【36】受験結果と1枚の紙
受験日から翌日、俺達は集まっていた。
「スレイア、本はどうだった? 朝まで読んでいたみたいだけど」
「え!?何で分かったの!?」
レシリアの質問にスレイアはすごく驚いたようで、大きく目を見開いてレシリアのことを見ている。その様子を見て俺もガレントも笑ってしまった。
「いや、隈がすごいから……」
「えー!!」
スレイアはこういったことを隠しておきたいタイプだから、バレてしまったのがよっぽど恥ずかしかったのだろう。スレイアの顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「で、どうだったの? 参考になった?」
「あ、う、うん。まだ全部は読めてないけど、すごく参考になったよ……」
照れながらそう答えるスレイアは頬っぺたをポリポリと掻いている。
「俺もそろそろ決めないといけないなぁ」
「そういえば、シェイドもまだ決めて無かったね」
「そうなんだよなぁ……。魔法について学びたいって言うのはあるんだけど、攻撃魔法について学びたい!! 支援魔法について学びたい!! っていうのは無いんだよなぁ」
「だったら満遍なく学べる学校にしたらいいんじゃないの?」
「うーん、それもありなんだけど……。それだと、何かに特化した学校よりかは専門的に学べないっていうのが、いまいちなんだよねぇ」
「なるほどねぇ……」
一応、魔法に限らず全ての分野について専門的な学校と同じほど学べる学校はあるにはあるが、そこには推薦が必要とされているため、はなからそこは視野に入れていなかった。
「でも……」
スレイアの声色が変わったのに気が付いた。
「皆で一緒に遊べるのもあとちょっとだけなんだね……」
「……」
もちろん学校に通うようになれば、こんな風に集まって遊ぶことが無くなってしまうことは皆分かっていたと思う。ただ、それを口には出さないようにしていた、口にしてしまえば別れを実感してしまうから……。それでも、スレイアがポロっとこぼしてしまったのは、溜めていた想いが溢れ出てしまったのだろう。俺自身も何度かこぼれ出そうになっていた。
俺達の間には沈黙が流れた。俺自身も何を話せばいいのか分からず、口を開くことができない。そんなとき、あることを思い出した。
「……じゃあさ、手紙を書かないか?」
「手紙……」
「そう、手紙。手紙を書けば離れていてもちょっとは寂しくないだろ?」
思い出したのは父さんの手紙であった。街へ仕事に行った父さんは定期的に俺達家族あてに手紙を送ってきてくれていた。そのため、俺にしろ、母さんやプルスとミーヌも父さんがいないという寂しさを紛らわせることができていた。
「……そうね!! いい考えだと思うわ!!」
「おー!! 手紙かぁ、初めて書くなぁ」
「いいね!! いっぱい書いちゃおっと」
3人ともどうやら元気を取り戻してくれたようで、どの位の頻度で手紙を書くか、学校が決まったら住む場所の住所を教え合おうとか今後について話し合った。
そんな話をしている最中にパンっとレシリアは手を叩いた。
「そうだ!! せっかくだから、1か月後に私たちだけでパーティーを開かない?」
「1か月後……」
「多分、受験の結果が届いたら学校のことが忙しくて中々集まれなくなるでしょ?だから、今から1か月後は絶っっっっっ対に予定を開けておいて、また会おうパーティーを開きましょうよ!!」
いつにもなくレシリアははしゃいでいた。
「いいね、また会おうパーティー」
「うんうん!! やろうやろう!!」
「楽しみだぜ!!」
先程までの暗い雰囲気はどこへやら、いつの間にかこれからのこと、今までの思い出を話している間に辺りも暗くなって、その日は別れることになった。
それから1か月後、また会おうパーティーの開催日を迎えた。ただ、結論から言うと俺はそのパーティーには参加することができなかった。大した別れをすることもできず、申し訳ない気持ちと共に俺は皆よりも一足先に村を出ることになってしまっていた。
――――
―――
――
また会おうパーティー開催日から数週間前のこと、受験の結果が届いた。母さんから封筒を受け取って部屋に戻ると、爆発しそうな心臓を何とか沈めて恐る恐る封筒を開けた。
喉が渇き、呼吸が浅くなっているのを感じる。封筒の中に入っている紙を取り出して見てみる。そこには筆記250/300、実技300/300の文字が記されていた。
「よっっっっしゃぁぁぁぁ!!」
心の底から叫んだ。叫ぼうと思って叫んだわけではない、思わず叫んでしまった。先程までのフワフワとした感覚はどこへやら、今は意識がハッキリとしており、今すぐ寝てくださいと言われても絶っっっ対に眠れないぐらい頭が冴えていた。あれだけ悩みに悩んだ第一希望の学校のボーダーラインの点数は超えていた。
「良かった……」
気が緩み紙を持っている手の力が少し抜けたとき、1枚の紙がヒラリと足元に落ちてきた。
「ん?」
緊張で気が付かなかったのだが、どうやら紙が重なっていたようだ。
なんだろう……何かの説明かな?
