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見返りを君に  作者: 雪川月花


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九章

 午後八時過ぎ。俺は電車で横浜に向かいながら、記憶を頼りに地図を見てネットで情報を集め、『一夜草』という店を見つけていた。

 黄金町の駅に着き、見覚えのあるどこか陰気で明るい道を、あの時とは反対に辿ってあの店の前に立った。

 恐る恐る店の扉を開くとシャラシャラと鈴の音がして、店の中の人達が何人かこちらを見た。お姉さん達と、お客さん達と、スーツ姿のボーイさんと。

 俺はその視線達に負けて、扉を掴んだまま固まった。

「いらっしゃいませ」

 奥からスーツを着た、品の良い初老のおじさんが出てきた。

「お客様、ご来店は初めてですか? ご指名はありますか?」

「あ、はい。あの、初めて来ました。あの、えーと、アリサさん? に会いたくて……」

 アリサ、とおじさんは呟いて、店の中を振り返る。有里がいないのを確認して、またこちらを見た。

「少しお待ちいただきますが良いですか?」

「あ、はい」

 促されて店の中に入る。

「店長」

 と、おかっぱ頭のお姉さんがおじさんに呼びかけた。

「もう来てるでしょ。呼んできてあげる」

「ああ、お願い」

 お姉さんがチラリとこちらを見たので、俺はペコリと頭を下げた。お姉さんはニヤリと笑った。

 入り口に近い隅の席に通されて、俺は緊張して膝の上で手を握った。

 お店は奥に向かって縦に長かった。菫色を基調とした店内には、入り口から奥に向かって何人かずつ座れそうな席が八つ程並んでいる。その奥にはカウンター席もあった。

 席はほとんど埋まっていて、それぞれの席でお姉さんとお客さん達が楽しそうに話している。もう誰もこちらを気にしてはいなかった。

 店長に紹介されて、俺の向かいにお姉さんが一人座った。

「サクラです。はじめまして」

「あ、はい。はじめまして」

 サクラさんというそのお姉さんは――まあつまりお兄さんなんだけど――小柄で少しふくよかで、話しやすそうな印象の人だった。俺は少しホッとした。

 サクラさんは俺におしぼりを手渡しながらニッコリ笑った。

「お兄さん若いね。何歳なのか聞いてもいい?」

「じゅ――十九です」

「へえ。じゃあアリサちゃんとは同い歳?」

「あ、はい。高校の時の同級生で……」

 まさか現役のクラスメイトだとは言えない。俺は有里が二つ学年を誤魔化していると言っていたのに倣った。

「じゃあお酒は出せないね。フリータイムでいいのかな?」

「ええと、僕、そういうのどうしたらいいか全然分からなくて……」

「じゃあ、アリサちゃんが来てから決めよっか」

「あ、はい」

 サクラさんの言葉に俺は安堵する。有里に「ぼったくる店じゃない」と言われた覚えはあるけれど、雰囲気に呑まれてもう、今にも身包み剥がされそうな心地がしていた。

「お兄さん、お名前は?」

「あ、饗庭、です」

 名字で良かったのかなと、言ってから不安になったけど、サクラさんは特に拘った様子も無かった。

「饗庭さん、ね」

 サクラさんは可愛らしく首を傾げて微笑む。

 彼女は仕草ひとつひとつがとてもしなやかで丸く、女性らしい。その顎の線も、首の太さも、しっかりとした肩も、どう見ても男性なのだけど。

「饗庭さんは、アリサちゃんの彼氏なの?」

「違います!」

 咄嗟に力いっぱい返事をすると、サクラさんは面白がるように笑った。

「ええっと……」

「はいはい、分かりました」

 サクラさんはくつくつと笑って、俺の目を見て微笑んだ。

「でもきっと、すごく信頼されてるのね」

「……そんなことないです、全然」

 まさかもう十日連絡を無視されていて、無断で押し掛けてきているとはサクラさんも思うまい。

「そう? クラスメイトだったんでしょ? ――普通、親にも言わないじゃない、こんな仕事」

 と、サクラさんは視線を落として自嘲気味に笑う。

「プライベートな知り合いで、アリサちゃんが店のこと話してるなんて、信頼があるんだなと思って」

「そう……でしょうか……」

「饗庭さんはアリサちゃんのこと好きなの?」

「えっ」

 ギョッとしてサクラさんを見返すと、彼女は興味津々の眼差しでこちらを見つめていて、何か答えるまで諦めてくれそうな気配が無かった。

「いや別に、そんなことは……」

「またまたぁ。じゃなきゃこんなところ来ないでしょ」

 やっぱりそういうものなのかな。不審に思われたくない俺は、精一杯サクラさんに話を合わせてみる。

「ええと、はい、そうですね……」

「どこが好きなの?」

「どこが……?」

