【30】勉強会
家に帰って部屋でゴロゴロしていると、プルスとミーヌが夕飯の準備ができたと教えに来てくれた。読んでいた小説に栞を挟んでからダイニングへと向かう。
ダイニングではもうすでに夕飯が机の上に並べられており、皆が俺を待っている状態であった。俺はいつも席に座る。
「よし、シェイドも来たことだし食べるとするか」
いつものように今日あった出来事などを話しながら夕飯を食べていると、母さんがふと思い出したかのように話題を振ってきた。
「そういえば、シェイド。試験の方は大丈夫そう?」
「あー、まぁ……。ぼちぼちかなぁ」
「そう、大丈夫そうだったらいいんだけど」
学校に入学するには試験を受けないといけないのだが、これがまた退屈ではあった。魔法やスキルの実技であれば問題ないのだが、王国の歴史などの座学はどうしても退屈だ。
「シェイドなら大丈夫だろう」
父さんがにこやかにそう言うと、母さんが笑った。
「ふふふ、そうね。お父さんの筆記試験に比べたら大丈夫よね」
「おいおい、それは言わないでくれよ~」
「まぁ、父さんよりかは点数取れるように頑張るよ」
「おいおい、シェイドまで……。でもな、父さんは実技の方はすごかったんだからな」
父さんは右腕で力こぶを作る。丸太のように太い腕はプルスとミーヌのお気に入りだった。
「それで、地獄のような学校に行ったのは誰だっけ?」
「う、それは……、その……」
大きな体を縮こまらせてポリポリとでこを掻く父さん。地獄のような学校という言葉が気になり2人に聞いてみる。
「地獄のような学校ってどういうこと?」
「あー……。それはだな――――」
父さんが言うには、実技で高得点、筆記でほとんど最低点をたたき出した父さんは通える学校が1つしかなくて、それがリアレント軍学校という名前の学校だったそうだ。その学校は名前の通り軍人を育成するための学校だったようで、夢見た学生生活とはかけ離れていた生活を送ったと語ってくれた。
「と、まぁ、こんな生活を送りたくなかったら、ちゃんと試験勉強はしなさいね」
母さんは笑いながら言うが、俺にとっては笑い事ではなかった。そんな生活を送っていたら死んでしまうと確信できた。
「あら、もうこんな時間ね。シェイド、プルスとミーヌをお風呂に入るように伝えてきて」
母さんはそう言うと、椅子から立ち上がって洗い物を始めた。気が付くと夕飯を食べ終えてからかなりの時間が経っており、プルスとミーヌは夕飯を食べ終えるとすぐに自分の部屋に戻っていた。
プルスとミーヌの部屋に行くと2人とも何やら遊んでいるようではあったが、風呂に入ることを伝えるとすぐにはーいと返事をして風呂の方へと歩いていく。いつもだったら遊んでいる最中だと風呂に入るのを渋るのだが、今日はやけに素直だなぁと不思議に思いつつも、母さんに頼まれたことは終わったので部屋に戻ることにした。
部屋に入ると相も変わらずベッドの上でリーシェが読書をしているのが見えた。ボーっと何をしようかなぁと考えていると、あることを思い出してリーシェの元に近づいた。
「そいえば……、リーシェは学校についてくるのか?」
「学校?あぁ、前に行ってたやつね。もちろん付いていくわよ」
「そっか」
リーシェと何か月もの間一緒に暮らしていたため、家族のように感じていた。だから、リーシェが付いてきてくれると言ってくれてどこか安心した。
「……勉強するか」
母さんに言われていたこともあり、今まで以上に勉強をしなきゃいけないなと気持ちを切り替えて、机に座って勉強をしている間に夜も更けてきたため眠りについた。
数日後、4人で勉強会をしようという話になって、俺とガレントとスレイアはレシリアの家に集まっていた。学力のレベルとしては、頭の良い方からレシリア、俺、スレイア、ガレントであったが、俺とスレイアの間にはかなりの差があった。そのため、レシリアはガレント、俺はスレイアを教えることになっていたのだが……。
