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第2話 かくも恐ろしき慣れ

 目が覚めたら褐色美女に膝枕されていた。つか天井が見えない。たわわに実ったカカオが俺の視界の半分を遮ってる。


「え」


「あ、起きた?」


 可憐で涼やかな声が俺の脳を震わせた。綺麗な声だ。読心系超能力を常にオンにしてる弊害で、汚い心の声がこびりついていた脳みそがリフレッシュされるような……。


 ガバッと人生最速の上体起こしからの周囲の観察を始める。

 ふむ、なるほど、いやここどこやねーん。


「あはは、オタクくんキョドりすぎ〜」


「いやギャルはそんな古代エジプト人みたいな服装しないから」


 てか思考が盗聴出来ないんだが。まさかこの女も心ナッシング界隈なのか。というか体に違和感が、あれ待って俺死んだ筈じゃね。


「何さ、アンタの世界心ナッシングなヤツいんの?」


「ホワイクロギャルピーポー! 思考を盗聴して来た! アルミ被んなきゃ!」


「いや落ち着けし。ヘイステイ! ハウス!」


「アイン!」


「何でドイツ語で1なん!? 英語で返してよそこは」


 なるほど、こちらの思考を読めると。記憶までは触れられてないな。


「いや怖。アンタ情緒不安定すぎん? さっきまでノリノリだったのに急にシリアス思考入るじゃん。温度差で弾け飛びそう」


 なんか頭のおかしい事を言っている女。長い金髪に褐色肌のアマゾネスっぽい雰囲気の美女。服装はなんかエジプトとかギリシャみたいな神話の登場人物が使ってそうな謎の布。更に耳、首、手首や太腿に金環の装飾具がある。


 切れ長の目、毒々しい赤の口紅、鼻筋もスッと通っていて、印象的にはまず露出のヤバさより顔の綺麗さが先に来る。美人っていうのはこういうのを言うんだろうな。


 脚も長いし、プロポーションも凄い。てか裸足じゃなくてエグい高さのヒール履いてる。凄いなそれもう凶器じゃん、刺殺出来るじゃん。


「でへへ。いやぁそんな褒めなくても〜」


「刺殺出来るじゃんは褒め言葉なの???」


「機能性って大事っしょ」


「あっマジで刺殺武器だったんだそれ」











「なるほど。世界の狭間を藻屑のように漂流していた俺を拾ってくれた、と。神か?」


「女神なんですけどぉ」


「マジで感謝するわ。えんがちょ」


「それ意味違うよ」


「えっ? あんがとのギャル訛りじゃないのこれ」


「ギャルを何だと思ってんの???」


「なんかの部族」


 なるほど。やっぱあの世界には意思みたいなのがあったのか。んで俺に手出しするのは怖いから死体蹴りするにとどめたと。


「はっ、カスが」


「自分の生まれた世界に対して鼻で笑うヤツとか初めて見たかも。写メ取ってい〜?」


「スマホねえだろ」


「はいこれ」


 めちゃくちゃデコられたガラケーが女神サマの谷間から現れた。ここは世界の狭間という空間次元の聖地とでも言うべき場所。胸の谷間という絶対領域を異空間と接続する事で無限収納のような挙動を見せたのだろう。


「この流れでスマホじゃない事あるんだ。で、人類の大敵に何の御用ですか女神サマ?」


「あぁ、勘違いしないで? 私女神って言っても邪神の類いだから」


 衝撃の事実。っていう割にはあんま禍々しいオーラは感じないけど。


「んあー、色々あってね〜。元は人間だったんだけどさ、何やかんや神になって? んでそしたら他の神々から疎まれてさ、封印された」


 どうやらこの女神サマを俺と同じような来歴をお持ちのようだ。そう考えると何だか親近感が湧いてくるな。相変わらず心が読めないけど。


「神格はね、精神的存在だから発する言葉自体が心みたいなもんなのよ。だから心の声が直接聞こえるアンタにはそう聞こえるんじゃない?」


「言われてみりゃ……」


 確かにさっきから物理的な音が聞こえない筈なのに、脳に声が届いている。常に読心術をオンにしてたせいで感覚が変になってるな。


「まあでも、長い間読心し続けたんだからしゃーなくね? ずっと音を聞いてなければ誰でもそうなるよ」


「だとしても空気の振動と精神波の違いが分からなくなるってヤバいだろ………慣れって怖い」

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