 俺が狼狽えると、サクラさんは笑う。

「可愛いもんね、あの子」

「はあ、どうでしょう……」

「いいのよ、本当のこと言って。アリサちゃんには黙っててあげるから」

「はぁ、まあ、可愛い……です……ね……?」

 俺はしどろもどろに答える。

 まあ恐らく、一般的に考えて。本人からも申告がある通り、有里の見た目は良い。

 でも多分本質的には、彼の魅力はその容姿では無いような気がする。

「あの、アリサさん……って、ああ見えて結構しっかりしてるというか、たまに驚かされるくらい、逞しくて。かと思うと無邪気なところもあってちょっと危なっかしかったりして、目が離せないというか。それにいつも愛想無いんですけど、たまにいい顔で笑う時があって。そういうのはいいなって、思います」

 自分は一体何を言っているんだろう。

 目が回りそうな俺を尻目に、サクラさんはキャアと、自分の頬を手で包んだ。

「笑顔が好きなんて、一番の愛ね」

「はあ……」

 なんだか居た堪れなくなってサクラさんからそらした視線の先、少し離れた対角の席に座った客が一人、俺をじっと見ていた。

 見ているというか、睨んでいる。四十そこそこの、でっぷりと太ったいかにもお金のありそうなおじさん。男の向かいに座ったお姉さんは、所在無さげに俺を振り返り、何か宥めるように喋りながら、俺と男と見比べた。

「あの……もしかして僕、睨まれてます?」

 小声でサクラさんに聞くと、サクラさんは俺の視線を見、何気無い風を装いながら振り返って、またこちらを向いて苦笑した。そして、テーブル越しにこちらへ身を乗り出して声を潜めた。

「アリサちゃんが来たら分かっちゃうことだから言うけど、あの人もアリサちゃんのお客さん。ガチ恋なの」

「ガチ……?」

「ライバルね、饗庭さん」

「はあ」

「まあ大丈夫。アリサちゃんもあの人には困ってるみたいよ。独占欲が強くて、嫉妬するのね、他のお客さんに」

 サクラさんが嫌そうな顔をして、俺は胸騒ぎがした。

「危なくないんですか? あいつ――あの、アリサさん」

「うーん、でも、愛しちゃってるからね」

 サクラさんは困り顔をして、可愛らしく首を傾げた。

「刺されるとしたら、アリサちゃんじゃなくて饗庭さんかな?」

「ええー……」

 理不尽な話に俺はげんなりして、サクラさんは声を上げて笑った。

 その時、カウンターの奥のカーテンが開いて肩を怒らせた有里が現れた。

 有里は店の反対側の奥、入口側の席に座った俺をキッと見据えた。そして――俺からスッと視線を外した。

 有里は先ほどから俺を睨んでいた男の方へ、ニコニコしながら駆け寄る。席に着くと嬉しそうに男の肩を手で撫でながら隣に座った。

 内容は聞こえなかったけれど、男が何か有里に言い立てていて、多分俺のことだろう。有里は左手を男のふとももに乗せて、右手で頬を撫でて、男を宥めているようだ。

 しばらくその状態で話しをして、立ち上がった有里は俺の目を真っ直ぐに睨む。そのままツカツカと威勢よくこちらに歩いてきた。随分扱いが違うようだ。

「馬鹿! 何してんだよ」

「ありさ――」

 名前を呼びかけて、本名を言ってはいけないのかもしれないと思い飲み込んだ。

「話したかったから」

 俺は有里をまっすぐ見つめる。

「だからって店に来る奴があるか」

「お前が連絡寄越さないからだろ」

 俺達二人を見比べて、サクラさんが有里に微笑む。

「アリサちゃん、座ったら?」

「すみません、サクラさん。違うんです」

 有里はサクラさんに申し訳なさそうな顔を向け、それからまた俺を睨んだ。

「座らねーぞ。お前は客じゃねぇだろうが」

「今は客だろ? 話しがしたい」

「座るだけでいくら掛かると思ってんの」

「五万持ってきた」

「アホ! ――待ってろ」

 有里はくるりと踵を返して店の奥に帰っていく。サクラさんはなんだかワクワクした顔をしていた。俺はじっと有里を見ていた。

 有里はカウンターの前で店長さんと短く話しをし、またツカツカとこちらに帰ってきて、俺の腕を掴んで席から引き釣り出した。

「来い――すみません、ご迷惑掛けて」

 有里はサクラさんに頭を下げて、俺の手を引いてまた奥へ歩いていく。例のガチ恋客の前を通ったけれど、睨む視線を感じながら二人で無視した。

 カウンターの前を通り過ぎるとき、カウンターの向こう側にいた店長さんが「青春だねぇ」と言った。有里がペコリとお辞儀して、俺もそれに倣った。

 そのまま店の奥、従業員用のものであろう通路を抜け、裏口から外に出た。

「帰って」

「お金は」

「いいから、そんなの。別にまだ何にも注文して無かっただろ? 一応俺の給料から引いといてとは言っておいたけど、店長優しいし……っていうか面白がってるから、取られやしないよ、大丈夫」

