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第43話 今までと違う覚悟

「っ! 支部長、話が違います!」


 僕が話す暇も与えず、サーシャさんが叫ぶ。

 支部長から守るように僕の前に出て、サーシャさんは叫ぶ。


「試験は免除するって……」


「免除すると言ったが、しないとは言ってないだろう?」


「……は?」


 飄々と支部長が告げた言葉にサーシャさんが絶句する。

 しかし、すぐに表情を真剣な物にしてさらに続ける。


「とにかく、ライバートの事務能力には目を見張るものがあります!とにかく、そんな無理難題を出す必要は……」


「無理難題? 何を言ってやがる」


 支部長の顔から、今までずっと浮かべていた人の良い笑顔が完全にはがれ落ちたのはその時だった。

 その顔のまま僕を見ながら、告げる。


「こいつ、結構やるぞ」


「え?」


 驚きを隠せないサーシャさんの視線が僕へと向けられる。

 それを真っ直ぐと見返し、僕は前に出た。


「ありがう、サーシャさん。……でも、僕は大丈夫です」


 前にサーシャさんが居なくなったことで、僕と支部長は真っ正面から向き合う形となる。

 そんな僕を見つめる支部長の目に浮かんでいたのは、隠す気のない僕を見定めるような視線だった。


 その視線に、全身の毛穴が逆立つ。

 視線だけで分かる。

 目の前の人間は、あまりにも強い存在であると。

 精霊達の助けを借りても勝てるかなど、未知数。


「どうだ? やるかい?」


「はい。お願いします」


 しかし、そう告げる僕の声に一切の躊躇いは存在しなかった。

 支部長の視線を真っ向から僕は見返す。

 確かに、異常な難易度の試験だと思う。

 突然かつ、どうしてギルド職員になるのに実力が必要なのかも分からない。


 ただ、これがギルド職員になる為に超えないといけない試験なのだとすれば、逃げるという選択肢は僕にはなかった。


「いい返事じゃねえか」


 そんな僕の決意を理解したように、支部長は笑う。

 そうして立ち上がった支部長の身長は、僕より遙かに高い。

 それでも気圧されないように見上げる僕に、支部長は何かを手渡した。


「っ! これは……」


「俺に腹か頭のどれか、一撃でも与えられたらお前の勝ちだ」


 一撃、その言葉に僕は思わず困惑する。

 頑強なバルクの戦い方は、その強靱な身体で攻撃を受けながら、拳で徹底的に攻撃するやり方。

 いくら元A級だとしても僕に有利すぎないかと。

 まるで僕の思考を読んだように笑いかけてきたのはそのときだった。


「できるものならやってみな」


「……っ」


 ぞわりと背中に悪寒が走る。

 しかし、気圧されることはなく、僕は歩き出す。

 心配げな表情のサーシャさんが目に入ったのはそのときだった。


「ライバート……」


「大丈夫ですから」


 僕の言葉に目を見張るサーシャさんの姿が目に入る。

 そして驚いているのは僕も同じだった。

 それでも、僕は言葉を返ることはなかった。


「僕に任せておいて下さい」


 そして僕は、支部長に続いて部屋を後にした。

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