【35】受験が終わり村へ
何とか帰りの馬車の時間に間に合った俺達は、馬車に揺られながら村へと戻っている最中であった。
「あー、早く読みたいなぁ」
「楽しみなのは分かるけど、気持ち悪くなっちゃうから馬車の中で読むのは止めておいた方がいいわよ」
「分かってるよ~」
スレイアはもう今すぐにでも本を読みたいといった様子で、ワクワクしているのが傍から見ても分かった。
「試験の結果が届くまでどれくらいかかるんだっけ?」
「確か……。2、3週間後とかじゃなかったけ?」
「へぇ、結構かかるんだね」
「まぁ、あの街に集まっただけでもあれだけの受験者がいたし、王国全部だとするとそれぐらいかかるんだろうね」
「確かにそれもそうだね。じゃあ、届くまでこの本をしっかり読み込むことにするよ」
スレイアは笑いながらそう言った。
俺もどの学校にするかある程度決めておかないとなぁ。
試験の結果が返ってくるのが2、3週間後とはいえ、結果が届いてから通いたい学校に書類を提出するまでは時間はそれほどないため、あらかじめ行きたい学校を絞っておかなくてはならなかった。
試験の話や学校に通うようになったらどんなことをしたいのかを話していると、いつの間にか村に着いており、辺りもすっかり暗くなっていた。
「じゃあ、またね」
「おう、またな」
「また明日~」
「皆お疲れ様」
俺達は馬車から下りるとすぐに分かれてそれぞれの家に向かった。
「ただいま」
「あら、お帰りなさい。ちょうどいいタイミングで帰ってきたわね。もうすぐご飯ができるからお父さんたちを呼んできてくれる?」
「分かったよ」
家に帰って早々母さんに頼まれたので父さんたちを呼びに行くと、それぞれ皆お帰りやお疲れさまと声を掛けてくれた。そして、全員が集まったところで夕飯となった。
「シェイド、今日の試験どうだった?」
「結構良かったと思うけど……。なんか俺だけスキルと魔法を全部見せるように言われたよ」
「へぇ、変なこともあるもんねぇ」
試験のこと今後のことを話しながら夕飯の時間をいつもと変わりなく過ごした後は、風呂に入って自分の部屋に戻った。
部屋に戻るとすぐに椅子に座って、学校の一覧が載っている資料を机から取り出そうとしていると、リーシェがこちらに近づいてきた。
「どうだったのよ、試験とやらは?」
「まぁまぁ良かったよ」
「ふーん。そう、良かったわね」
そう言いながらリーシェは俺の肩に乗った。
「そうだ。今日、召喚スキルを見せるように言われたから、テラリィを見せたら驚いていたよ」
「それはそうよ!! なんてったってテラリィだからね!!」
まるで自分のことのように嬉しそうにしているリーシェ。たまにテラリィのことを振り回すようなことをしているけど、やっぱり好きなんだなと微笑ましく思いながら見ていると、
「……なによ、その顔」
俺が見ていると気が付いたリーシェはジトーっと見つめ返してくる。
「んー? いや、何にも」
「……なーんか、変なこと考えてるんじゃないでしょうね」
「まっさかぁ」
「……ならいいんだけど」
そんなやり取りをしつつ、魔法関係の学校についての情報をボーっと眺めながらペラペラとページをめくっていく。
「あ、そういえば」
あることを思い出してカバンを漁るとカバンの奥の方にあるのを見つけて、それを手に取ってリーシェに見せた。
「この眼帯なんだけど……。これってどういうものか分かる?」
「なーに? ……どれどれ……ふんふん」
リーシェに眼帯が張り付く事、眼帯を通して向こうの景色が見えることを伝える。リーシェは俺の説明を聞きながら、上手いこと机を使って何度もひっくり返しながら眼帯を詳しく調べてくれている。
「そうねぇ……」
リーシェは一通り調べ終わったようで結果を告げようとしてくる。何故か緊張している自分がいた。
「別に普通の魔道具だと思うわよ」
「普通の魔道具? 本当に?」
「えぇ、でも……。このタイプの魔道具は久しぶりに見たわね」
リーシェは懐かしい~と呟きながら魔道具をじっくりと眺めている。
「……どういうこと?」
リーシェの反応からただ懐かしいだけの魔道具ではないということが分かった。
「この魔道具はね、ほんっっっっっとに!! 大昔に作られたものなのよ」
「なるほど?」
大昔にも眼帯ってあったんだなと思いながらも、リーシェの言葉を待った。
「そ・れ・で!! 重要なのはこれが作られた場所なのよ」
「作られた場所……」
「そう!! 作られた場所」
「どこで作られたんだ?」
リーシェに尋ねてみると、ニヤッと口元に笑みを浮かべた。
あー……。これ、また始まったな。
「教えて欲しい?」
「……あぁ、教えてくれ」
「教えてくれ?」
「……教えてください」
いつものリーシェの悪ノリが始まったなと思いながらも乗ってあげる。この悪ノリが始まるたびに突き放してもいいんだが……。
「どうしようかな~」
「……」
リーシェの頬っぺたを指で挟む。
「ちょ……」
「早く教えろー!!」
指で頬っぺたをぐりぐりとすると、リーシェはジタバタと体を動かして何とか俺の手から逃れようとしている。
「やめにゃしゃ~い!!」
「教えろー!!」
「わかったわかったから!!」
散々いじって満足したから指を離してあげると、いつものようにリーシェは頬っぺたをさすっている。
「もう!!いっつもいっつも!!」
「それはこっちの台詞だ。早く教えてくれ」
「はいはい。分かりましたよーだ!!」
リーシェは舌をべっと出して、頬を膨らませてながらも教えてくれた。
「まぁ、結論から話すと、この眼帯は精霊界で作られたものなのよ」
「せ、精霊界!?」
「そう、精霊界」
俺にとってみればとんでもない話なのだが、リーシェは何でもないかのように話している。
「精霊界で作られたものが何でここに?」
「それは分からないわね」
「……実はさ――――」
俺はリーシェに本屋で会った女性が俺の右目のことを見抜いていたかもしれないこと、この眼帯をくれたことを説明した。
「なるほどねぇ……」
俺の話を聞いたリーシェは腕を組み何かを考えているようであった。
「なんでその女性が持っていたのかは分からないけど……。これが精霊界で作られた物なのは確かよ」
「そうなのか……。じゃあ、なんで精霊界で作られたって分かるんだ?」
「それはー……。何て言うのかしらねぇ……。オーラ的な」
「オーラ的な? ……どういうこと?」
「うーん、上手く説明するのが難しいけど……。強いて言うなら、精霊界の雰囲気を感じるからかしら」
「雰囲気……」
「そう、雰囲気」
「……なるほど」
恐らく人間では感じることができない何かがこの眼帯から出ていて、それをリーシェが感じ取ったのだろう。これ以上聞いてみても恐らく意味が無いだろうなと考えて、質問することは止めた。
でも、何であの人はこれを持っていたんだろう……。それに、なんで俺の右目のことを……。
眼帯の正体は分かったものの、本屋の女性の謎はより一層深まるばかりであった。




