【27】噂話
ガレント達と一緒に魔法とスキルの練習をしていた時のこと、少し疲れたため気分転換で村の中を散歩をしている時のこと、村のおじさん2人が話している内容が耳に入ってきた。
「どうやら、姫さんが……ぞ」
「あの森って……か?」
「そうそう……」
「本当かぁ?何で……だよ」
「いやー、……が、通った……」
たまたま聞こえてきた内容は所々聞こえなかった部分はあるが、聞こえた部分から推測するにどうやら数日前に森で起きた出来事について話しているようであった。声がハッキリと聞こえる場所まで移動して、2人の会話を盗み聞きする。
「騎士がそんなコテンパンにやられたのか?あの森にはそんなに強い魔物はいないだろ?」
「だよなぁ……でも、襲われたのは確からしいぞ。騎士の何人かが重症で街で治療を受けたって聞いたぞ」
「騎士がそんなに弱いとは考えられないがなぁ……」
「それがな、どうも騎士は貴族の息子達だったって話なんだ」
「貴族の息子!? 王族を守るのがそんな奴らで大丈夫なのかよ……」
「一応、今回の護衛は演習だったらしいぞ」
「演習って言ってもなぁ……」
なるほどなぁ、あの騎士たちって貴族の息子だったんだ……。
あの森にいた騎士の中には俺と同じぐらいの年齢の騎士もいた。そのため、騎士って俺の想像していたよりもはるかに若い人達でもなれるんだなぁとあの時は思ったが、2人の話を聞く限り今回は異例なことだったらしい。
「だがよ、いくら貴族の息子といっても、あの森の魔物を倒せないぐらいなのか?」
「うーん。もしかしたら、魔物じゃなくて人間かもしれん」
「人間?そんな王族を襲うような人間がこの国に……」
「帝国の人間ならあり得るだろ?」
「……帝国かぁ」
帝国の言葉を聞いて、王国の隣に位置するヴァイガー帝国のことを言っているのだろうと分かった。しかし、何故帝国の仕業だと言えるんだろうと考えていると、2人が再び話し始めたため意識を2人の方に向ける。
「あ、そういえば街の奴が、もしかしたら王国の貴族の仕業じゃないかとも言ってたなぁ」
「貴族が?」
「あぁ、どうやら今回の護衛演習に参加しなかった貴族の誰かがやったんだじゃないかって話だぜ」
「かぁぁぁ!! 貴族ってのは恐ろしいもんだなぁ……」
その後もおじさん2人は誰が黒幕なのか、いったい何が目的なのかといった話をしていたのだが、次第に陰謀論へと話の方向が変わっていった。目的の話題から逸れてしまったが、こういった陰謀論的なのは聞いてる分には面白いので、引き続き2人の話を聞いていると肩をポンポンと叩かれた。
突然肩を叩かれたことに驚きながらも振り返ると、そこにはガレント達がいた。
「……どうした?」
「いや、それはこっちの台詞よ。全然戻ってこないから探しに来たのよ」
「あー、そうだったんだ。ごめん」
体感としてはそんなに時間が経った感覚は無かったが、3人に謝りつつ来た道を戻ることになった。
練習場所に戻っていると、
「……それで?何をしてたの?」
レシリアが尋ねてきたため言うかどうか迷ったが、おじさん達が話していたこと、自分がその現場に遭遇していたことを3人に伝える。
「えぇ!!あの話本当だったの!?」
「まじかよ!!すげーな!!」
3人とも酷く驚いた様子であった。
「え、皆この話知ってたの?」
まさか3人とも知っているとは思っていなかったため、驚くと3人とも不思議そうな顔をする。
「え、逆にシェイド知らなかったの?村の皆知ってると思ってたけど……」
「えぇ……」
現場にいた自分だけがこの情報を知らなかったことに何とも言えない気持ちになった。
「でも、噂は本当なの?」
「あー、それは……」
レシリアの言う噂とは黒幕の正体が帝国や王国の貴族というものだろうと思ったため、先程聞いた話と森で見たものを混ぜ合わせてみるが、ごちゃごちゃしたままで綺麗にまとまらない。
多分あの黒装束達が黒幕と繋がっているんだろうけど……。特に判断できるものなんてなかったしなぁ……。
「……黒幕がいるっている噂は多分本当だけど、その正体までは分からないかなぁ」
「やっぱり、黒幕がいたのね!!」
レシリアがすごい食いつきを見せる。そういえば、こういった噂話とか好きだったなと思っていると、レシリアだけではなくガレントとスレイアも興味があるみたいで次々と質問をしてくる。1つ1つの質問に答えられる範囲で答えているといつの間にか練習場所にたどり着いた。
「はい、もうこの話は終わりでーす」
「えー、もっと教えてよ」
「そうだそうだ!!秘密にするなんてずるいぞ!!」
3人はもっと質問がしたいようで不満を口々に述べていたが、これ以上聞かれても情報もほとんど出し尽くしたし、なにより面倒くさかった。
「ダメでーす。これ以上は質問を受け付けませーん」
ガレントとスレイアならまだしも、レシリアですらブーブーと文句を言っているが、ここで流されてはだめだと3人を無視する。
「はいはい、これ以上聞かれても面白い情報は無いから、発表会にしよう」
魔法とスキルの発表会をする方向に無理やり流れを変えた。3人は渋々といった様子であったが、それ以上追求はしてこなかった。
俺達の間で恒例となった習得したスキルと魔法の発表会は今回で8回目を迎えようとしていた。最初の頃は各々が1人で練習していたのだが、ガレントの提案で発表会という形を取って皆の前で披露するようになっていた。
「よーし、それじゃあ順番決めようぜ」
皆の前で発表するということで、1人で黙々と練習していた時よりもやる気を持って練習することができた。
「いつもみたいにじゃんけんでいい?最後がいい人とかいる?」
そんな発表会もあと何回できるんだろう。学校に入学するまでの間、試験や準備などで色々と忙しくなって、スキルや魔法の練習は中々できないと思う。
「うちは何番でもいいよー」
「俺も別に最初でも最後でもいいぜ」
「シェイドは?」
「俺も何番でもいいよ」
「それじゃあ、いつも通りじゃんけんね」
いつものように集まっていたこの3人とも離れ離れになると言われても、何か実感が湧かないというか……。もちろん寂しい気持ちはあるんだけど、別に落ち込むほど寂しいというわけではない……、不思議な感覚……。
「じゃんけんぽん!!」
学校に行くようになっても、またこの4人で集まることになるんだろうなぁという確信がある。まだ3人と離れてはないけど、きっと離れたとしても大丈夫だと思う。
どこか寂しい気持ちを抱きながら発表会が始まった。




