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第10話 魔剣

 閃光がアズリアへと高速で迫る。


「きゃっ!」


「がぁっ!」


 ……僕の身体がアズリアを覆ったのは、その閃光がアズリアにあたる直前だった。

 閃光が身体に当たった瞬間、僕の身体を痛みと強烈なしびれが走る。

 すぐにでも意識が飛びそうなその痛みを感じながら、僕は何とか口を動かす。


「ひ、な」


「ぴいぃ!」


 瞬間、ヒナから僕に再生能力が付与され、わずかに僕の身体が楽になる。

 身体が修復される異様な感覚を感じながら、僕の胸に浮かんだのは安堵だった。

 一瞬でも僕の動きが遅れていれば、ヒナの攻撃が外れていれば、アズリアに攻撃が当たっていたと。

 同時に僕の胸に後悔が浮かぶ。

 男のナイフが魔剣であることは、もっと早く想像できたはずだった。

 それさえ想像できていれば、こんな危険にアズリアをさらすことはなかった。


 ……いや、まだ危険は去っていない。


 そう自分に言い聞かせた僕は、飛びそうな意識を必死にこらえて立ち上がる。

 凄腕の暗殺者に対して、あまりにも致命的な隙をさらしてしまった。

 これで攻撃されなかったのは、奇跡言うしかない。


「……くそ、こんなはずじゃ。どうして、お前がかばうんだよっ!」


「は?」


 しかし、すぐに僕は男の異常に気づくことになった。

 やけどを負った傷さえ無視し、呆然とたたずむ男。

 理由は分からないが、なぜか男は呆然と立ちすくんでいた。

 とにかくこれはチャンスだと僕は攻撃しようとして……しかし、すぐに僕は膝から崩れ落ちる。


「……くそ」


 この状況に置いて、僕の身体の限界は近づいていた。

 何とか立ち上がろうとするものの、身体に力が入らない。

 突然身体に温かい覚えのある感覚を感じたのは、その時だった。


「ごめんなさい……。ごめんなさい……!」


 ふと後ろを向くと、そこにいたのは呆然とそう呟きながら僕の傷を治癒するアズリアだった。

 その手には、痛々しい傷ができていて僕は自分が妹を守り切れなかったことを理解する。

 それも、決して小さくはない傷を。


 それでも今この状況に置いては、この治癒はあまりにも大きな要素だった。


「あああああぁぁ!」


 悔やむの全ては後だと決めた僕は、最後の力を振り絞り何とか立ち上がる。


「アズリア様……!」


 ──扉が蹴り破られ、衛兵が入ってきたのはその時だった。


「っ!」


 衛兵の存在に気づいた男は、怪我をしているのが信じれないような機敏な動きで跳ね上がり、窓から飛び降りる。


「くそ、追え!」


「大丈夫ですか! アズリア様、ライバート様!」


 数人の衛兵が男を追いかけ窓から飛び降り、数人の衛兵が僕達のところに駆け寄ってくる。

 僕の緊張が切れたのは、その光景を見た瞬間だった。


 なんとか、アズリアの命は守ることができた。

 そう僕が理解し……身体から力が抜ける。

 瞬間、僕の身体は前に崩れ落ちていた。


「……っ!? おにい! 死なないで!」


 鈍い感覚の中、アズリアのヒールの感覚が身体に伝わる。

 お願いだから、僕より自分のことをなおしてくれ。

 そんな言葉さえ、口にする余力もなく、僕はあっさりと意識を手放した……。

本日もう一話、夕方に更新させて頂きます!

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