 ほら、と有里は俺の背中を押す。

「そういうわけで俺はすぐ戻んないとまずいから。帰れ!」

「有里、会いたい、また――」

「分かった分かった、分かったから。連絡するから」

 グイグイ押されて、建物の脇から表の道に出た。

「駅分かるよな? まっすぐ帰れよ? 電車乗ったら一回メッセージ送って」

「有里――」

「仕事ちゅう!」

 思い切り押されて、俺は勢いで二、三歩進んで振り返った。

「ありさ――」

 有里が指を俺の唇に押し付け黙らせた。

「分かったから。またちゃんと話しをしよう。――会いに来てくれて嬉しかった」



 電車に乗ってすぐ、有里にメッセージを送った。有里からも返事があった。

 自分がそれにすぐに返事をしても、接客中なのだろう有里からの返事はなかなか返ってこなかった。

 実際に店の中を見てしまったから、今この瞬間あそこにいて「仕事」をしているのだと思うと、なんだか落ち着かなかった。

 ――妙に唇をツヤツヤさせちゃって、体にひっついたみたいな服着て。お客さんに、あんなに近づいて。

 これまでも理屈の上であんな仕事は辞めるべきだと思っていた。けれど、現実として突き付けられると、理屈では無くもっと感情的な部分で、これまでよりも強く辞めて欲しいと思ってしまった。

 ――自分は無理矢理辞めさせられる立場では無い、が。

 強制できるとしたら親だろう。だが現時点で気が付いてもいない、仮に気が付いていたとしても止めていないような親に、それを求めても恐らく無駄だ。

 ――じゃあ他に、どういう立場の人間なら、あの仕事を辞めろと言えるのだろう。

 いつの間にか、危ないからとか、有里のためにとかじゃなくて、自分自身が辞めてほしいと思っている。

「……」

 俺は布団に寝転がって、天井を見つめ考え込んだ。

 しばらくの空白があって、午前零時半頃メッセージが届いた。

『明日、学校終わってからうち来れる?』

 すかさず電話を掛けるとすぐに切られて、『電車』とメッセージがあった。

 家に帰っているのだとホッとする。

『行く』

『神川先生が何か持って来るものあるみたいだったら、貰ってきてほしい。先生毎日家に来てて、いい加減申し訳なかったから。饗庭が来てくれるなら先生断りやすいし、一石二鳥』

『分かった』

『先生には連絡しとくから。じゃあ明日。もう寝ろよ』

『有里も、気を付けて帰れよ』

 最後に「おやすみ」と適当なスタンプを送って、俺はスマートフォンを置いた。

 業務連絡のような簡素なやりとりでも、返事があることに安堵する。

 会う約束を取り付けられたことにホッとして、俺は数日ぶりに落ち着いて眠ることができた。



 翌日の放課後。俺はスマートフォン片手に辿り着いた、有里の家の前に立っていた。

 噂に聞いた通りの、葉山の高級住宅街。一軒一軒、区画の広い敷地に大きな家が建っていて、お医者さんだとか経営者だとか有名人だとか、そういう人達が住んでいる土地なのだと一目で分かる。

