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【3】新たな世界

――――――――――――――――――

名前:シェイド・シュヴァイス Lv.2


――――――――――――――――――


 鏡を持つ手に現れたその文字が見間違いかと思い、目を擦って再び自身の体を直接見てみるが、やはり同じように自身の名前が書かれた板状のものが見えた。


「……なんだ、これ?」


 右目を閉じて左目だけで見てみるといつも通りの景色であった。次に左目を閉じて右目だけで見てみるとやはり名前とLvといったものが見える。


(あの時の目の痛みが関係しているのかな……?)


 今まで見えていなかったものが見える。その説明し難い状況に得体のしれない恐怖を感じていると、


「シェイド?」


 母さんが料理を乗せたトレーを持ちながら不思議そうにこちらを見ている。


「かあさん……」


 俺は自分の身に起きた変化について説明すると、母さんは神妙な面持(おもも)ちになり、ちょっと待っててと言って部屋を出ていったかと思うと、父さんを連れて部屋に戻ってきた。


「シェイド、母さんにした説明を俺にもしてくれるか?」


「うん……」


 母さんにしたのと同じ説明をする。説明の最中、父さんは何も言わずに黙って聞いていた。


 説明が終わると父さんはそうかと呟いて、しばらく考え込んだ後、真っすぐ俺のことを見つめる。


「前にオッドアイが不吉なものだと言われているってことを教えたのを覚えているか?」


「うん……」


「これからシェイドは色んな人と関わるようになるだろう。その人たちの中にはオッドアイに対して(かたよ)った考えを持っている人もいるんだ」


 父さんの声はいつになく真剣なもので、昼間だというのにやけに部屋が薄暗く感じた。


「だから、本当に信頼できる人以外にはオッドアイのことと、見えているモノのことは隠すんだ」


 何でそんなことを気にしながら生きていかないといけないんだ!!と思ったが、父さんと母さんは俺のことを想って言ってくれているんだと分かっているから、何も言わず頷いた。


 俺が納得してくれたことに安心したようで、父さんは俺の頭を優しくなでた。その後、2人に眼のことを聞いてみたのだが、分からないとのことでLvといった表記も何を指しているのかは分からないとのことであった。


 父さんと母さんが部屋から出ていった後、怪我明けだったこともあり、静かに部屋で休んでいると、ガレントとスレイアがお見舞いに来たとのことで部屋に上がってもらったが、2人とも暗い顔をしている。


 部屋に入っても黙っている2人があまりにも暗い表情をしていたため、何て声を掛けようかと思いつつ、何も話せないでいると、


「「シェイド。ごめん!!」」


 2人は頭を深く下げて謝ってきた。


「ちょっとちょっと!!いいよ、あやまらなくて!!おれがにげるようにいったんだし……」


 突然のことで驚いたものの、慌てて2人に顔を上げるように頼んだ。


「でも……」


 2人とも本当に申し訳なさそうにしていて、逆にこっちが申し訳なく感じるほどであった。そのため、どうにかしようと思い、


「3人がぶじだったからもんだいなし!!」


 立ち上がって全身でガッツポーズをすると、2人ともキョトンとしていた。いつもはこんなことしないため、恥ずかしさのあまりどんどん体温が上がっていくのを感じる。2人はそんな俺の様子を見てニヘラと笑うと先程までの暗い雰囲気とは打って変わって、いつもの調子が戻ってくれたようであった。


 雰囲気も和んだところで、2人は村に戻った後のことを話してくれた。


「あのあとおやじにめちゃくちゃおこられた……」


 苦笑いしながらそう言うガレントの顔には(あざ)ができており、酷く叱られたのだと分かる。


「うちもだよ……」


 スレイアの目は赤く()れており、こっぴどく叱られて号泣したんだろうなぁ……とそんなことを考えながら、2人の話を聞いた。


 しばらく2人と話した後、聞くべきかどうか迷ったのだが、聞かないままでいるのも気持ち悪いなと思って、意を決して2人に聞いてみることにした。


「それで……レシリアはだいじょうぶだった?」


 レシリアの名前が出た瞬間、2人とも気まずそうな顔をする。


(あー……。聞かない方が良かったかもなぁ……)


 そんなことを考えていると、スレイアが言いにくそうに口を開いた。


「レシリアは……まだあえてないんだ……」


「それって、たいちょうがわるいとか?」


「ううん……。わからない」


 2人はレシリアが家から出てこなくて心配で家に行ってみるが、体調が悪いとレシリアの両親に言われて会えていないとのことだった。


「そっか……」


(俺のせいだよなぁ……。レシリアが気にすることじゃないんだけどなぁ……。どうしたらいいんだろう……)


 レシリアが閉じこもってしまったことに色々な思いが駆け巡り、どうしたものかと考えてはみるが、特に良いアイデアが思い浮かぶわけでもなく、スレイアとガレントと少し話しただけで2人は帰っていった。


 怪我の治療は終わっていたものの、大事を取って2日間安静にしていたわけだが、とうとう家から出る許可がでたため、朝食を食べ終わるとすぐに家を飛び出した。


 皆がいつも集まっている場所に行くと、ガレントが木の棒を振り回しながら遊んでいる。


「ガレント!!」


 ガレントに駆け寄ると、こちらに気が付いたガレントは木の枝をポイっと捨てて、両手を大きく振ってくる。


「シェイド!!もうだいじょうぶなのか?」


「うん、やっとそとにでられたよ……」


 そう言うと、ガレントはニカっと笑い肩を組んできたため、ガレントの肩に手を回すと、ガレントはより一層嬉しそうにハハハと笑った。


 ガレントと肩を組みながらメイジゴブリンを倒した時の話をしていると、


「おーい!!」


 後ろから声を掛けられて振り向くと、スレイアがこちらに向かって駆け寄って来ているところだった。


「シェイドそとにでれたんだね」


 スレイアはそう言うと、ガレントと同じように肩を組んできた。


「うん。やっとだよ」


 嬉しそうな2人を見ていると、こっちまで嬉しくなる。あの日皆を逃がして正解だったなと心の底から思えることができた。


「あとは……レシリアがいれば、ぜんいんしゅうごうなんだけどね……」


 スレイアは寂しそうにそう呟くと、ガレントもそうだな……とボソッと呟く。そんな2人の様子を見て、休んでいる間に考えていたことを実行しようと決めた。


「ねぇ、2人とも……」


 2人の顔を近くに寄せて小声でこれからしようと思っていることを話すと、


「「えぇぇぇ!?」」


 2人ともひどく驚いていたが、俺はニヤリと笑い、


「よっし!!いくぞ!!」


 目的の場所を目指して駆けだした。


「ちょ、ちょっと!!」


「だいじょうぶなのかよ!?」


 2人は戸惑いながらも付いてくる。


「だいじょうぶだよ!!」


 後ろをチラッと見てそう答えると、えぇ……とか本当に?とか不安そうな声が聞こえてきたが、そんなことは気にせず走り続ける。


(やっぱり皆揃ってた方が楽しいもんな)


 そんなことを考えながらしばらく走り続けていると、目的の場所にたどり着いた。

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