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【20】14歳の誕生日

 リーシェやテラリィを召喚してから、1年近くが経とうとしていた。


「今日は……あいつにしようか」


 少し先にイノシシを大きくしたような魔物、ビッグボアを見つけてテラリィに声を掛ける。


「また、あいつなの?このままだとテラリィがおデブちゃんになっちゃうわよ」


「そ、そのようなことは……」


 恥ずかしそうにそう言うテラリィの身体は、最初に出会った時ほどではないが、少しだけ大きくなっており、プルスやミーヌであれば背中に乗れるほどになっていた。


「シェイドも最近太ってきたみたいだし?」


 いつもの憎まれ口をたたくリーシェの頬っぺたを人差し指と親指で挟む。


「それは、お前だろリーシェ」


「にゃ!!しょんなことにゃいでしょ!!」


 指をバシバシ叩いてくるリーシェであったが、痛くもかゆくもないので、指でリーシェの頬っぺたをグニグニしていると、


「あのー、そこらへんで……」


 テラリィが仲裁に入ってきたので指を離すと、リーシェは頬っぺたを押さえながら、こちらをキッと睨んでくる。


「まったく!!何すんのよ!!」


「はいはい」


 頭をポカポカと叩いてくるリーシェを軽くあしらいながら、ビッグボアの方を向き直す。1年も経つとリーシェやテラリィとの関係も変わっていた。最初の頃は、どこか距離をとっていたものの、次第に距離も縮まって、お互いに憎まれ口をたたきながら会話するほどにまでになっている。


「何で、今日はシェイド1人なのよ」


「ん?あー、予定があるみたいでね。一緒に来れないって」


「ふーん。仲間外れにされたのね」


「まったく、こいつは……」


 リーシェの頭を指でグリグリする。


「いたたた!!謝るから、離しなさーい!!」


 ガレント達と魔物狩りをするようになったのだが、それには色々なことがあってそんなことになっていた。


 そう言えば、あの日からもうそんなに立つんだなぁ……。

 

 ―――――

 ――――

 ―――


 14歳の誕生日の日のこと。この日は、父さんも家に帰ってきていた。


「いやー、もう14歳か……。時が経つのは早いなぁ……」


 前に帰ってきたとき以来の帰宅ではあったが、久しぶりに会った父さんはどこか疲れているように感じた。


「おとうさん!!もうすぐかえってこれるんでしょ?」


 父さんが街へ仕事に行ってから、後数ヶ月ほどで1年が経とうとしていた。


「あー、それなんだけどな……」


 どうやら順調にいっていた仕事であったが、トラブルが立て続けに起こり、計画の見直しをしなくてはいけないことになったのだという。そのため、計画を新たに立てている間は家に居れるが、その後はまた、仕事に行かなくてはならないとプルスとミーヌに説明した。


「そうなんだぁ……」


 プルスとミーヌはひどく落ち込んで、うつむいてしまった。父さんも気まずそうな表情をして、2人に何も言えないでいる。


 まぁ、あと少しで一緒にいられると思っていたら、また、離れて暮らすことになってしまったのだから、落ち込むのも無理はないか。それに俺と違って、物心ついてから父さんと暮らしていた年数はわずか1、2年だから、余計に寂しく感じるんだろうなぁ。


