【22】幼馴染達への授業
一度家に指南書を取りに帰った後、ガレント達の元に戻った。
「それじゃあ、この本に載っていることと、自分の見えていることからスキルについて説明するね」
スキルについて3人に説明を始めると、3人とも興味津々といった様子で聞き入っていた。以前にも父さんから教えてもらったスキルに関する知識を3人に教えたこともあったが、その時よりもより詳しく説明する。
「―――てな感じかな」
所々で質問を受けたり、実際にスキルを見せたりして一通り説明が終わった。
「なるほどなぁ……」
「シェイドは物知りだねぇ」
一気に説明したため、ちゃんと理解できるように説明できていたかちょっと不安ではあったが、3人の表情を見ると理解はできているようだ。
「あー、あと、紹介したいのがいるんだ。ちょっと待ってて」
指南書を取りに帰ったときに一緒に連れてくればよかったと思いつつも大急ぎで家に戻る。読書をしていたリーシェを連れていこうとすると、リーシェは外に出ることを渋ったためそこをなんとかと説得する。時間がかかったものの外に連れ出すことに成功した俺は、リーシェとテラリィを3人の元に連れていって紹介した。
「召喚を説明した時に言っていたリーシェとテラリィだ」
3人は初めて見るリーシェとテラリィに驚いてどこかよそよそしかったものの、リーシェの物怖じしない性格とテラリィの礼儀正しい性格からすぐに打ち解けてくれたようであった。
その日からガレントには剣術のスキルを重点的に、スレイアには魔法と剣術、その他にも色々なスキルを満遍なく、レシリアには魔法を重点的に見てあげることになった。やはり、上手くいっているのかを途中途中で確認してあげることが大切なようで、3人はめきめきとスキルの経験値を伸ばしていった。
俺達は集まってスキルや魔法の練習をするようになっていたある日のこと、今日はガレントの剣術スキルを集中的に見てあげる日であった。
「よーし!!いくぞ!!」
あと少しで一刀両断が使えそうなほど経験値が貯まっていたガレントは、いつも以上に張り切って剣を振っている。以前注意したことを素直に実践して、一刀一刀集中して木剣を振り下ろしている。今日中にでも習得しそうだなぁと思いつつ、ガレントのことを見ていると、
「……ねぇねぇ、シェイド」
少し離れた場所で魔法の練習をしていたレシリアが、いつの間にか隣まで来ていたようで小声で話しかけてきた。
「ん?どうした?」
「森で魔物を狩っているって話だけど……」
ガレント達にはテラリィの食事と俺自身の経験を積むために森で魔物を狩っていることを伝えていた。もちろん俺の両親もそのことを知っており、魔法やスキルを使えるということで渋々ながらも了承してくれていた。
「うん。それがどうした?」
「私も連れていってもらえないかな……?」
「え」
スキルを試したくなって一緒に森に行きたいと言われるかなぁとは思っていた。しかし、ガレントかスレイアが言ってくるだろうなぁと予想していたのだが、まさかレシリアから言われるとは思ってもいなかった。
「ダメ……かな……?」
「うーん、そうだなぁ……」
連れていって欲しいと言われるとは予想していたが、こんなにも早く言われるとは思ってなかったため、ある懸念について必要があった。その懸念とは、3人を森に連れて行ったとして危なくないのかである。森に連れていって3人を危険にさらすようなことはしたくないため、3人を連れていって危なくないかを考えた。森に入って魔物と遭遇した場合のシミュレーションをしてみるが、俺がいるからまぁ大丈夫かなという結論に至った。
チラッと横目でレシリアのことを見ると、どこか不安そうにしている。
「……良いけど」
「本当!?」
食い気味のレシリアを制止する。
「でも、条件がある」
「条件?」
「うん、まずは、皆の練習が終わるのを待とっか。レシリアも練習を続けてて」
そう言うと、レシリアはじれったいといった様子であったが、練習に戻っていった。