 有里邸も、その家の内の一つだった。

 インターフォンを鳴らすと、中から五十手前くらいに見えるおばさんが現れた。

「綺羅の母です」

 と言う女性が、イメージと違っていて驚いた。

 有里の話で受けていた印象から、テンプレ通りに意地悪そうな、例えるならばシンデレラの継母のような人が出てくると、思うともなく思っていた。

 目の前にいる女性は、おおよそ意地悪とは無縁な、上品で柔和そうに見える人だった。

「饗庭君ね、神川先生から聞いてます。今日はどうもありがとうね、わざわざ来ていただいて。あの、饗庭君は――」

 階上で足音がして、階段の上の方から有里がひょこりと顔を出した。

「饗庭」

「おう」

 有里は母親を見る。

「部屋で話すから」

「お茶は――」

「いい、気にしないで。――来いよ」

 有里はくるりと振り返って壁の向こうに消える。「どうぞ」と二階を示してくれた有里の母に「お邪魔します」とお辞儀して、俺は彼の後を追いかけた。



 有里の部屋は、十畳はありそうな広い洋室だった。

 白いベッドの前にカーペットが敷かれていて、俺は有里に促されてそこに座った。

 初めて伺う人様の部屋。俺は自然と正座をしていた。

「これ、神川先生から」

 俺は先生から預かってきた封筒を差し出す。

「どうも」

 有里はぞんざいにそれを受け取って勉強机に置き、勉強机の椅子をこちらに向けて座った。足を組み腕を組み、偉そうに俺を見下ろしてきた。

「連絡が取れないキャストを店で待ち伏せって、どんなやっかい客だよ。イケメン無罪が適用されただけで、饗庭君、俺の対応如何によってはストーカーよ? 怖いおじさんたちに連れて行かれちゃうんだからね」

 有里はわざとらしい呆れ顔で説教してくる。

「で、俺になんの用?」

「ええと……」

 何から話そうか。俺は視線を迷わせる。

「艮野のことだけど……」

 と俺が言うと、有里はパッと顔色を変えた。

「どう? 退学になった?」

 と、彼はワクワクするように身を乗り出す。

「ならないよ……。正直生徒の間では大分広まっちゃってるけど、先生達にまではいってない。――有里が言わないでくれたおかげだ。ありがとうな」

「どういたしましてっ」

 有里はムスッとした顔になり、嫌味っぽく吐き捨てる。

「やっぱり俺、あそこで泣き叫んで見せるべきだったよな。そしたら誰か先生呼んで来たでしょ。しくじったわ」

「そこまでしなくても、艮野はもう十分周りから嫌厭(けんえん)されちゃってるよ、今。やったことの分の報いは受けてる。と思う、俺は」

 有里はハンッと鼻で笑った。

「ざまあないね」

「それで、艮野が言ってたんだけど、あの時部屋にいた奴らな? 誰も有里の火傷痕に気付いて無いって。確認したんだって。だから艮野しか知らないよ。艮野も誰にも言ったりしない。広まってなんて無いから、それが有里が学校に来ない理由なら、考えてみてほしい」

 ひた、と有里がこちらを見た。

「俺は艮野にも教えるつもりなかったよ。お前だけで良かった」

「……」

「艮野しか知らないって、あいつが知ってるだけで大問題だ。俺にとっては。めちゃめちゃ嫌、腹が立つ」

「艮野はもうお前の目に入らないようにするって」

「あのでかい図体が目に入らないわけあるかい」

「そういう物理的な話じゃなくて」

 有里は嫌そうな顔をした。

「で、何。饗庭は艮野の名代で来たわけ? 許してやってくれって?」

「艮野は許してほしいなんて言わなかったよ。そういうこと言える立場じゃないってちゃんと分かってる。そりゃあ、お前が許してくれるって言うなら、凄く救われるだろうけど……」

「うっわ、絶対救ってやんない」

「有里さぁ……」

「あーあー、聞こえない聞こえない。見返りはもう終わったから。これからはお前の言うことなんて、なんにも聞いてやらないからね!」

 「見返り」の言葉が出て、俺はしゅんとした。

「有里――悪かったよ。この間のは俺が悪かった。艮野のことは有里に納得してもらって、有里の意思で止めてもらうべきだった。あんな風に一方的に押し付けることじゃなかった」

「……」

「そもそもお前達の関係が良くないこと、俺はとっくに分かってた。なのに我関せずで知らん顔してたんだ。それが良くなかったと思う」

「別にお前に責任あることじゃないだろ。我関せずだったのは他のクラスメイトも同じだし、俺も人にどうにかしてもらおうなんて思ってなかったよ」

「でも、他の奴じゃ無理だったろ? お前と艮野、両方とまともに話せるのは俺だけだ。他の奴らはどうにかしたいと思っても簡単にできなかっただろうけど、俺はできるのにやらなかった。そう思うから、やっぱり責任感じるよ」