 俺は椅子から立ち上がると、落ち込む2人の間にしゃがんで、肩に手をまわした。


「でも、兄ちゃんと母さんがいるし、父さんだってしばらくは一緒に暮らせるんだ!!それに、ガレントやスレイア、レシリアもいるだろ?」


 そう言って2人の頭を撫でる。


「1回我慢できたんだ!!もう1回我慢できるよな?」


 2人の顔を見ると、瞳に溜まっていた涙を拭って顔を上げた。


「「うん!!」」


 2人揃えて元気よく返事をする。いとおしい気持ちが爆発して、2人を抱きしめたくなったが何とかこらえて、


「よーし!!2人とも偉いぞー!!」


 頭をワシャワシャと撫でるだけにしておいた。


 2人は元気いっぱいとまではいかなくとも、ある程度元気になってくれたので席に戻る。すると、父さんがこっちを見て、


「シェイド……。立派なお兄ちゃんになったな!!」


 親指を立ててニッカっと笑いかけてきたので、照れくさく感じながらも、親指を立て返した。


 その後、なんてことない会話をしていると、母さんが料理を運んできた。俺の誕生日ということもあり、いつもよりも豪勢な料理が食卓に並ぶ。


「わぁ!!すごいね!!」


 プルスとミーヌも料理を目の前して目を輝かせている。


「よし!!それじゃあ、シェイド!!誕生日おめでとう!!」


「「「おめでとう!!」」」


「ありがとう!!」


 俺のことを祝う言葉から始まった食事は、いつもと違う感覚であった。


 夕飯も食べ終えたといったところで、


「そういえば、来年からシェイドは学校だなぁ」


 父さんの言葉に慌ててプルスとミーヌの方を見るが、気持ちを切り替えたのか、聞こえてなかったのか、気にしていないようであった。


 安心した俺は、父さんの方に向き直す。


「学校かぁ……、想像つかないなぁ……。父さん頃はどうだったの?」


「俺か?俺はそうだなぁ……」


 父さんは、剣術の学校に行ったのは良かったものの、座学が苦手で実技の方で何とかカバーしていたこと。友達と夜中にコッソリ街に行こうとしたら、先生に見つかって死ぬほど走らされたことなど、学生時代の色々な話を楽しそうにしてくれた。


「あとは……そうだなぁ……。あ、母さんはすっごいモテたんだぞ」


 父さんはニヤニヤとしながら母さんの方を見る。


「ちょっと、何言ってんのよ。お父さんの方がモテてたじゃない」


「いやいや、母さんの方がモテてたよ」


 そんな感じでどっちがモテていたのかという話から、お酒が入っていることも関係しているのか、段々話は脱線していき、お互いにどんなところがカッコイイ・カワイイのかといった話になって、しまいにはイチャイチャし始めた。


 これは……離れたほうがいいなと思った俺は、プルスとミーヌを連れてダイニングから出ると、2人の部屋に連れていった後、自分も自室へと戻った。


「お帰り~」


 部屋に戻ると、リーシェがベッドの上で本を読みながらゴロゴロとしていた。テラリィは俺と契約しているため、用が無いときなどは俺の体の中に戻っているのだが、リーシェは契約していないため、このように俺の部屋で暮らしていた。


「魔力食べるか?」


 そう言って右手を出すと、


「んー。切りの良い所まで読んだら食べる」


 読書を続けるリーシェ。最近は読書に夢中で暇さえあれば何かしら小説を読んでおり、俺とテラリィが森に行っているのに、部屋にこもって読書をしている日もあった。ただ、読書仲間が増えたことは素直に嬉しかった。


「そっか」


 じゃあ、魔法の練習でもするか、と魔導書を取り出してページをめくる。練習の甲斐もあり、使える魔法の種類も増えてきて、最近では中級の魔法にも手を付けていた。


 どれほどの時間が経ったのだろうか、魔法の練習にも疲れて大きく伸びをしながらリーシェの方を見ると、どうやら読書したまま眠ってしまったようだ。リーシェを本の上からどけると、リーシェ用に作ったベッドまで運んで布団を掛けた。


 リーシェの寝顔を見ていると、眠くなってきた。


「喉が渇いたな……」


 寝る前に水を飲もうと考え、部屋を出てダイニングに向かうと父さんと母さんがいた。


「お、シェイド」


「あら、どうしたの?もう、夜も遅いし早く寝なさいね」


 父さんと母さんと一緒に話せるのは、学校に通うようになってからはもうないかもしれない。そのため俺は、いつか話そうと考えていた自分の目、スキルや魔法について話すことにした。

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