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超克  作者: フェルナンド
復讐編
2/9

【2話 鉛色の曇天の空】

「穣,,,」


そう茂はボソッと呟き手を合わせて目を瞑る。


茂と城崎一家は葬儀を行った。


そこには五十嵐小十郎の家族も出席して居た。


母は膝から崩れる様に倒れて泣き叫び,父親は

相手方の家族を今にも殺さんとばかりに

睨みつけて居た。


「(どうせ奴は死刑だろう,もう忘れよう)」


その様に心の内に茂は思って居たのだが,その

あと起訴後2ヶ月後のこと。


「被告人に情状酌量の余地ありと見做し,

執行猶予付き十年を課す,閉廷」


カンカン。


「は?」


なんでも元々勤めて居た会社が余程黒く,

詐欺まがいの仕事を強制させられたり,辞める際には契約金を払わなくてはいけなかったり,

人格否定は当たり前の様にされて居たとか。


証拠も隠滅されかけていたがなんとか見つかり,擁護のしようがまだある為の判決だったとか。


だがこの時,茂が考えていたことは違って居た。


「なん,,,だよ,それ,,,」


膝から崩れ落ちた。


肩で息を吸う,過呼吸だ。


「はっはっはっはっはっ」


もはや呼吸の仕方すら忘れかねなかった。


それから八年後の話。


当時12歳から8年間となると,既に成人

している頃,6月の7日。


完治している上に骨延長の要領での治療だった

為,当時186cmから伸びて190cmに小十郎は

成って居た。


小十郎は刑務所を出てから3日後の10日。


「(さぁ,もっと沢山殺すぞ〜)」


そんなことを思い鼻歌を歌って居ると。


ゴン,何かにぶつかる。


「ッッッッテェなぁゴルァ!,,,は?」


目の前には,首に切り傷が付いている成人男性が

居た。


「この日をどれほど待ち侘びただろうか」


「お前は確か,,,ひぃ⁉︎」


「お前をぶち殺す為に今まで死ぬ気で

訓練積んで来た,,,人生の大半を復讐の為に,

念願叶ったりって奴だな」


小十郎は舐められんとばかりに叫び出す。


「はっははは!ははははは!俺だってただボーッと

してただけじゃねぇんだよ!」


「俺はなぁ!修行をしてぇ!60kgから90.72kgの

体重がようやく定着してきたんだ!」


「今まで低かった体脂肪率がようやく平均に追いついたんだ!そして何より,俺は刑務所に入った

後に,元プロ選手からテコンドーを習ったんだ!!!」


「,,,」


「ダンマリか?弟を殺した奴を目の前に怖気付いたのかなァァァ!」


っと会話を挟みながら不意打ちに,刑務所の壁を撃ち抜いたテコンドーの背後回し蹴りを放つ。


その威力約27馬力(数値にして2.5トンほど)は出力されているだろうか,そんな背後蹴りを

なんと指一本で止めたではないか。


「は⁉︎」


「そんな程度の速さと重さで俺を倒せると?」


「ヒィ⁉︎(なんつう指の力をしてやがる⁉︎)」


11歳の頃から既に頭角を表しつつあったのだ,

何せ全く鍛えずして城崎茂の拳は,同級生の

空手部の部位鍛錬した拳と同じくらい硬い拳

だったのだから。


その時小十郎は理解した,自身とこのガキとの,

絶対的に超えらない壁を。


「ヒィィィ!」


小十郎は危険を察知した時に限定して,時速300kmの速さを出せるのである,何せ大学生時代は山岳部所属,常人の場合脚力とは腕の2から3倍ほどの筋肉量を誇るが,奴の足はその常人の