「……」

「艮野がすっかり落ち込んでてさ。前にも言ったけど、いい奴なんだ、あいつ。お前ら、本当ならいい友達になれたんじゃないかと俺は思ってて――」

「お前、結局艮野の為に来たの?」

 有里はそっぽを向いて拗ねたように言った。

「俺のために来てくれたのかと思ったのに」

「お前のためじゃ無いよ」

「……」

 有里は唇を噛んで、不服そうに鼻で息を吸った。

「俺、自分のために来たんだ。俺が有里にもう会えなくなるのは嫌だったから」

「……」

 有里はそっぽを向いたまま、ぶっきらぼうに包みを差し出してきた。

「これ、あげる」

 俺は戸惑いながら、立ち上がり掛ける姿勢で有里の方に腕を伸ばす。包みを受け取って座り直し、中を見て「えっ」と声を上げた。

 中身を取り出して掌に乗せる。出てきたのはジンベエザメのぬいぐるみのキーホルダーだった。

「なんで……」

 俺が呟くと、有里はイライラした様子で言った。

「何、子供っぽい? 要らない? いいよ、無理に貰ってくれなくて」

「違う」

「……違う?」

 俺は通学鞄の中から包みを取り出す。胡乱げに片目でこちらを見ていた有里に、包みを差し出した。

「俺も、有里にあげようと思って……」

 有里は訝しげに腕を伸ばして包みを受け取る。

 中を見て「えっ!」と声を上げ、慌てたように中身を取り出した。包みから出てきたのは俺が貰ったものと同じ、ジンベエザメのぬいぐるみのキーホルダー。

 有里は目をまんまるにして、明るい声を上げた。

「ええー! すごい! すごいじゃん、俺ら!」

 それから、一瞬バツが悪そうに「しまった」という顔をしたけれど、もう遅い。

 不貞腐れるのを諦めて、彼は嬉しそうにニコニコした。

「俺達、おんなじこと考えてたんだな」

「びっくり。まさか物まで被るとは思わなかった……」

「ジンベエザメグッズ、あんなにいっぱいあったのにね」

 有里は勉強机の脇のフックに掛かっていた通学鞄を取って、ワクワクとした様子でジンベエザメをファスナーに付け始めた。

 俺はその様子にホッと胸を撫で下ろす。好意を素直に喜んでもらえると嬉しい。それに有里の楽しそうな顔を見て、機嫌を直してくれた様子に安堵した。

 自分の通学鞄にジンベエザメを付け終わった有里は、椅子から降りると先程くれたばかりのジンベエザメを俺の手から回収した。

「え」

 きょとんとしている内に、有里は俺の脇に座って、隣に置いてあった俺の通学鞄に勝手にジンベエザメを付け始めた。

「えっ、俺も付けんの」

「付けようよ、せっかくなんだから」

「お揃いになるけど……」

「何、嫌なの」

「別にいいけど……」

 俺はいいんだけど、またなんやかんや言われる未来が目に見えるようだ。

「何にも問題ないでしょ」

 ジンベエザメを付け終わった鞄をズイとこちらに寄せて、有里は言った。

 声音が変わった気がして顔を見ると、先程までの不貞腐れた表情に戻っている。

「だって俺、学校行かないし」

「……ずっと来ないつもりか?」

「……」

 有里はそっぽを向く。

「どうすんの? 出席日数だって足りなくなるんじゃ……」

「数えたんだけど、多分後二十日くらい行けば大丈夫なんだよな。三分の二出てればいいはずだから。適当にどっかで史学準備室だけ行くよ」

「勉強付いていけなくなるだろ」

「別にいいんだよ。進学するつもり無いし、赤点だけ回避して留年しない程度に誤魔化せれば。――このまま休んで、通信制の高校に転入することも考えてるんだ。本当はもう高校なんて辞めて、今すぐに家出て働いてもいいくらいなんだけど。中卒はね。俺は良くても、有里家の外聞ってものがあるだろうから」

「……本気なのか?」

 真剣な目で有里を見つめると、彼はやれやれと溜め息を吐いた。

「一週間以上休んじゃったし、今更行く勇気無いわ。前は別に気にならなかったはずなんだけど、今はちょっと、周りの目が気になるんだよね。――お前の友達も引いてるだろ? 俺、こっからリカバリできる気せんわ。せっかく頑張ってくれたのに、悪いな」

「あいつらは大丈夫だよ。待ってるよ、お前のこと」

「そんなこと無いでしょ。綺麗事言わないの」

「……」

 有里は窘めるように言う。その通りだったので言い返せなかった。

 勿論、来たら「良かった」と言ってくれると思うけど、待っているとまでは言えないと思う。このまま有里が来なければ、彼らはきっと有里のことを忘れてしまう。

 有里はやれやれと椅子に座り直して、またふんぞり返って俺を見た。俺は真剣に有里を見つめた。

「学校辞めたら俺とはどこで会ってくれるの」

「学校辞めたらもう会わないだろ」

 有里はぷいと顔をそらして苦そうに言う。

「俺が会いたいときにはどうしたらいいの。また店に行ったらいい?」

「あ、お前もう店出禁な。二度と来んなよ。営業妨害だわ、普通に」

「営業妨害なんてしてないだろ」

「そのビジュアルで彼氏面(かれしづら)されたら客が減るの!」

 有里は溜め息を吐く。

「いるんだよなー、水商売って。彼氏面して店に見張りにくる男」

 誰がいつ彼氏面をしたのだと、ツッコミたくなったがなんだか面倒で止めた。

 彼氏面してたのは、俺じゃなくて寧ろ――

 俺はハッとして有里を見た。

「あの後大丈夫だったか? 昨日」

「大丈夫なもんか。裏でお姉さん達にどれだけからかわれたか。これからもしばらくネタにされるに決まってる」

「そうじゃなくて」

「うん?」

「昨日いたお客さん。なんかすっごく太ってる、ガチ恋? の」

 ああ、と有里は嫌な顔をした。

「睨み付けられてたんだって? お疲れ。とりあえず、お前は俺にベタ惚れで、断ってるのにしつこくつきまとって店にまで来るヤバい男ってことになってるから。刺されないように気をつけろよ」