「あー!!もう、わからねぇ!!」
急に叫んだガレントは机に突っ伏している。
「ガレント!!ちゃんと勉強しないとダメじゃない!!」
そのガレントを叱るレシリア。先程からガレントが勉強に飽きたと言ってさぼろうとするため、レシリアはずっと怒ってばかりだった。
「ねぇねぇ、これってどうやって解くの?」
「ん? あぁ、それは」
スレイアの質問に答える。俺はガレントとレシリアのやり取りにハラハラしていたのだが、スレイアは全く気にしていないようで、黙々と勉強を進めていた。
「スレイアもシェイドも勉強頑張ってるんだから、あんたもちゃんとやりなさいよ!!」
「あーあー、聞こえませーん」
「ガレント!!」
ギャーギャー騒ぐ2人をよそに黙々と勉強を進めるスレイアをすごいなと思いつつ、このままだとダメだなと思って2人を止めることにした。
「まぁまぁ、このままだとお互いのためにならないし、一回休憩しようか」
レシリアもガレントのためを思って勉強をするように言っているのは分かっているが、ガレントもこれ以上は勉強しても身につかないなと考えた。そのため、一旦休憩を挟むことを提案するとガレントはガバッと顔を上げる。
「おぉ!!さすがだぜシェイド!!休憩しよう休憩しよう」
「ちょっと、シェイド!!」
「俺も疲れちゃったし、1回休憩を挟んだ方がガレントもちゃんと勉強してくれるよ。なぁ? ガレント」
「おう、もちろんだぜ」
ガレントは勉強が始まってから1番の良い笑顔をしている。その様子を見たレシリアははぁ、とため息をついた。
「もう……、分かったわよ」
「ありがとう、レシリア」
集中していたスレイアには申し訳なかったが、俺自身も2人が気になって集中できていなかったため、勉強を中断することにした。
「そういえば、皆はもう行きたい学校とか決めたのか?」
休憩中、ガレントが不意に質問してきた。
「俺は魔法に関係する学校だったらどこでもいいかなぁ」
魔法に関係する学校はいくつかあるが、攻撃魔法や支援魔法それぞれに特化して学べる学校、どの魔法も満遍なく学べる学校とそれぞれ特徴があるため選びきれずにいた。
「シェイドは相変わらず魔法が好きだね」
「そう言うレシリアは?」
「私はもちろんクランスター医療魔術学校よ」
「クランスターかよ!!すげーな!!」
クランスター医療魔法学校は王国内でもトップクラスに難易度が高い学校で、医療魔術師を目指す人間はとりあえずここを目指すほど有名な学校だった。
「スレイアは決めたの?」
レシリアがそう尋ねてみると、スレイアは困ったように笑った。
「うーん、まだ決めてないんだよねぇ。試験を受けてから決めようかなって思ってるんだ」
「そっか。まぁ、ゆっくり決めればいいと思うよ」
俺であれば魔法、ガレントであれば剣術、レシリアであれば治療魔法や支援魔法みたいにある分野に強い興味があるからそれ関連の学校に進みたいと考えている。だが、スレイアは魔法も剣術も興味があるため選びきれないと以前言っていたのを思い出した。
「それじゃあ、ガレントは?」
「俺もシェイドみたいに剣術に関係する学校だったらどこでもいいけど、やっぱりギレザ剣術学校だな」
確かギレザ剣術学校は王国内でも1、2を争うほど王国の近衛騎士を輩出している学校だったと記憶している。
「それだったら、もっと勉強しないとね」
「うっ……」
レシリアの一言にガレントは嫌な顔をしたが、その意見には賛成だった。
今のガレントだと実技の方は大丈夫かもしれないけど、座学の方が厳しいだろうなぁ。
「それじゃあ、休憩もできたし勉強に戻ろうか」
「……そうだな」
この日から定期的に勉強会、スキル・魔法の練習会を試験の日まで続けること数ヶ月、ついに試験日を迎えた。




