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周りがチートすぎて泣けてくる

転生チート万歳と思っていた時が私にもありました。


ええ、ええ。そりゃね?まぎれもなく前世の記憶も持ってますよ?

平均よりだいぶ上の魔力も持ってました。これは素直にめっちゃうれしかった。

あと現世の遺伝子が頑張ってくれたおかげで、容姿もいい。

つやつやストレートの黒髪と、海のように青い瞳のコントラストは我ながら見事だと自負している。

そして身分は公爵令嬢。兄がいるので跡取りばっちり。王族ほど縛られてないし、ナイスポジション。

勝ち組でしょ?これ、普通に考えたらぶっちぎりで勝ち組でしょ?


周りがさらに チ ー ト 野 郎 ば っ か り じゃなかったらな!


っていうかバグキャラ?はっ、ないわー。

父親が宰相で、母親と友達が聖女で、兄が英雄で、妹が天才で、とどめに幼馴染が勇者とか。


なんぞこれ。いくらなんでも詰め込みすぎだろ。






とりあえず、せっかくこの世界に生まれてきたのだ。

前世ではやれなかったとことを謳歌しようじゃないか。……華のない前世からすればほとんど全部だがな!


なにはともあれ魔法だ。黒魔術だ。

なぎはらえーって言いながら手を振った瞬間に炎をだす、とかできるのかなっ。エターナルフォースブリザードでもいい。わくわくが止まらないぜっ。魔術師王に、私は、なる!!


魔術を行使するためには才能も大事だが、純然たる学門と知識もかなり重要だ。

つまり、お勉強の時間ですー。


幸い、前世では割と高度な勉強を学ぶのが当たり前のところにいたため、学習方法はある程度身についている。

周りが鼻水たらしながらぎゃあぎゃあ泣いているときに、しっかり知性をもって勉強できるなんて大きなリードでしょ?ましてや好きなことなら集中力も高まるというもんだ。


ところで私には2つ違いの妹がいる。可愛らしいぞ。

生まれたてのころからせっせと構ってやったおかげで、見事に私になついてくれた。やったね!


で、さー。そうなると、この年頃の子がどういうかわかる?年の近い兄弟の真似を、なんでもしたがるんだ。


「おねえさま、勉強ちてるの?わたしもするー」


って、微笑ましく思っていたのは最初のうちだけだ。だんだん、だんだん、私の顔が引きつってきた。


え、それ、私が一か月かけて理解した理論なんだけど。昨日寝る前にベットの中でお勉強したらわかった?……へー、えらいねー。。。


万事が万事、こんな感じだ。

私、百人に一人の才能をもってるって言われたんだけどなあ。妹は、百年に一人の天才らしい。

私が意地で勉強すればするほど妹の実力がぐんぐんついてくる。

いまや魔力量も、質も、知識も、すべてが妹の圧勝である。

実際に攻撃魔法を使うよりも研究側に傾いた妹は、8歳にして権威ある魔道学院の研究所に通うまでになった。


あっはっは。べ、別に、泣いてなんかないんだからねっ!!






魔術チートをあきらめたその先で、他にできそうなチートをさがす。

だってこんなスペックあってくすぶるとか、もったいなさすぎる。

で、思いついた。


良い子の皆―!裕福なところに生まれた、ほどほど知識もっている転生者がやることは何かなー?そうだね、NAISEIチートだね!


農地改革はNGだ。父親が宰相なんてもんをやっているので、王都からは下手に離れられない。

一応、少し離れたところにうちの領地もあるのだけれど、それはもっぱら父の弟やらその家宰やらがまとめあげているようだ。

そりゃそうだよね。宰相がほいほい王都を離れちゃ謀反やらなんや疑われちゃうわーHAHAHAHA★


だが代わりにこれ以上ないといういうくらいの内政干渉地位があるのだ。これを利用しない手はない。


突然だが、この国、というか世界では平民の識字率はあまり高くない。


貴族は別だ。家庭教師を雇っているものもいるし、交流の場として王都の学院にいくものも多い。

平民でも裕福な家庭の者か、超絶にずばぬけた才能を持っていたら学院にいくが、過半数以上は小さいころから親の手伝いのため朝から晩まで働くのがふつうだ。


が、それでは意味がない。平均レベルを底上げするためには、庶民にこそ教育が必要なのだ。


前世で日本という場所にうまれて高度な教育を受けてきた私だから、その大切さがわかる。

たしかに何の意味があるんだろーという時もあったが、知識やそれを扱う思考能力は十分に武器となる。


ということで珍しくも家にいるパパンのもとに突撃する。

ちなみにパパンはナイスミドルだ。若いころはさぞかしモテたんだろうねー。けっ。


「この国には教育が足りないと思うんです!確かに初期費用はかかるかもしれないけど、将来的にはそれを補ってあまりある人材ができるでしょう」


そう拳をにぎって訴えたところ、宰相である父はふうっとため息をついた。


「ふむ。その初期費用はどこから捻出するのだ?たしかに教育は大事だが、お前の想像より莫大な費用と、制度が必要だ。

まず具体的な費用は?施設はどうする、一から建てるかそれともどこかを借りるか。その場合、どこにだ?無論、一つではたりまい。私の資産だけでは到底たりないな。もう少し具体的に話がすすみ、利が勝ると確信を得るまでは国からの援助も難しいだろう。

