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人妖の魔巧師  作者: こいち
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第1話

「よし、行くか。」

 そう少年は呟きリビングに置いてある写真にふり返る。その写真には5歳くらいの男の子と女の子、それを挟むように一組の男女が笑顔で写っている。

 「行ってくるよ、父さん、母さん。」



 俺の名前は神谷・大和。身長178㎝、見た目は髪、目、ともに黒色で目がやや鋭い所を除けばは一般的な日本人だ。今日は高校の入学式である。俺がこれから通うことになる高校の名前は『国立魔術技巧大学付属高等学校』、通称魔巧高だ。

 毎年国立魔術技巧大学へ多くの卒業者を送り、多くの魔術技巧師を輩出している名門校として知られている。


 魔術技巧師。2006年に当時、究極の頭脳を持つといわれたアリーゼ・イシュタッドが生み出した技術で、2001年に発見したテラと呼ばれる空気中に存在するエネルギーを用いて様々な現象を起こすことができる。

 なぜ、これが『魔術』ではなく『魔術技巧』なのかは当時アリーゼが、さまざまな道具を操っていたためそう呼ばれるようになった。(当時はテラ運用式操具術とアリーゼは呼んでいた)


 魔術技巧は世界中の経済に影響を及ぼし、また優秀な魔術技巧師は核兵器にも匹敵する戦力だ。

 そのため2124年、現在では世界各国がこぞって魔術技巧師育成に取り組んでいる。

 俺が入学する魔巧高もその育成機関のひとつだ。

 俺はムーテルと呼ばれるテラで動くタクシーのようなもので学校へ向かった。
















 学校に着くとムーテルから降り、クラスが張り出してある掲示板へ向かう。

 ちなみに、ムーテルはタクシーのようなものだが料金は支払わなくていい。

 というのも、ムーテルには運転手が居らず移動先さえ入力されれば自動的にその場所まで運んでくれるためである。

 制御管制局は存在するが国営のため、そこの職員の給与は税金で賄われている。


 掲示板を確認すると俺のクラスは1年Eクラスだった。

 各学年は成績上位者からA~Eクラスに分けられる。しかしこれは常にこのクラスというわけではなく1年間の間に行われる三度の実力判定試験によって、その都度振り分けられる。

「ま、こんなもんか。」

 

 クラスに向かうとすでに数人の生徒がいた。皆、同じ中学からの友達なのだろうグループで集まり楽しそうにしゃべっている。

 俺が教室に入ると皆の視線が一旦こちらを向くも、すぐに友達との会話へと戻っていった。

 俺は前に映してあった座席表を確認し、自分の席へと着く。

 式が始まるまでまだしばらく時間があるのでカバンから紙媒体の文庫本を取り出し、それを読んで時間をつぶすことにする。

 現代において読書に紙媒体を使用するのは珍しいからだろう、それを見た周りが物珍しそうにこちらを見てくる。

 現代では携帯魔術技巧媒体PMAP(Portable magic art medium)が開発されそれによって紙媒体を用いずとも読書が可能となっている。

 PMAPには起動状態と待機状態があり、起動状態時は個人に適した形態に、待機状態時では開発社にもよるが大体はブレスレットや指輪などのアクセサリーの形態になる。起動状態の個人に適した形態とは魔巧を行使しやすい形態のことで剣や銃などの武器が多いが、人によっては服や靴などもある。

 PMAMは魔巧師にしか使えないが、それ以外の人にも携帯が進化したような視界操作機VOM(view operation machine)というものが存在し、それによって行えるため紙媒体を用いて読書する人間はまれなのだ。

 俺は紙の質感などを感じられるため読書には紙媒体を好んでいる。

 (売っている場所が少ないのが玉に瑕だが…)



 読書で時間をつぶしていると一人の男子が俺の隣の席に着き、俺の手元にある文庫本に気づくと覗き込んできた。

「いまどき紙媒体なんて珍しいな。」

「俺はこっちの方が性に合っているんでな。」

 その男子は185㎝ほどありそうな身長で体格はがっしりしている。金髪を逆立て、着崩した制服からどこぞの不良かと思わせるいでたちをしている。

「そうなのか。俺は天河・義人、義人って呼んでくれ。」

「俺は神谷・大和、大和でいい。」

「おう、よろしくな大和。」

 そう言ってニカッと笑う義人。見た目で判断するのはまずいだろうが物怖じも人見知りもしないタイプなんだろう。

「大和、お前どんな魔巧使うんだ?」

「基本的には身体強化系だな。だが、あまりテラの操作がうまくないんだ。」

 実際は違う。俺には本当の魔術技巧がある。だが他人には話せないし、話そうとも思わない。

「そうか、身体強化系か。魔巧の基礎だけど極めればすごいもんになるしな。ちなみに、俺は現象操作系だ。」

「何?」


 現象操作はその名の通り物事の現象を操作する魔巧だ。

 例えば可燃物が燃えるという「現象」を操作し何も使わずに可燃物を燃やしたり、重力によってものが地上に落ちるという「現象」を操作し宙に浮いたりできる。

 だが現象操作はかなり高度な魔巧だ。現象操作ができるのならばもっと上のクラスにいるものなのだが…。

「まあ、俺はテラの操作容量が少ないらしくて、あまり扱い切れてねえんだ。」

 なるほど、そういうことか。テラの操作容量が十分でないなら現象操作系の魔巧はうまく扱えない。できたとしても大したことは出来ないしな。

「まあ、そういう訳で俺もEクラスっつうこった。」

「なぁにがそういう訳よ!義人!」

  バシッ!

「あだっ!」

「あんたは今までそう言いながら自分を磨かなかっただけでしょうがっ!」

 そう言いながら突然現れた女子は義人を見下ろす。義人はいきなり背中をはたかれ、咽たのか蹲って急き込んでいる。

 というか、この子誰?

 見た目はやや小柄だが、気の強そうな瞳と茶色のショートヘアーが活発な印象を与える。


「ごめんね、話の邪魔しちゃって。こいつ昔っからこうでさ、現象操作系を使えるっていう才能はあるのにテラの操作容量が少ないからって努力しようとしないんだ。まったく。あたしの名前は百木・葵。葵って呼んで。」

「ああ。俺は神谷・大和、よろしく。大和って呼んでくれ。」

「わかったわ大和、よろしくね。」

「よろしくじゃねぇぇぇ!葵っ、てめぇいきなり何しやがるっ!」

「あんたがふざけたこと言ってるから活を入れてやったのよ。」

 いきなり後ろからはたかれたことに怒る義人に対して全く悪びれた様子のない葵。

「仲良いんだな。」

「「良くねぇっ(ないわよっ)!!」」

 やっぱり仲良いな…。

『お知らせします。間もなく入学式が始まりますので、新入生の皆さんとその父兄の方々はA棟第2フロア、大会議堂へ移動してください。』

 放送を聞いた大和はじゃれあっている二人をほっといて一人で大会議堂へと向かった。


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