フィルムポジティブ。
新快速列車の窓辺の光
青空に渡る白い雲と海の景色に頬杖ついた
車内の誰もが寝てるかスマホ見てるかの50:50
遙かな水平線の下の地中を潜る轟音
薄汚れた灰色のドームを抜ける
無人の通気口とか梯子とか
煤けたコンクリートの壁の繋ぎ目
白い蛍光灯が連続して目に映る窓際の
車内の宣伝広告ぶら下がる天井の色
リビドーがカタパルトに狙射ゲーする
壁際のモニター画面 独りでに動く
次来るアニメのシーズン予告
分厚い鉄の扉が滑る 密接した呼吸空間
「扉が閉まります ご注意ください」
欲望とか何かそう言うのより眠い
アスファルトに響いてた足音
振込先の口座番号の数だけ
軋んでた吊革と座席のネジ
後ろ姿さえ見えなくて 前を向いてた
黄色い盲人者用の点字ブロック板を越える
人波
改札口を抜ける 黒い背中とタイトな人影
地下鉄の階段を昇る 灰色に落ちた黒いガムの跡
こびりついて取れない 夢の跡みたいな
夏の太陽と青空の出口
目に焼きついた 自分の外側
エアコンの効かないスクランブル交差点
その人溜まり 県庁とか 何処かのビルへ
流れてく 鳩の居る公園は素通り
ベンチに座る 気まぐれ
タバコの煙が空に浮かんでは消えて
誰かのためなんかじゃない
パン屑を千切ってばら撒いた
憂鬱は止まってくれない
群がる鳩の餌
太陽に向かって切るシャッタースピード
ちょっとばかり手を合わせて拝む 人目を忍んで
公園の時計台のポールが錆び付いている
それでも八時ちょうどの時計の針
逆光で見えなくなってた 自分の素顔
追い求めていたから 周りには誰も居なくなって
遅刻 しないように ベンチに座るのをやめて
歩道橋の下をくぐる 解きたいネクタイ
何車線もの車道 追い越し線が削られる
足もとのメッセージ
転がる石の数とか 紙屑とか レシートの切れ端
刻まれたエンジェルナンバーとか
数えても見なかった いつもと変わらないから
見上げた夏の空 喉元に汗が伝う
カッターシャツより内側の 多分 誰もが言えない
タイトな部分が くっつき合う
仕事よりも大事な 約束だと想いたくて