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超克  作者: フェルナンド
復讐編
1/9

【1話 平穏の崩れ去る音色】

1980年6月の7日,今日と言う日ほど悲惨な日は,中々に無いだろう,何せあの多田市児童連続殺人事件が起きた日なのだから。


犯行に及んだ五十嵐小十郎当時41歳は,躁鬱を

患っている元会社員として判決は,懲役十年,

執行猶予付きで捕まるのだが,1988年に

釈放された。


当時こんな事が起きて居た。


「なぁなぁ,えぇやんけ兄ぃ」


「いやいや,一人で行けって」


当時小学六年生の城崎茂12歳と,四年生の城崎穣と言う10歳の兄弟が並んで話して居た。


九頭竜小学校に6時間目が終了して家に帰っている途中にふっと思い出して弟が宿題を

取りに学校に戻るのを,兄の茂も付いて行って

るのである。


放課後に一緒に来てくれている様に,この兄弟は

仲睦まじい。


「じゃあ行って来る」


「おう」


その言葉がまさか最後に交わした言葉になるとは思いもしなかっただろう。


「トイレトイレ〜っと」


3階廊下端のトイレに入り,茂が大便をしている

時だった。


ピーンポーンパーンポーン。


「ん?(放課後に?)」


「田中先生,田中先生,2階の職員室まで来てください」


「,,,⁉︎」


少し愕然とした後にふっと思い出す。


「(この九頭竜に田中なんて名前の教師は居ない,

そして学校の決まり事,不審者が侵入した際に

不審者にバレない合言葉,田中先生,つまり

二階の職員室に不審者が居るって事か)」


瞬時に避難訓練ではなく,本当の不審者が

校内に侵入したことを理解してトイレの個室の奥,息を殺してうずくまって居た。


「(怖い怖い怖い死にたくない死にたくない死にたくない)」


嫌な脂汗が滝の様に溢れる,心臓はその鼓動が

聞こえてしまう程にバクバクと脈打って居た。


,,,一体どれほどの時間が過ぎただろうか,

すると。


カタッカタッカタ,靴で廊下のタイルを踏む

音が響く。


「(落ち着け俺,足音は上履きで廊下のタイルを

踏む足音じゃない,何かこう安全靴の様に硬い

靴で踏み込む足音だ,つまりすぐそこまで

不審者が来てる⁉︎)」


心臓の音は更に高まる,現実を直視したく

なくて身体が硬直していた。


「誰か〜居ますか〜?」


「,,,」


鼻息や荒い息づかいが聞こえて居ないか,

心底恐怖した。


「不思議だなぁ,さっきまで廊下には誰も

出てこなかった,なのにトイレの人感センサー

が反応して電気がついている,,,」


クチャリ,人がニヤける様な口の開け方をした

際の音が小さく鳴る。


「あれ〜一つ目のトイレかなぁ?」


ギィ〜,扉が開く。


「誰も居ない」


「,,,」


「じゃあ次は2番目の扉かなぁ?」


ギィ〜,扉が開く。


「またもや誰も居ない,おっかしいなぁ」


少し声が高くなる,笑いを抑えながら喋る

様な感じに腹から吹く感じに。


「さぁ〜この扉が最後だぁ」


そう言って鍵のかかった扉に手を掛けた次の

瞬間。


「こっちダァ!」


「⁉︎(穣⁉︎あの馬鹿!なんで逃げなかったんや!)」


「待てよガキィ!」


ドタドタと駆けていく足音が二つ遠くに消えて

行った。


すぐさま茂は扉をバンと開けて廊下に出るが。


「見当たらない,階段だ!」


廊下に着いている泥と赤いナニかから犯人の

位置を特定して居た。


「待ってろよ穣,助けるからな」


そうして走った先には。


「何,,,これ」


用務員のおじいちゃん,体育教師,刺股,

刺された後,血痕,誰が見たって歴然たる

光景。


「うっ,おぇぇぇ」


子供にはあまりにも悲惨な地獄絵図,胃袋に

入っていた昼飯が全て外に出る。


「うぅぅぅ」


嘔吐が止まらない,目からは雫が零れ落ちる。


「首,グビィィィィォォォェェェェ」


生首が二つ転がって居るのは,大人だって

きつい。


「フゥー,,,穣,生きて居てくれよ」


そう言って血痕を辿りながら階段を上がった。


「あっあぁ,,,」


階段を上がって廊下に出て右を振り向いた

瞬間,最も見たくない光景が廊下を紅に

染め上げて居た。


「じょ,,,じょう」


カッターナイフを手に穣の生首を噛みを鷲掴みにしながら持つ不審者と胴と頭が離れた嬢が

そこに居た。


「あぁ〜,多分さっきトイレにビビってた

ガキだなぁ?」


そいつはニヤける。


「俺はなぁ,そうやってビクビクしながら

死を受け入れてるガキをぐちゃぐちゃに

するのが大好きなんだよ」


その瞬間,何かがプツンと吹っ切れてしまって

居た。


内部の熱的暴走,制御不能の怒り,体温が上昇

していくのが分かった,きっと今,鏡を覗き込めば,反射するのは僕の顔じゃない鬼が映る

だろう。


「(このガキ,さっきとは打って変わって

雰囲気が変わったか?)」


不審者の小十郎もなんとなく感じ取って居た,

茂の異変に。


城崎茂の心境,心の奥底に煌々と光り熱を増す

不屈の精神性が芽生えて居た。


[受け継いだ意思/INHERITED・COURAGE]