しばらくお互いに練習を続けた後、そろそろいい時間になったため3人に声を掛けて集めた。
「えーと、俺が森に行って魔物を狩ってるって話を覚えていると思うんだけど、付いていきたい?」
まずは、先程聞いてきたレシリアを除いた2人に尋ねてみる。すると、
「連れていってくれるのか!?」
「もちろんじゃん!!」
ガレントとスレイアはその言葉を待っていたと言わんばかりに大きな声で返事をした。
「レシリアもだよな?」
「うん!!」
3人ともテンションが上がっていたが、そこで俺はあえてテンションを下げて、真剣な声で尋ねる。
「……皆俺が死にかけたことを忘れていないよな?」
その言葉を聞いた3人は固まってしまった。3人を責めるつもりはあの時から微塵もない。どちらかというと3人を無傷で村に戻せたことを誇らしく思っているのだが、これだけは言う必要があった。
「俺はあの時魔物と戦って死にかけた……。たまたま生きているけど、あの時死んでいてもおかしくなかったんだ」
実際、何とかゴブリンメイジに勝てたから良かったものの、下手したら俺は今この世にはいなかっただろうし、こうして3人と会えるのもあそこで最後だったかもしれない。
「それでも、皆は森に行きたいのか……?」
自分のことならまだしも、3人のこととなると真剣に考えなくてはならない。
「……」
3人とも何も答えられずにいる。俺の聞き方も悪かったかもなと思いつつも、3人の返答を待つ。
俺達の間には何とも言えない空気が流れる。仕方ないか……ともっと強くなってからにしようかと3人に伝えようとたところで、
「……ちょっと!!」
たまたま一緒に来ていたリーシェがガレント達の前に立った。
「何で、3人とも黙っているの?」
リーシェの言葉に何も返せないでいる3人。
「確かに、あんたたち3人は弱いかもしれないわよ」
ストレートな物言いのリーシェを止めようと、前にでようとしたところでテラリィに止められる。どうしたんだろうと思っている間にも、リーシェは言葉を続ける。
「でもね?うちのシェイドがいるじゃない!!」
ん?
「シェイドはね、他の人間の子供と比べると、読書中の私を無理やり外に連れ出すようなバケモノだけど」
おい。
「でもね、強さもバケモノ級なのよ。何かあったら、シェイドが何とかしてくれるわ。それにね―――」
その後も貶しているのか、褒めているのか分からん言葉を次から次に発するリーシェ。
「だからあんたたちはシェイドみたいになんでも自分一人でやらなくてもいいのよ?何かあればシェイドが助けてくれるのに、何をそんなに気にすることがあるのよ」
そう言うと、リーシェはお得意の腰に手を当てて、胸を張るポーズをする。
「ほら、私からも説得してあげるから、私を頼ってもいいのよ?」
まくしたてるかのように喋り続けるリーシェの勢いに3人はポカーンとした様子である。
俺は一通り喋り終わったリーシェに近づき、
「この……何がバケモノだ!!」
リーシェの頬っぺたを指で挟む。
「にゃ、にゃによ!!ほんとうのことじゃにゃい!!」
ワチャワチャとリーシェと言い合っていると、突然3人の方から笑い声がしたためそちらの方を見ると、3人とも腹を抱えて笑っている。
「ヒィー、ヒィー」
「アハハハ!!」
「ちょ、ちょと、まって……ククク」
笑い過ぎて3人とも苦しそうにしている。急にどうしたのかと思っていると、一通り笑った3人は俺の方を見る。
「ふぅ……、シェイド。やっぱり俺達も連れていってくれよ」
どんな心の変化があったのか、3人とも晴れやかな顔で連れていって欲しいと頼んできた。
「死ぬかもしれないけど、いいの……?」
「うん!!なるべく自分達でも戦えるように何とかする。でも、いざとなったら助けてね?シェイド」
3人が俺を頼ってくれるのは悪くはないものだ。それにこれ以上、追求するのも無粋だな。
「……分かったよ。でも!!3人とも自分の身は自分で守れるぐらい強くなってね?」
「「「やったー!!」」」
こうして、俺達4人は森へ魔物を狩りに行くようになった。