そして対象者は?お前の話だと庶民を相手に考えているようだが、彼らにも生活がある。たとえ幼くても立派な働き手として数えられている場合もおおい。その彼らをどうやって説得する?彼らのためだと諭したところで、そう簡単に頷くまい。

あとは教育者だ。お前の知ってのとおり、今教えるのに十分な知識を持っているものはほぼ貴族に限られる。無駄にプライドの高い彼らが庶民を相手に教えることができると思うか?もしできたとしても、今度は庶民の方がおびえてとても授業にはならないだろうよ」



もうやめて、私のHPは0よ!!



ぼっこぼこにされました。

ええ、甘いのは知ってましたが、話をきいて1秒後にこの反論はさすがに痛い。

あまりにずさんな計画だと目の前に突き付けられているようで息も絶え絶えだ。


絶え絶えだが、一応前世の知識を借りながら一つ一つ拙く反論する。


費用は寄付という形を募ってはどうか。貴族をうまくおだてれば、かなりの金額を期待できる。

対象者はとりあえず5歳から15歳までの一般市民。そのうちの数年間通ってもらう。

現代日本のようなカリキュラムはさすがに組めないが、その分算数やマナーなどに力を割いたら絶対将来の役に立つと説得できる。最低限の識字と簡単な数学だけなら3年でも大丈夫だろう。

特に商人はねらい目だ。うまくすればそこからも寄付金を期待できる。

学費はできるだけ安価で。大人になって返せるような奨学金制度をつくってもいい。

最初から全額無料はさすがに無理だが、ぎりぎりまで下げることは絶対条件だ。

教育者、これは、うん。うちの家名を使わせてもらう。

なんていうかこれだけ無駄にたくさんカリスマがいるのだ。

うちの家族を例えるならロイヤルなアイドルというところか。そこらに信望者がいる。

その中には権力者もいるし(父関係)、教会関係者もいるし(母関係)、みんなの憧れ騎士様軍団もいるし(兄関係)、ぶっちぎりに頭いい軍団(妹関係)もいる。

これだけそろえば、なんとかなるだろう。

私に利用するのに心苦しいが、頑張ってお願いすれば意外とどうにかなりそうな気がするのだ。

あと子供は順応性高いよ!大丈夫、慣れる慣れる。甘えていいところとダメなところはマナーの授業でしっかり教えこむしね!


がんばって踏みとどまる私に、パパンの口がふっと笑みの形を浮かべる。


「10年……いや、5年ほどはやいな」


え、あれ、これって。うん?

5年後になら聞いてくれるトイウコトナンデショウカ。

とりあえずもうすでに此方を見向きもしないパパンに一礼して書斎を立ち去る。


なんか微妙だが、手ごたえはあった、ということでファイナルアンサー?

どうやらNAISEIチートはまだまだ先のことになりそうです、サー。





妹に手柄を取られて、父親によくわからないままやり込められてぐったりした私は慰めてもらおうと母親のところに向かった。

母様は歴史上をみてもぶっちぎりの力をもつ聖女だもの。ほやほやとした雰囲気に癒されたい。


「かあーさまー」


「あらあらどうしたの、セレナ?」


部屋を開けるとおっとりと母様が振り返った。傍らにでっかい発光体を従えながら。

え、なにそれ。


「あの、母様?その、そちらの、なにかは、なに?」


確かに昔からなんかが母親の周りをふよふよしているのには気づいていたが、今度のは存在を無視するにはあまりにも存在感が強烈すぎてついつい聞いてしまう。

たぶん、これは初めましての不思議物体だ。威圧によって跪きたくなるなんてそうそうあってたまるかコンチクチョー。


「あらあらまあまあ」


母様は一瞬目を見開いたと思ったら、珍しく真顔で顔を覗き込まれた。


「姿を完全にとらえている、わけではないのね。声も聞こえているわけではなさそうだし。でも、素質はある」


そこでにっこりとほほ笑んで手を握られた。


「でもこれでようやく誰かに紹介できるわ。セレナ、こちらランディオスよ。ランディオス、こっちはセレナ。知っているだろうけど、私のかわいいかわいい娘」


ランディオス。その名は聞いたことがあるぞ。っていうか、この世界に生まれて知らないわけがない。

だって、それは


「神様―――――!?」


うん、と無邪気に頷くさまは可愛いが、母様。これってもっと驚くところ。

……ああ、聖女でしたね、はい。結婚してもそれは変わらないのか。

え、神様への礼儀ってどうやるのだと思いつつ、現在できるかぎり最大の礼をもってお辞儀する。


「えっと、はじめまして神様。聖女アンリの一が姫、セレナと申します」


挨拶をうけて発光体が一際強く輝く。

なんだ、敵襲か!絶対勝てないぞ!


