですか?」


「ああ!」


「それは?」


「ふむ、昨日の騒ぎの時間にな、風の様な速さで飛んでいく塊が、10番街で多数目撃されていてな、どうやら11番街の事件の有った路地付近で消えたと聞いてな!」


間違いなくユークの事だ、確かに、ミーシャが危ないと思い、人目も気にせず全力疾走してしまっていた。

思わずぎょっとしてしまった。 ユージンはそんなユークを見逃さなかった。


「あははは、 やはり、お主か!」


「・・・・・・」


沈黙は肯定である。


「別に、咎める積もりは無いから安心していいぞ!」


それを聞いて、ホッとしたのはミーシャだった。


「そうですか、しかし、どうしてその噂を確認しようと思ったのですか?」


「なに、少しお手合わせ願いたくてな。 疾風の如き動きを、この目で見てみたい!」


(やっぱりそうくるよな~・・・)


想像通りであった。


「さっきも言ったが、奴等は集金首だ、当然報酬がでる。 その報酬を用意してる間でいいので、お願いしたい」


「解りましたが、何も装備を持ってきてませんから、素手での寸止めでよろしいでしょうか?」 


「いいぞ!それで頼む」


ユージンが一緒に来いというので同行した。


建物の裏手にでる。


「ここは近衛騎士の練兵場だ、 ここなら広さもあって、動きやすいだろう」


連れて行かれた所は、確かに広かった、直径200m程の円形の闘技場だった。


ミーシャが心配して、ユークに近寄り聞いてくる。


「ご主人様、本気でお相手するおつもりですか?」


正直、悩んでいたが、スキルの確認をされる心配もないので、今後の為に、騎士との接点も有っていいか、とも考えていた。  今回の様な事が、今後も無いとは言い切れない。


「少しだけ本気でやってみるつもり」


「よろしいのですか?」


「ま~大丈夫でしょ」


ユーリア譲りの天然炸裂であった。


「用意はいいか?」


ユージンが、10mほど離れた場所から声をかけてきた。


「いつでもいいですよ」


ユージンが、「いざ」と言ったので、ユークは瞬間に大地を蹴った。


どんっ と言う音と共に、ユージンの視界からユークが消えた。 ユージンは、左横で土煙が上がったのを確認するだけで、限界であった。

既にユークの手刀が、ユージンの右の首筋に伸びていた。  ユークは、わざとユージンの左側に走り込み、土煙をわざと残して、ユージンの右側に回った。  ユージンが、土煙に反応するのを確認してから、ゆっくり手刀を首に充てがったのだ。


ちなみに。ミーシャには一連の動きが見えていたらしい


「参った!」


ユージンは、全く見えなかった動きに、戦慄を覚えたが、ユークの人柄の良さも実感していた。


これほどの力を持っているのなら、態々手の内を晒す必要もない、ユージン相手なら余裕であろうから!


本気を見せてくれた事にも、感謝していた。


「凄まじい速さだな、 全く見えなかったぞ!」


「有難う御座います。 この速度のおかげで、何とか冒険者も続けて行けてます。」


「なるほどな!  その年で貴族街に住めるわけだ」


納得したかのように大きく、わははは!と笑うユージンであった。


手合わせを終え、先ほどの部屋に戻ってきた。


「ユーク殿がこれだけ凄いと、ミーシャ殿も相当な腕前なのであろうな」


「いえ、私などは、ご主人様の足元にも及びません」


「はっははは そんなに謙遜しなくていいぞ」


「いえ 真実ですから!ご主人様と違い私はまだEランクですし」


そんなやり取りを傍で見ていた

しばらくして、先ほどのアイスラークさんが、巾着を持ってやってきた。


それをユージンに手渡し、部屋を出ていった。


ユージンは中身を確認せずにユークに巾着を渡し中を確認させる。


中には金貨が50枚入っていた。


「こんなによろしいのですか?」


「相場だぞ、 奴等は犯罪奴隷として売られ、これからは、鉱山で死ぬまで働かされる。 犯罪奴隷の売値は1人10万Gだから、5人で50万Gであってるだろ」


(そんな相場があったんだって、言うか男って、やす~~~) 

                      

また何か有ったらよろしく頼む、と言われたので、こちらこそと挨拶を交わし家に戻った。


ミーシャにステータスの確認させると、色が赤に変わっていた。

ユークも確認すると、赤に成っていた。


後で、行くことにして、疲れたので、少し休むことにした。 一人で!


                                                                     




                                                                                                                             



少しユークの、人間離れした話を入れてみました。

タイトルや人の名前に苦労してます。次話までは、日単位で進みますが

その次の話しあたりからは、少しテンポが上がります。

このままでは、ハーレムも遠いので・・・・

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