茂は嬢の守りたいと言う強い信念,[勇気]を

手に入れた。


「(俺を助ける為に,,, もし願いが叶うなら,ウグ,ッハァッハァッッッお前を,守って自分が

死にたかったッッッ)」


「お前もこのクソガキとおんなじ運命を辿らせて

やるから安心しろ」


「なん,だと,なんだとぉぉぉ!穣の事かぁぁぁ!」


目には昂り,荒れ狂う豪炎を宿して居た。


「死ねャァァァ!」


やつはこちらに近づいて来る。


「(きっと覚悟は無駄にしないよ,嬢!)」


茂は拳を途方もないと感じる程に強く

握り締める。


[こいつとこの世を同じくしない/IRRECONCILABLE]激昂憤怒,人が怒髪天に

達した時に誰もが初めに入門する内なる力,

火事場の馬鹿力として脳内の筋肉の制御率が

外れて,普段出すよりも遥かに高い出力可能と

成る。


「ぇぇぇ!」


「(遅い,なんてこんなに遅いんだコイツ)」


[こいつとこの世を同じくしない/IRRECONCILABLE]の第二効果,運動神経と

反射神経の機能の向上,聴力と視力が格段に

強く成る,人が生きる時間より早い時間を

生きる。


「お前が死ねぇぇぇ!!!」


茂は生まれて初めて,本気のパンチを人に

向かって叩き込む。


「ウグゥ⁉︎」


なんて情けない声を張り上げて不審者は壁に

叩き付けられる。


「(あれ,なんで拳にカッターの破片が?)」


奴が所持していたカッターナイフの予備の

替え刃が胸ポケットに入っていたのだ。


「(右手を負傷してしまった,,,だけど何故だろうか,全く持って痛みを感じない)」


[こいつとこの世を同じくしない/IRRECONCILABLE]の第三の効果,神経の知覚

する痛覚の鈍化,大量のアドレナリンの分泌に

より神経麻痺状態と成っているのだ。


「ウグゥァァァ,痛い,痛ィィィ!」


「俺の弟はなぁ,まだまだこれから人生を

謳歌する筈だったんだ,お前のせいだ,お前の

せいだろうがぁぁぁ!!!」


4階から1階まで鳴り響くほどに張り上げて

叫ぶ,犯人の泣き叫ぶ声が掻き消される程に。


「許じでぐざいぃぃ,なんでもじまず,助げで

ぎゅだひぃぃぃ!!!」


肺も潰れてまともに発音すら出来ない状態で

犯人はなんとか命乞いをしていた。


「お前は誰かの命乞いを聞いたか?」


「,,,へぇ?」


「お前は誰かの命乞いを聞いたか?」


「あ,ありばず!私ばいのじごいを聞いだごどが

ありばずぅ!」


「誰かを生かしたか?」


「ぞ,ぞればぁ」


ガシ,襟をあり得ないほど強く握り締め自身の

元に引っ張り上げる。


「ないんだろぅ?目が泳いでるぞ」


「ひっひぃ⁉︎」


スパーンっと再度拳を叩き込み数m吹き飛ぶ。


宙を舞いながら血飛沫を飛ばす。


「ガハァ(身体を貫通⁉︎してない?)」


だがしかし脇の筋肉を簡単に削いだ。


身体を貫通したと,背景が見えると錯覚して

しまうくらい早く強いパンチであった。

なんとか逃げようと必死に教室に這いずる様に

入る。


「,,,」


その蠢くゴミを見下す様に茂は見て居た。


「はぁっはぁっはぁっはぁっ!(死にたくない死にたくない死にたくないまだこんな所で死ねない!)」


一部飛び出る骨を押さえながらもなんとか必死に逃げて居る。


スタッスタッスタ,上履きが廊下のタイルを