「あら、ランディオスも気に入ったみたい。名前で呼んでいいって。これはセレナが次の聖女かしらねー」


冗談ではない。

聖女ったらあれだ。神殿に押し込められてそれはそれは人間を逸脱するほど清らかに性格矯正をうけるのだ。

無理。それこそ母様ほど素で聖女じゃなければただの人形に落ちること必至。

ぶんぶんぶん、と激しく首を横に振ったが発光体は更に激しく光り輝き。

母様の目の奥は笑わずして強い力を放っていた。


「うふ、頑張りましょうね?」







あれ、わたし正気を保ってる?大丈夫?イキテルヨネ?


記憶から抹消したいほどの「恐育」をうけて、私はなんとかランディオスの言葉を聞けるようになり、姿もなんとなくとらえられるようになった。

神殿に一時押し込められたけど、公爵家の娘を無理やりに監禁できなかったおかげで、私は思ったよりも自由に生きられた。

いや、さすがにそうじゃなきゃ母様も「神殿に遊びに行っておいでー」なんて軽くいわないはずだ。たぶん。それでもトラウマスイッチがはいったけどな。神殿、どんだけー……。

ちなみに私が自由に生きられたのは、同じくらいの聖女体質の女の子がいたっていうのも一因だ。

そりゃ、小賢しくて下手な権力あって使い勝手の悪い女より、素直で庶民生まれだけどどことなく品のある女の子の方がいいよねー。


「は、はじめましてセレナさま」


「……はじめまして、リニャン。よろしくね」


表向き、神殿にいる間は俗世の身分を語ってはいけないので名前だけの名乗りだが、それはあくまで表向き。私が来るまでにも色々あったのだろう、リニャンは可愛そうなくらい委縮しきっていた。

おそらく、神殿好みの聖女にしたてあげるためには都合のよく。ただ、普通の女の子にしてはぽっきりと心が折れてしまいそうなくらい。

スケープゴートにするようで気が引けたので、神殿にいる間にここぞとばかりに権力を振りかざしてリニャンを守ってあげた。

え、俗世の身分を語ってはいけない?アーアー聞こえないー。


だってさすがにあのままじゃ、本当に人形になってしまう。

いずれ私がここを出ていくのは決定事項なんだし、今のうちに少しでも土台を固めておいてあげないと。

でもたぶん、リニャンは私の血筋からのなんちゃって聖女体質とはちがって、天然で聖女体質だからもしかしたらそのままでもなんとかなったかもしれないけど。


本人は否定するが、芯はおそらく誰よりも強く、清い。


おびえて彷徨うばかりの視線が、たった三年でしっかりと定まり、時には傲慢な神官さえも圧倒するまでに。

おそらくあと数年もすれば名実ともに神殿の名を背負う人間になるだろう。

私が最期に神殿を出るときにも、本当に神殿を出たいならどうにかするといったのに、はっきりと自分から残るといったし。

うん、あれは本気の目だった。私には無理だわ、すげー。



そんな感じで神殿に3年ほど滞在した時には、神様の声が聞こえるおまけ特典として神術がかなり強烈に使えるようになっていた。


が、・・・かわりに魔力が減っていた。


まじゅつは犠牲となったのだ!


うわーん。せっかく魔力を多くもって生まれたのにー!妹には敵わないけどさ、私だってなかなかだったんだよ!!


そりゃね、神力と魔力は反発するものだからね、どっちかが強くなればどっちかが弱くなるのは分っていたけれど。

さらに言えば適性があった分、生まれ持った魔力よりも神力の方がはるかに強くなったけれども!


あんなにたくさん勉強した日々はいったいどちらへ消えてしまったのですか!?私はヒールよりもメテオの方が唱えたかったのに・・・!!


だって、あれじゃないですか。

皆さんも、RPGとかするときには剣士とか黒魔道師とか攻撃タイプを選ぶでしょ。

いや、白魔道師とかシーフとか生産系も立派だよ?だけどさー、一度は憧れるでしょ?

ふははは、俺TUEEEEEって。……いや、妹がいる時点で無理だけどさ。


ふん、いいもん。魔術でできないならせめて剣で発散してやるもん。



違うんです、私はただ単に、最近はやりのキーワードを詰め込んだ小説を書いてみたかっただけなんです!

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