結果の書かれている紙以外に何が入っていたんだろうと思いつつ、足元に落ちた紙を拾って読んでみた。
「えーと……。え、どういうこと……」
その紙に書かれている内容に驚愕した。
「どうしてなんだ……?」
その紙は推薦状だった……。
それからは忙しい日々であった。両親に話すとすぐに王都に行くことになり、数日かけて王都に着くや否や受験を取り仕切っている機関に向かい話を聞いた。そこで話されたのは、どうやら俺の実技の結果を評価して推薦状を送ったとのことで、その推薦状を利用するかどうかは俺達家族に任せると言われた。ただ、どこが評価されたのかは守秘義務があるとのことで教えてはくれなかった。
また数日かけて王都から戻ると家族会議が開かれた。
「どうする? シェイド」
「……」
自分自身何が何やらといった状態で、母さんにどうすると言われても答えることができないでいる。
「……まぁ、急にこんなの送られても困るよな」
父さんは笑いながら推薦状をペラペラと揺らしている。
「そうよねぇ……。本当に急なんだもの」
俺だけではなく父さんも母さんも急なことで困っているようであった。
「一応、ローウェン魔術学校に通うつもりだったんだよな?」
「うん、そのつもりだったんだけど……」
悩みに悩んで色んな分野の魔法を学べるローウェン魔術学校に通おうと思っていたのだが、まさかリアレント学園の推薦状を貰うなんて考えてもいなかった。
「多分、シェイドも考えがまとまっていないだろうし、今日はとりあえず休みな。明日の夜結論を決めることにしよう」
「そうね、1人で考える時間も必要だわ」
「うん、ちょっと考えてみる……」
ダイニングから出て、部屋に戻るなりベッドに倒れこんだ。
「はぁ……。どうしよう……」
ボーっと天井を眺めながら、考えをまとめてみる。
リアレント学園かぁ……。
ローウェン魔術学校とリアレント学園、どちらに行きたいかというともちろんリアレント学園なのだが、不安が残っている。その不安とは特性のことだ。この右目があるとはいえ、特性無しの俺がリアレント学園にいって上手くいくのか、それが唯一の懸念であった。それに、実技の結果を評価されたとはいえ、自分の実力で通用するのかという不安も残る。
リーシェに相談しようにも、こんなことを相談されても困るだけだろうし、スヤスヤと眠っているリーシェを起こす気にはなれなかった。
「……どうしたらいいんだろ」
色々な考えが頭の中を駆け巡り考えがまとまらないまま、ボーっとしているといつの間にか眠ってしまっていたようで、気が付いたときには窓から朝日が差していた。
「……皆に相談してみるか」
俺は部屋から出ると朝食取ってすぐにいつもの集合場所に向かった。