 結局、刺されるのは俺なのか。

「俺だってあの後宥めんの大変だったんだぞ」

 有里は大きく溜め息を吐いた。

「これで客一人逃がしたらお前のせいだからな。あいつケチだけど回数来てくれるから割と太かったのに。責任取れよ」

 一体どうやって宥めたのか。昨日見た光景を思い出し、俺は俯いてふとももの上の拳を強く握った。

「……お前、あんな風に働いてるんだな。分かってたつもりだったけど、直接見て、改めて現実なんだと思ったよ。なあ、お前の客って、全部で何人くらいいるの」

「……」

 有里はすぐに答えなかった。俺の方を見ている視線を感じながら、俺は自分の拳を見つめていた。有里が言った。

「……あの人はまあ、ちょっと特殊だよ。全員があんなわけじゃない。独占欲強くて俺も手ぇ焼いてるんだ。――いっそ、本当に手を出してきてくれたらいいんだけど」

 俺はギョッとして有里を見る。有里はなんでもない顔をしていた。

「やらかしてくれりゃ一発出禁にできるじゃん? でもそういう根性ある人でも無くて、許されるギリギリを攻めた我儘言ってくるから、それもまた面倒くさいとこなんだよね」

「もう辞めろよ」

 有里に辞めろというのは何回目だろう。

 危ないから。有里自身のために。常識に照らし合わせて辞めるべきだと思っていたし、言ってきた。

 しかし今回はこれまでとは違う想いがあった。

 俺自身が、有里にもう、あの仕事を辞めてほしい。

「ふーん、じゃあ饗庭君してくれるの? 身請け」

 有里は馬鹿にしたような冷ややかな顔で俺を見下ろしてきた。

 そしてやれやれと溜め息を吐く。

「できもしないくせに。代替案も無く辞めろ辞めろって、言うだけなら誰でも――」

「いいよ」

「……は?」

「俺、高校出たら働くから。卒業したらお前の衣食住面倒見てやる」

 有里は瞬いて、呆れた顔をした。

「お前、人助けで人生決めんなよ」

「人助けじゃない。俺がそうしたいと思ったから」

「お前になんの得があるわけ?」

 そう言って有里は、ハッとした顔をして自分の体を抱き締める仕草をした。

「やだ饗庭君ったら、俺の体で元取る気でしょ。いやらしい」

「そんなこと言ってねーだろ!」

 思わず大きな声が出て、恥ずかしくなって視線をそらして咳払いした。

「別に何しろとは言わないさ。危なくないことなら、なんでも好きなことしなよ。でも家でゴロゴロしてるだけは駄目だぞ。多少は家事も手伝ってもらわないと困るし、自分が個人で必要な金くらいは、バイトでもなんでもいいから自分で稼いでこい。――水商売以外で!」

 まっすぐ有里を見上げた俺を、有里はぽかんと見つめてきた。

「饗庭んちって大富豪なの?」

「いや、違うけど」

 俺は有里から目をそらす。

「親をあてにするつもりは無い。だから贅沢な暮らしはさせてやれないよ。でもまあなるべく、普通のレベルの暮らしはできるように頑張る」

 有里が店で働く理由が高校卒業後の生活への不安ならば、辞めさせられるのは、それを担保できる人間だけだろう。

 高校を出てすぐに結婚する人もいるのだから、俺だって自分以外に一人くらい、面倒を見られないことは無いはずだ。

 これが昨夜考えて、俺が出した答えだった。

「ちゃんと、お前のこと引き受けた責任は取るから」

 もう一度有里をまっすぐ見上げると、彼は額を抑えて難しい顔していた。

「う、うーん」

「なんだよ」

「いや、さすがに想定外過ぎてちょっと……」

「言い出したのはお前だろ?」

 俺は思わずムキになった。有里の反応こそが想定外だった。

 なんだこれ。昨夜一生懸命考えて、決心して来たのに。提案してきたのは有里だったはずなのに、俺が断られるパターンあるの?