踏み込む音が響く,その音はタイルとは違う

鉄を踏み再度タイルを踏む音が鳴る,誰もが

分かるだろう教室に入る時の音。


「だずげで,だずげでぇ!」


「虫唾が走る,なんでお前なんかが命乞いをして

良い立場にあると考えているんだ」


こんな屑野郎に情けを掛けることなど,ある筈も無く。


「ガァァァ!」


腹から息を吐きながら机をバンと叩く。


ドバーン!誰しもが聞いたことがあるだろう

台パンの音,しかしながら破壊規模が違う。


机が壊れるのは当然のことながら,台に手の平を

叩き付けた衝撃波で前に居た塵屑を数十m

吹き飛ばし,すぐさま駆け寄りビンタをパンっと叩き,連続にもう一回叩き宙でも叩きつける

コンボを挟む。


塵屑は床に叩き付けられた。


「うっうぃぃぃヤァァァ!」


まるで人生の最後に一矢を報いるが如く塵屑[小十郎]は,左手に握り締めていたカッター

ナイフで,城崎茂の胸鎖乳突筋付近を切り込みに掛かる。


ザクット皮はナイフに裂かれて,血がドバッと

飛び出る。


「ツッッッ!!!」


痛みが微妙にありそれが茂を冷静にさせた,

落ち着いて止血する為に,服の袖をビリビリっと破いて,傷口を心臓より高い位置で抑えながら,

首に巻きつける。


「ヒッヒィィィ!!!」


奴は窓ガラスまで這いずると,パリーンと

窓をカッターナイフの持ち手を叩きつけて

叩き割る。


「ウッ,ははは!俺のッグ,,,勝ちだ!っはぁっはぁっ,クソゴミィィィ!」


叩き割れた窓ガラスを握り締める,塵屑の手のひらはザクザクとガラス片が刺さり大量の血流を垂れ流す,そしてそれを。


「ふん!」


っと言ってぶん投げる。


「,,,」


吹き飛んだ大量のガラス片,全面にある故に

防御以外に攻撃力を減少させる手段が無い

事にすぐさまに気づくと近くの机の足を掴み

盾代わりにする。


バシャリー,防ぎ切れる訳なかった,ただあの

瞬間に最善の行動は取れた,握って居た左手拳と

左の足の前脛骨筋部分に破片が刺さる。


「グッドラッグッッッ!」


塵屑4階の窓から飛び降りやがった,一年生と

六年生が植える花壇の土に体の芯を外して,鉛直方向の力を回転運動に変えて衝撃を分散させて

五点設置して着地を成功させたのだが。


ドサッバチーン!余程地に強く叩き付けられなきゃ出ない様な音が響く。


すぐさま窓辺に寄り下を見ると。


「あはは!あーっはっはっは!」


などと中指を立てながらこちらを睨み笑う

塵屑が居た。


「ツッッッ!」


唇を噛み締めながら茂は思い切りロッカーに

台パンしてロッカーをひしゃげさせる。


「生かす価値もない,殺す価値もない,そのまま

生き地獄を味わっていろよ」


僅か12分にこれほどに濃密な絶望が幼少期に

あって良いものか?いや違うあってはならない

悲劇だ。


ウーーーウーーーッとパトカーのサイレンが

鳴る,近所の人か死んでしまった教師が事前に

通報して居たか。


そのまま血だらけの奴は連行されて行ったので

あった。


その後,事情聴取が行われた,その時学校に居た

茂含む13人の生徒に聞く,この事件は当時

地元新聞にも大々的に乗り,それはニュースにも

成った。


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