第4話 生まれたての弊害
女神サマの不穏な言葉を最後に俺の意識はブラックアウトし、次に目が覚めた頃には玉座に座っていた。
俺の目の前には大勢の臣下が膝をつき首を垂れている。人間ではない。肌の色が生物的におかしいヤツ、頭から悪魔のような角が生えているヤツ、翼があるヤツ、腕が6本あるヤツ、サイズがおかしいヤツ。
他に耳が鋭かったり、トカゲが擬人化したようなヤツもいた。体が炎や水で出来たような者もいる。
多種多様の人型の化生が、俺に忠誠を捧げるかのように同じ姿勢で出迎えていた。
(ン何これ???)
『聞こえる?』
(うおビビった!? 女神サマ、これどういうこと?)
『今、神託の応用でアンタに語りかけてる。元々テレパシーを持ってるからか他の子よりちょー繋がり易いわね』
(いや説明プリーズ)
『本当はアタシの祝福を与えた子達に転生させるつもりだったんだけど、アンタの魂が保たなそうだったからアタシの子供として生んだの』
(待ってもう意味分かんない)
『種族は神子。女神の直系だから天使よりもずっと上の立場よ』
(……つまり、俺の前にいるコイツらが女神サマの眷属?)
『そ』
(俺は女神サマの子として生まれた?)
『そそ。今、使いの者を送るからそのまま座ってて』
俺は無言で了承の意を伝え、可能な限り真面目な顔で臣下達を睥睨した。超能力を確認してみるが、発動に問題はない。
出力は流石に戻っていないだろうが、未来予知と瞬間移動、思考盗聴さえ最低限使えれば問題ない。
程なくして、俺の両隣に暗黒の魔法陣が浮かび上がり、二人の堕天使が顕れた。
三対六枚の艶やかな漆黒の翼、同色の鎧に身を包み、長い白髪を靡かせる聖騎士。
右の天使が赤い瞳を輝かせて声を出した。
「王の忠臣達よ」
左の天使も同じように青い瞳を輝かせて声を出した。
「神の子らよ」
二人は声を合わせた。
「「神の寵愛を一身に受けし王が降臨なされた。面を上げ、御身を拝謁する栄光に浴する事を赦しましょう」」
荘厳かつ傲慢な物言いにも関わらず、俺の配下は一切の不満を抱いていない。
彼女らは王の言葉を代弁するにたる地位にあり、この状況は至極当然なのだと心の底から思い込んでいる。
非常に効率的だ。
規律や秩序を乱そうとする者がいないというのは集団を統率するにあたってこれ以上ない好遇だ。
だからこそ、異端視される者は集団から追放される。人間の自分と異なる者を忌避する性質は、効率良く群れを束ねる為に設定されたプログラムから来ているのだろう。
「魔王様。どうか、彼らに陛下の御言葉を」
赤い瞳の堕天使が体を俺に向けてそう進言した。
「………(え、喋らなくてもいいって。え女神サマ!? ちょっ話が違うんだけど!? ねぇ!!)」
困ったな。どうしよう。えマジでどうしよう。
「おっぱい!!!!」
待て待て待て何で俺全力で叫んでるの?
しかもなんでよりによっておっぱい叫んでるの!?