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第七話 深夜の鍛錬

「……頼りにしてる、か」


 アズリアの背中も見えなくなってから、僕はそう呟く。

 最後に残したアズリアの言葉が、嬉しくて僕にはたまらなかった。


 両親はおそらく僕がオーガを討伐したことさえ知らない。

 けれど、アズリアはわざわざそのことについて僕をほめる為に来てくれた。


 それだけで、僕は全てが報われたような気がしてならなかった。


「……本当に、できた妹すぎるだろ」


 普段は無愛想で、口の悪く。

 けれども怪我をしたら真っ先にやってきて、何かあれば僕の側にやってきてくれるアズリア。


 その存在がいなければ、僕はこうして生き生きと過ごせていた自信はなかった。


「頼りにしてる、か」


 そう呟いてから僕は地面においていた素振り用の剣を拾う。


「……ヒナ、シロ。もう少しだけお願いしていい?」


 その僕の言葉に反応して顕現したのは、少し不機嫌な火の鳥のヒナともう一体、眠そうな目をした子虎のシロだった。


「ぴい!」


「……にゃう」


 ヒナはなぜかやる気満々に、シロは眠そうながらもこくりと頷いてくれる。


「ごめんね。……でもありがとう。きちんと明日お礼はするから」


 その二体、主にシロに罪悪感を覚えながらも僕は剣を握る拳に力を込める。

 穀潰し、そう言われる僕でも認めてくれる人はいる。

 それはたぶん、同情とか哀れみからも言葉なのだろう。

 それでも、いつか僕はそれに答えた能力を身につけたい。


「……だから、今日はちょっとお願いするね」


 そして誰もいない暗闇の中、僕の訓練が始まった。



 ◇◆◇



「少し、やりすぎたな……」


 そう僕が呟いたのは、もうすでに皆が寝静まった時間だった。

 明日もヨハネスの仕事に付き合う予定なのに、つい張り切ってしまった。

 そう内心反省しつつ、僕はゆっくりと自分の部屋を目指す。

 早く塗れたタオルで身体を洗ってから寝よう、と。


 その異常がおきたのは、そのときだった。


「……え」


 突然僕の目の前が照らされる。

 同時に僕の身体から魔力が消費され、僕は精霊が顕現しようとしているのを感じる。


 ……それも、僕の指示ではなく自分の意志で。


 滅多にないことに呆然とたたずむ僕は、目の前に現れた精霊にさらに驚くことになった。

 そこにいたいのは、一番めんどくさがりで普段はできる限りさぼろうとする精霊、黒い甲良を持った亀、クロだったのだから。

 驚きを隠せない僕に対し、クロは眠たそうな目を何時にもなく険しいものにしながら口を開く。


「ぬし、なにか きてる」


 ──そうしてクロが自身のひれを向けたのは、アズリアの寝室だった。

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