「うーん……」

 有里は腕を組み、悩むように目を閉じて唸った。そして

「ま、考えといてあげるよ」

 と、相変わらずの上から目線で俺を見た。

「お前さぁ……」

「話はそれだけ?」

「え、うん、まぁ」

「じゃ、今日はもう帰って」

「は?」

「ほら、帰った帰った」

 有里は俺を立たせて追い立てる。

「有里、店はどうするんだ。学校は?」

「いいか?」

 俺を部屋から追い出して、有里は俺の胸を人差し指でトンと突いた。

「俺はもうお前の言うことを聞く(いわ)れは無いんだからな。店を辞めるのも学校に行くのも自分の意思で決める。――これ以上説得しようとしないでくれ」



 送らないぞ、という言葉と共に部屋を追い出され、俺は一人で一階に降りた。

 玄関で靴を履いていると、物音に気が付いたらしい有里の母が奥から出てきた。

「饗庭君」

「あ、すみません。お邪魔しました」

「あの子のためにありがとうね。これ……、大した物じゃないんだけど」

 有里の母は手に持っていた紙袋をこちらに差し出した。

「いえ、そんな……」

「それからこれ。饗庭君はおうち三浦でしょう? わざわざ葉山まで来てもらって、ごめんなさい。これ、電車代の足しにしてもらえたら」

 重ねて、恐らくお金が包まれている封筒も差し出された。

「そんな、貰えません。俺、自分が来たくて来ただけですから……」

 俺は慌てて、貰えないという意思表示のために両腕を体の後ろに回して一歩下がった。

「いいの、貰ってちょうだい」

 と、有里の母はその分手をこちらにぐいと差し出してくる。

「あの子のためにこんな風に良くしてくれる子、初めてで……」

 そう言って、有里の母は言葉を詰まらせた。

「そんな……」

「神川先生に聞きました。饗庭君なんでしょ? あの子を修学旅行に連れて行ってくれたの」

「え、あ、はい……」

「お昼ご飯も一緒に食べてくれてるって」

「あ、はい。でも、くれてるっていうか、自分が食べたくて食べてるだけですから……」

「ありがとうね、お友達になってくれて」

「いえ……」

「あの子、ずっと友達がいないの。背中の痕――知ってるのよね?」

「はい……」

「それが原因で、同年代の子にすっかり心閉ざしてしまっていて。家でもすっかり部屋に閉じこもって、どこに出掛けてるのかもよく分からなくて。それが初めて修学旅行に行きたいって。嬉しかったの、すごく……。それなのに、帰ってきた途端もう学校に行かないって……」

 有里の母が目を潤ませ俯いて、俺は驚くと同時に申し訳無さに身が竦んだ。

「すみません……」

「ああ、まさか!」

 母は慌てて顔を上げた。

「饗庭君を責めてるんじゃないの! 本当にありがとう。何か、クラスの子と揉めたって聞いてます。でも、饗庭君がいてくれて助かったって……」

「お母さん」

 女の子の声がして、パタパタという足音と共に幼い女の子が廊下を駈けてきた。

 体にしがみついてきたその子を「妹の紗絢(さあや)です」と有里の母が紹介してくれた。

「紗絢、お兄ちゃんのお友達の饗庭君」

 紗絢ちゃんはこちらを見て、少し人見知りをした目でぺこりと頭を下げた。

「こんにちは」

 と笑い掛けると、紗絢ちゃんは嬉しそうに笑った。

「こんにちは」

 そして、俺を見て大きな瞳で瞬きした。

「お兄ちゃん、お風邪まだ治らないみたい?」

 ああ、そういうことになっているんだなと察して、俺は頷く。

「うん、もうちょっと。でも、大丈夫だよ」

 俺が言うと紗絢ちゃんはホッとしたように笑う。俺は有里の母に視線を戻した。

「あの、僕、また来ます。有里君――綺羅君に会いたいから来ます。いいですか?」

「ええ、勿論、勿論。ありがとう――」

 有里の母は何度も頷いて、感極まったように口元を手で押さえた。



 俺は駅へ向かって歩きながらぼんやりとしていた。

 手には有里の母から半ば無理矢理押し付けられた紙袋。お金はどうしても受け取れないと思ったから、紙袋の方だけありがたくいただいてきた。

 ――あれが、有里のお母さん?

 今起きたことが信じられなかった。

 有里から聞いていた彼の母親像は、もっと冷淡なものだった。

 実子が出来た途端に、血の繋がらない息子を邪険にし始めた冷たい人。世間体のために家に置いてくれているだけの、愛の無い法律上の保護者。

 ――有里のために泣いていたあの人が?