最大の脚力の4倍,およそ平均的な常人の腕力の約12倍の出力を出せるのである。


「(まだ間に合う!逃げろぉぉぉ!)」


だがしかし,奴は間違えたのだ,選ぶ相手を。


「ヒィ⁉︎」


「,,,」


擬似的な瞬間移動に近しいスピード,もはや

瞬きする間もなく小十郎の背後を取っていた。


「一歩だけでその位置に届く範囲を領域として,

それはもはや,近接戦闘,パンチが1秒未満で

届く距離」


「は⁉︎」


「私はそれを[近接戦闘/CQC]の名前として

知っている」


「ふざけるな!どんな手品だ!」


重圧を掛けて語る。


「手品だぁ?」


「ヒィ⁉︎」


「死ぬほど辛い訓練を積んで,積んで,積んで,

ようやく辿り着いて得たものを嘘まやかしの

類と同じと言ったのか?」


「すいませんすいませグゴ!」


片腕だけで首を掴み締め上げる。


「コヒュコヒュコヒュアガッツァァァ!」


小十郎は徐々に頭に酸素が回らなくなり,

ギラギラとしてくる,コヒュコヒュコヒュゥ,

声を出せない,苦しくて痛くて死にたくなくて。


「ダァ!ヤダァァァグッ!」


「黙れよ」


バゴーンっと地に叩きつける,アスファルトの

地面に0.5cmの窪みを形成するほど強く叩きつけられた小十郎は気絶する。


「,,,(脊髄プロテクターか?)」


プロテクターはぶっ壊れて居た,

すると小十郎は白目から急に足首を掴み,

茂を転ばせようとした。


「オラァァァァ!」


だが,決死の不意打ち,通用せず。


「は?」


「まだまだ元気そうだな」


バゴーン!腹に一撃を入れる。


「グオバァァァ!」


後方に思い切り吹き飛んだ小十郎は壁に

ぶつかりビルにヒビが入る。


「ぐは,,,血ぃ?,,,おいおいおい,嘘だろ?」


ダイラタンシー現象を利用した防弾ジョッキを

貫通するパンチは余裕で小十郎の腹まで到達

して内蔵の一つが破裂して居た。


「(どこかに何かないか!ん?アレは!)」


緊急時避難用の階段があるではないか。


小十郎はそこに急いで走る。


ガタガタガタガタ,勢いよく登る。


「はぁっはぁっはぁっ,あれあいつは?」


肩に手をポンと置かれる。


「え?」


「やあ」


そいつは既に自身より先の場所に居た。


「18階だぞ!」


「正確に言うなら18階と12段だから18.5階,

ってまぁそんなんどうでも良いか」


「ひぃ」


そう言って奴は下に逃げていく。


「逃げてばかり,もう良い」


そう言って茂は顔は憤怒を咲かせる,肺,頬に

大量の酸素が供給され腹圧を掛ける,丹田に最大限の呼吸。


腹筋は外側に向かって膨らむと同時に内部に

向かって収束する,両方に引く張る力が真ん中に

来たとき,丹田に完全に力が入る。


「ハァァァ!」


思い切り腰と足に力を込めて地面を押す。


「はえ?」


小十郎は上から轟音に上を振り向くと頭一つ上から階段が急降下しているのに気づく,その間

僅か0.8秒,バシャコーン!地面に18階分の螺旋階段ごと押し潰される。


ヒューストン,九点設置着地法を使った城崎茂は

無傷で18階から地面に着地する。


「これは俺が鍛えた中ではなかなか自信のある技

でなぁ,柔軟な丹田に仕上げるのに実に2年と

6ヶ月の時間を費やした,1インチを更に改良

した隙間のない技」


それの名は[零寸拳/ZERO・IMPACT]

最も至近距離,拳と打撃を与える対象との隙間が

一切合切存在しない完全な零距離からの打撃,

丹田を主軸に全身を連動させて繋がる連鎖

を拳の一点にインパクトを集中させて,対象に

息を一気に吐くと同時に放つパンチ。


[ワンインチパンチ/ONE・IMPACT]

が超至近距離から全力と同等の威力の一撃を

放てる体術だとしたらその完全上位互換が

零寸拳,重心移動と遠心力,あり得ないほどの

体幹を必要とする。


だがしかしそれが決まればどれほどに強いことか,回避だって防御だって,それをする余剰部分が存在するから動作可能なんだ,避ける為の

空間,防ぐ為の腕の隙間,それを潰されて力を

軽減する為の如何なる行動だって無意味と

化す。


故にして零寸拳は誰にも防げぬ衝突なのだ。


「発動に時間を掛けるが,これ一発を無時間に

放てるようにならなくては,シャコ師匠,そして

勁道の鍛錬を更に積まなくては」


ガシャコーン!18階分の階段の鉄屑の下から

瀕死の塵屑が出てくる。


「カッカハ!」


喉仏も肺も潰れている,故にして喋るなど

到底不可能。


「これだけの破壊を人がやったとは誰も

思わない,それに監視カメラや人の通りもない」


「あ?あっあいあいおいっえ[翻訳]は?一体何を言って」


その時,五十嵐小十郎は気づいてしまったんだ,

人の通りが無い時間帯,人為的に見えない破壊

規模,街の監視カメラの死角,それに気づいた今,

恐怖の感情は畏怖へと昇華して居た。


「えいあうあえああうあいあ⁉︎[翻訳]計画された殺害か⁉︎」


「何言ってるか知らないが,お前がやったことが

全ての原因であると言うことを気づきたまえ」


「あい⁉︎[翻訳]ひい⁉︎」


バゴーン,顔面にデコピンを叩き込む,顔面にめり込み鼻骨陥没それに加えて眼底骨折,脳すら

潰れて即死,そのデコピンは10トンなんか優々と超えるほどの威力だろう。


「終わったぞ,穣,お前の仇を,,,きっと今俺が鏡を見たら,雫が垂れてるだろうなぁ」


なんだか気持ち良い暖かい風が身体をす〜っと

追い風が透ける。


それは城崎穣がもう自分の人生を生きてくれと

優しく語りかけるかの様に。


後日この螺旋階段の事件はニュースになった,

老朽化による下敷き事故として。

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