【28】発表会-1
「じゃあ、俺が1番だな!!」
じゃんけんの結果、ガレント、スレイア、レシリア、俺の順番になった。
「よーし、いくぜ」
やる気満々といった様子で岩の前へと歩いていくガレント。しかし、何度かやっているとはいえ、やはりみんなの前でスキルを披露するのは緊張するのか、ガレントの顔には緊張が見えた。
「おいおい、大丈夫かよガレント。顔が怖いぞー」
「緊張してるの~?」
3人でガレントを煽るような言葉を投げかける。
「うるさい!! 集中するから、静かにしてくれ!!」
声を掛けたのが功を奏したのか、ガレントの顔から緊張の色が少し消えていた。
「ふぅ……」
ガレントは大きく息を吐いて木剣を水平に構えたため、俺達も声を掛けるのをやめてガレントがスキルを発動させるのを待った。
「……」
俺達4人の間には静寂が訪れ、風が木の葉を揺らす音だけが聞こえる。
「……!!」
ガレントが勢いよく突き出した木剣は真っすぐ岩に向かっていく。木剣が岩にぶつかる瞬間、ドコッという低い音が響いて、木剣が岩に突き刺さった。
「……おぉ」
今までガレントのスキルを見てきたとはいえ、これほどまで速いスキルを見てたことがなかった俺は思わず声が漏れてしまった。
「……どうだった?」
ガレントはこちらに向き直してどこか不安そうに尋ねてくるが、
「すっっっっごく、早かったよ!!」
間髪入れずに返答したスレイアの様子を見てガレントはホッとしたようで顔には安堵が見えた。俺とレシリアもスレイアに続いて感想を言うと、ガレントはいつものように照れくさそうに笑っている。
「今のは何てスキルなの?」
「今のは、一点突きってスキルだぜ」
「しかも難易度2のやつな」
その言葉でガレントは慌てて俺の方を見た。
「おい!!」
「あ」
ポロっと口から洩れてしまったのに気が付いてハッとしたのも束の間、スレイアとレシリアがガレントに詰め寄る。
「……どういうこと?」
「あー!!約束破ったでしょ!!」
2人に詰め寄られているガレントに向かって手を合わせてごめんとジェスチャーをして、飛び火をくらわないように3人から少し離れた場所まで移動することにした。
「シェイドォォォォ!!」
後ろの方から何か聞こえてくるが、無視してその場を離れた。
「……でしょ!?」
「いや!!……」
「……じゃない!!」
離れた場所から3人を眺める。3人が何を話しているかはっきりとは聞こえないけど、恐らくスレイアとレシリアが詰め寄って、ガレントが言い訳をしているのだろう。
2人がガレントに詰め寄っているのには理由があって、難易度1のスキルか魔法を5つ習得したら難易度2に挑戦しようと約束していたのだが、それを破ったからガレントは詰め寄られているわけである。
「……長くなりそうだなぁ」
スレイアとレシリアの怒りが収まるまでボーっと3人のやり取りを見ていると、
「あ」
スレイアのアッパーが見事に決まって宙を舞うガレントであったが、休まる暇もなくレシリアに麻痺を掛けられている。地面の上に横たわりピクピクと動くガレントを見て、そろそろ終わりそうだと3人の元に戻った。
「あ、シェイド!!」
「どうせガレントが覚えたいって頼んだんだろうけど、ちゃんと止めてよね」
「ごめんごめん、今度2人の練習に長めに付き合うから許して」
2人ともそれなら……と許してくれたようでホッと一安心しつつ、ガレントに麻痺治療をかけてあげると、ガレントはノソッと立ち上がった。
「……シェイド」
ジーっと俺のことを見てくるガレントに
「本当にごめん。つい口が滑っちゃって……」
と謝るとはぁっとため息をつくガレント。
「……気を付けてくれよぉ」
スレイアからくらったアッパーがよっぽど効いたのか、顎をさすさすしながら力なさげにそう答えた。
「……それじゃあ、次はスレイアだね」
一刻も早く空気を変えたかったため、スレイアに話を振る。
「お、次はうちだったね。頑張るよ!!」
スレイアは意気揚々と俺達の前に立つ。スレイアはこういう時に切り替えが早くて助かる。
「よーし!!」
スレイアは片手を前に出して、手のひらを見つめながらブツブツと呪文を唱える。その顔はガレントとは打って変わってどこかにこやかで、まるでこの状況を楽しんでいるかのようであった。実際、発表会でいつもノリノリなのはスレイアで、ガレントとレシリアはどこか不安そうにしていることが多い。
しばらくして、スレイアの手のひらに魔力が溜まっていくのが見えた。うまくいっていることにホッとしつつ、スレイアが魔法を発動させるのを待った。
「……火球!!」
スレイアの掛け声とともにスレイアの手のひらに火の球が現れた。そう、スレイアは火球を発動させたのであった。
「おぉ!!魔法か!!」
「すごい!!」
ガレントもレシリアもすごく驚いている。それもそのはずで、スレイアは今まで魔法には一切手を付けていなかった。そのため、2人はまさかスレイアが魔法を練習してくるなんて思ってもみなかったのだろう。
「えへへ……」
スレイアは思ったよりも2人の反応が良かったからか、どこか照れくさそうに頭を掻いた。
実は何か月も前にスレイアが魔法を練習したいと俺に相談があり、俺が最初に覚えた火球を練習してみる流れとなった。だが、最初の頃は魔力の操作がうまくいかなかったため、スキルと並行して練習することになって、最近になってようやく魔法を使えるようになった。
いやー……。なんか……、泣けてくるなぁ……。
スレイアの悪戦苦闘していた日々を思い出すと、自分のことではないといえ、言葉に言い表せない感動が込み上げてきた。
「シェイドのおかげだよ~」
不意に名前を呼ばれて驚いたが、どうやら俺のことを褒めてくれていたようで、どこか照れくささを感じる。
「いやいや、スレイアが頑張ったからだよ。実際――――」
スレイアが悪戦苦闘していた日々の思い出を2人の前で話し始めると、
「ちょっと!!ちょっと!!やめてよ!!」
スレイアは慌てて俺が話すのを止めようとするも、ガレントとレシリアに体を拘束されて身動きが取れなくなったため、俺はスレイアに構わず引き続き話を続けた。
「――――それで、ようやく火球が使えるようになったんだよな?スレイア」
話し終わってスレイアの方を見るとうなだれていて表情は見えなかった。
「へー、すげーじゃん!!」
「頑張ったんだね!!」
ガレントとレシリアがニヤニヤしながらそう言うと、スレイアはバッと顔を上げる。
「もう!!満足したでしょ!!次はレシリアだよ!!」
そう言ったスレイアの顔は茹で蛸のように真っ赤だった。スレイアをからかうのに満足したのか、ガレントとレシリアは拘束を解く。
拘束を解くとふん!!っと言ってどこかに行こうとしたスレイア。俺達は慌ててスレイアを追いかけて謝りながらなんとかなだめると、どうやら許してくれたようで戻ってきてくれた。
スレイアは反応が良いからついついからかいたくなるんだよなぁ。
スレイアの機嫌も戻ったところで発表会を続けることにした。