 あの涙も言葉も、おおよそ嘘とは思えない。子どもの幸せを願う、愛情溢れる優しい母の姿がそこにあった。

 妹も、兄を案じて心配そうにしていた。これまでのイメージでは、両親に愛される幼い妹は、兄のことを全く気にしていないのだと思っていたのだけど。

「……」

 もしかして、有里とその家族の間には、何か誤解とすれ違いがあるのでは――?



 有里の家に行った翌朝の教室。いつものように近江達と話しながら、俺は無意識のうちにも何度も教室の入口を見てしまっていた。有里が来る気配は、やはり無い。

 ――やっぱり、俺が少し話した程度で来る気にはならないか。

 めちゃめちゃ頑固で意思強いもんな、あいつ。

 それでもできれば転校しないでほしいなと、俺は思うけど。

 決定権は俺には無くて、後はもう、有里の考えに任せるしかない。

「饗庭君、それどうしたの?」

 御門が机の横に引っ掛けた俺の通学鞄を指さした。

 昨日有里に貰ったジンベエザメのぬいぐるみが揺れている。

「ああ、これ昨日有里に貰って」

「え、有里に会ったの?」

 近江が間に入ってくる。

「うん。神川先生からプリント預かって、家まで渡しに行ったから」

「ふぅん。元気そうだったか?」

「うん、まあ」

 元気は元気。めちゃめちゃ元気だった。しかし、それを言うのもなんとなく憚られる。

 曖昧に濁していると、教室の後方が小さくざわめいた。

 振り返ると、有里が教室に入ってきたところだった。

 俺はチラリと艮野を見た。有里に気が付いたクラスメイト達も、そっと有里と艮野を見比べて、空気がザッと緊張した。その空気に気が付いて、初め気が付いていなかったクラスメイト達も段々と有里達に注目し始めていく。

 艮野もざわめきに釣られて振り返り、有里を見てギクリとすると、ゆっくりと前を向き直して体を固くした。

 有里は教室の空気にまるで気が付かないかのように、前方窓際の自分の席に向かって進む。

 艮野の席の隣を通り過ぎて、そして、ピタリと止まった。

「ねえ」

 有里が振り返らずに言う。

 艮野はビクリと有里を見た。

「は、はい……」

 有里は顔だけ振り返って不満そうな顔と声で言った。

「なんか言うこと無いの」

 艮野は目を丸くしてぽかんとする。一瞬の静寂の後、バッと立ち上がって机の隣に出、有里に向かって深々と頭を下げた。

「すみませんでした……!」

 教室中が驚いた。艮野が有里に謝るなんて、ましてや頭を下げるなんて、そんなところ想像もできなかったから。

「うん」

 と、有里は艮野の方に向き直って彼を見下ろす。

「いいよ」

「へ……」

 戸惑って少しだけ頭を上げた艮野に、ぶっきらぼうに有里は続けた。

「いいよ。俺も悪かった。散々無視したし、怒らせるようなこと言ったから。よく考えたらどっちもどっちっていうか、お互い悪いとこあったんじゃない?」

 ほら、と有里が右手を差し出す。

「仲直り――じゃないか。別に俺、お前と仲良く無いし。でもまあ、お前が和解したいっていうなら、してやってもいい」

 艮野は恐る恐る顔を上げて、差し出された右手をゆっくり取った。

 有里はその手をギュッと握って、オーバーに振る。そしてパッと離した。

「はい! 解決!」

 有里は教室中に宣言するようにそう言って、艮野に背を向けると自分の机にスタスタと向かい、座った。

 教室中がしんとした。

「有里くーん!」

 俺の隣にいた御門が、両手を広げて有里のところに駆け寄っていった。

「おはよう、大丈夫だったの? 心配してたよ」

「おはよう。うん、ちょっと体調悪くてさ。でも、もう大丈夫。ありがとう」

 有里は素直に微笑む。

 近江が後ろから寄っていって、有里の頭に腕を乗せた。

「有里おはよ。めちゃめちゃ休んだな。勉強大丈夫?」

「全然大丈夫じゃない」

 有里は近江の腕を頭に乗せたまま答えた。

「一時間目数学だよな? どこまで進んだ? 俺もう付いて行く自信無いんだけど」

「いやー、数学は俺もちょっと……」

「教えてあげる。ちょっと待ってて」

 御門が急いでノートを取りに机に戻り、俺と城井と洲鎌も有里の周りに集まって、みんなで数学の復習を始めた。

 俺達の拘り無い様子に、有里に注目していた教室の空気も段々と解けて、いつもと変わらない日常が戻っていく。

 ふと教室を見回して、艮野と目が合った。

 彼は白昼夢を見ているように呆然としていたけれど、俺と目が合うとバツが悪そうに頭を掻いた。俺は艮野に向かって「ほらな」と言うつもりでニッと笑った。








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