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【31】試験会場へ

「あー、緊張で吐きそうだぜ」


 俺達4人は試験を受けるために近くの街に向かう馬車に乗っていた。


「まぁ、やれることはやったし、後はやるだけだな」


「お、シェイド余裕だねぇ」


「まぁね」


 こんな軽口をたたきながら馬車に乗ってはいるが、昨晩は緊張であまり寝れなかった。俺達の他にも恐らく受験生だろうと思われる人達も乗ってはいたが、1人で来ている人は静かにしているが、誰かと一緒に来ている人は俺達と同じように何かを話している。


「でも、シェイドがいてくれたおかげで実技は大丈夫だね」


「確かにシェイドがいなかったらやばかったな」


「感謝感謝だよ」


「いやいや、そんなことないよ」


 3人の言葉にどこか照れくさいものを感じたが、それもこれも全部この目のおかげだなぁとしみじみと感じた。


 あくまで推測だが、魔法やスキル、人の能力もその存在を認識して理解するできたことで、見えるようになったんだと思う。そして、見えるようになったことで魔法もスキルも覚えることができた。そのため、この目が無かったら何一つスキルも魔法も覚えることができずに試験を受けることになっていたと思う。


「皆は座学の方はどうなの?」


 3人に尋ねてみると、


「私は多分大丈夫かな」


「うちも大丈夫だと思う」


 レシリアとスレイアは余裕までとはいかないが、どこか気楽そうにそう答えたのだが……。


「ガレントは?」


 ガレントの方を見るが俯いていて表情が見えない。


「……ガレント?」


 不思議に思って再び声を掛けてみるも返事が返ってこない。肩をゆすってみるとゆっくりと顔を上げた。


「……どうした?」


「シェイド……。その話はしないでくれ……」


 力なくそう答えたガレントの顔はいつにもなく暗い表情をしていた。


「何辛気臭いこと言ってんのよ。あんだけ勉強したんだから大丈夫よ」


「そうだよ!!大丈夫だよ」


 レシリアとスレイアが慰めるも相変わらずガレントの表情は暗い。


「まぁ、座学の試験が駄目だったとしてもリアレント軍学校に通うようになるだけだから大丈夫だよ」


 その一言でさらに表情を暗くするガレント。


「もう!!シェイドそんなこと言わないの!!」


「あー!!今日はシェイドが意地悪だ!!」


「ハハハ、こんなにガレントが落ち込んでいるの見たことがなかったから、ちょっと意地悪したくなっちゃった」


 3人には父さんから聞いたリアレント軍学校のことを話していた。そのため、俺達の間でリアレント軍学校には行くことがないようにしようという話になっており、その甲斐もあって皆勉強を頑張れていた。


「シェイドやめてくれよぉ……」


 頭を抱えながらそう呟いたガレントの肩に手をまわした。


「まぁ、それは冗談として。ガレントはしっかり勉強してたし、大丈夫だよ。俺が保証する」


「……本当にそう思うか?」


「あぁ、もちろん。ガレントが自分の実力を出し切れば、ギレザにも受かるよ」


 実際、数か月前に始めた勉強会から回数を重ねるごとにガレントの勉強に対する向き合い方も変わっていた。最初の頃はすぐに勉強を中断させていたが、試験日数日前には最初の勉強会からは想像もできないほど意欲的に勉強に取り組むようになっていた。


「そうだよ!!ガレントなら大丈夫だよ!!」


「そうそう、ちゃんと勉強してたし、そんなに悲観的になることないわよ」


 レシリアとスレイアと共にガレントのことを励ましていると、ガレントの表情が少しずつ和らいでいった。


「そうだよな……。そうだよな!!俺なら大丈夫だぜ!!」


「ガレントなら絶対うか……」


「いやー!!心配して損したぜ!!俺なら余裕で受かるよな!!」


 大笑いしながらそう言うガレントを見てどこか不安に感じるモノがあったが、まぁ、悲観的な感情で試験に挑むよりもこの状態の方がいいかも知らないと思ってそのままにすることにした。


 そんなこんなで気が付けば試験会場の街に到着して、俺達4人は馬車を下りた。


「んー!!疲れた!!」


 大きく伸びをするスレイア。ずっと座りっぱなしだったのと、いつも以上に馬車に乗っている人がいたため馬車の中は窮屈になっていた。そのため、馬車に乗っていた人の多くは馬車を下りるなり伸びをしていた。


 久しぶりだな……。


 受特の儀以来訪れたハンドラルに懐かしさを覚える。受特の儀では散々な結果になったが、今回の試験はいい結果を得られればいいな。


「試験までまだ時間があるけど、どうする?」


 ガレントに言われて街に置かれている大きな時計に目をやると、試験開始まで2時間近くあった。


「うーん、このまま試験会場に向かっても良いけど……」


 試験の準備のために早めに試験会場に向かった方がいいかもと思いながらも、周りの受験生らしき人達のことを見てみる。すると、真っすぐ試験会場の方に向かって歩いて行く者もいれば、全く別の方向に歩いて行く者、近くにある飲食店に入って行く者など全員試験会場に向かうわけではなさそうだ。


「試験までまだ時間もあるし、何処かで何か軽く食べていく? 筆記試験の後すぐに実技試験があるみたいだし」


「そうね、今更慌てても仕方ないし、実技試験でお腹が空いて力が出せないなんて勿体(もったい)ないからね」


 ガレントとスレイアにも確認してみると、何処かで軽く食べることには賛成だったようで、近場の飲食店で食事をすることになった。


 飲食店に入るとテーブル席に案内されて座る。それぞれが思い思いの注文をして、料理が運ばれてくるまで問題を出し合って料理を待つことにした。


「――――おお、正解」


「へへ、余裕だぜ」


 問題を出し合ってみると意外と皆解けており、よっぽどのことがなければ酷い点数をとることは無いだろうと思う。


「……そういえば、筆記試験のことばかりだったけど、皆は実技試験は大丈夫なの?」


 今まで練習してきたが、やっぱり俺達4人以外の人たちがどれだけやれるのか分からないため、不安を感じて3人に聞いてみる。


「うーん、大丈夫かどうか言われると分からないけど……」


「けど?」


「自分のやれることはやったからなぁ……。これ以上を求められているんなら、諦めるしかないな」


 ガレントに続き、レシリアとスレイアも同じような感想であった。他の受験生がどれほどやれるのかが分からないため少し不安に感じる部分はあったが、確かにやれることはやったかと3人の言う通りこれで駄目だったら仕方ないかと思うことにした。


 そんな話をしていると料理が運ばれてきたため、食事にすることにする。運ばれてきたのは、パンとサラダとスープという簡単なものであったが、中々口にすることがない街での料理に舌鼓を打ちつつお腹を満たしていく。


 料理を食べ終えて時計を見ると、試験まで後1時間とちょっとぐらいであった。


「そろそろ、試験会場に向かう?」


「そうね、試験会場の雰囲気にも慣れておきたいし、向かいましょうか」


 俺達4人は料理の料金を払って店を出ると、試験会場へ向かうことにした。

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