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第51話 結果

 実のところ、僕は最初のサーシャさんと支部長の会話で、何らかの取引があることは察していた。

 しかし、それは何らかの理由で破綻したと僕は考えていた。


「だって、試験の免除はないって支部長が……」


「ん? なに言ってる、ライバート」


 僕の言葉に、支部長は心底疑問そうな顔で告げる。


「ギルド職員の試験が実力をはかるものなわけないだろうが。言っただろう、試験は免除するって。あれは試験の結果は関係なく、合格は決まっているて意味だ」


「……え?」


「そもそも支部長と呼ぶのを許可した時点で、お前をギルド職員としてとるのは認めている」


「え、え……?」


 状況がわからず呆然とする僕に、サーシャさんが疲れた表情で告げる。


「この人、これが通常運転なのよ……。ほぼ説明不足だから、それを覚悟で話しを聞かないと疲れるわよ」


「ぶわはは!」


「困ったら奥さんを呼ぶといいから」


「……それはやめてくれねえか」


 心なしかしぼんだ支部長を見ながら、僕はまだ言われたことを整理できていなかった。

 つまり、僕は本当にギルド職員になっているのか?

 そうだとしたら、なおさら。


「なぜ、僕に無意味な試験を課したんですか?」


「お前が強かったからだ」


「っ!」


 僕の質問にノータイムで返した支部長の言葉、それに僕は思わず言葉を失っていた。

 そんな僕に、支部長は楽しげに告げる。


「これでも俺も大分ビビったんだぜ? 召還士が思考加速系のスキルを持っているだけでもやばいっていうのに、目の前に来た奴は明らかに戦える人間」


「なにを……」


 思いもせぬ賞賛の言葉に、僕は言葉を失う。

 しかし、まっすぐな目で支部長は続ける。


「すごいな、お前。誇っていい。お前みたいな召還士をみたのは俺でさえ初めてだ。だから俺はお前の実力を確かめたくなった」


 その言葉を聞きながら、僕は思う。

 これは本当に現実なのだろうか、と。

 戦ったからこそ、僕はわかる。

 目の前の人は、僕が逆立ちしても勝てないような存在だった。

 そんな人が僕をこんな風に無邪気に賞賛してくれている。

 その状況が信じられず、僕はなにも言うことができない。


「後、もう一つ訂正だ。お前は試験に落ちてない」


「……え?」


「──試験はお前の勝ちだ、ライバート」


 その言葉に、僕は目をみはる。

 そんなことあり得る訳がなかった。

 なぜなら僕の剣は、支部長に届かなかったはずなのだから。

 それに、何故か罰が悪そうに頭を掻きながら支部長は告げる。


「あー、なるほど。伝わってなかった感じか?」


「何の話……?」


「俺は途中で、条件変更だと一撃でも当たればお前の勝ちだと言っただろう?」


「え? っ!」


 一瞬その言葉の意味が分からず僕は首を傾げ、しかしすぐにある可能性に気づく。

 僕の剣は支部長に届かなかった。

 けれど、一撃届いた攻撃があった。


 そう、シロの雷撃が。


「そうだ。俺は魔法も含めて勝利条件にしていた」

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