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【16】召喚スキル

 ステータスボードと名付けた後、夕飯を食べたり、弟達とお風呂に入ったり、母さんの手伝いをしたりと色々やることをやっていたら、もう寝る時間になっていた。


「どうしようかなぁ」


 顔を横に向けた状態でベッドにうつ伏せで寝ころんでいた俺は、ボーっと視線の先にある指南書を眺めていた。


「うーん……」


 指南書を読みたいけど、日中行っていた素振りのこともありもう動きたくない。心は読みたいと言っているのに、身体は読みたくないと言っており、自分の中で相反する欲望が相手に負けじと自分の主張を通そうとする。


 何かをするわけでもなく、ただボーっとしているうちに気が付いたら眠ってしまっていたようで、気が付いたら窓から朝日が差し込んでいた。どうやら戦いは身体が勝ったようだ。


 ベッドから起き上がり、ダイニングの方へ向かうと母さんの姿は無く、机の上に一枚の紙と食事が置かれていた。紙を手に取り読むと、朝から用事があるから、机の上に置いてある朝ごはんを食べるようにと書かれており、確か昨日の夜そんなこと言っていたような……と思いながらも椅子に座って朝食を口にする。


 焼いた卵と丸いパンを口に運びながら、静かに朝食をとる。


(この後どうしようかなぁ……)


 今日は幼馴染3人とも予定があるから遊べないと言われていたため、ボーっと食事を取りながら今後の予定を立てる。


(一刀両断を鍛えようかなぁ、新しい魔法に挑戦するのもいいなぁ。それとも、召喚に手を付けようかなぁ)


 そんなことを考えながらも朝食を食べ終え、自分の部屋に戻って椅子に座った。


「うーん……」


 どの選択肢も捨てがたいものであったため、朝食を食べ終えても中々決めることができず、机の上に木の棒、魔導書、スキル指南書を並べて腕を組みながら(うな)っていた。


 木の棒に手を伸ばせば、いや、魔法の練習もしたい。魔導書に手を伸ばせば、でも、召喚スキルも気になる。かといって指南書に手を伸ばせば、剣術のスキルも鍛えたいよなぁ。といった感じで、手を伸ばしては引っ込めるというのを繰り返していた。


「……しかたない」


 そう呟いた俺は、人差し指を出し、木の棒を指さす。


「ど・れ・に・し・よ・う・か・な……」


 この方法は自分で選んだ気がしなくてあまり好きではなかったのだが、いつまでも悩んでいては仕方ないと思い、この方法に頼ることにした。


「……に!!」


 最後に指をさしたのは指南書であった。


「よし!!今日は召喚スキルを練習しよう!!」


 心の中でオー!!と答えて指南書を手に取り、召喚スキルについて書かれているページを開いた。前日はステータスボードに意識が向いてしまい、途中で読むのを止めてしまったのとザッと読んだだけだったので、復習もかねてもう一度ページの最初から読んでいく。


「なるほどなるほど……」


 どうやら、召喚スキルは習得しやすさは星1つでかなり習得しにくいスキルで、ランクは?とされている。というのも、召喚されるモノがバラバラであるため、ランクを付けることができない。ランクが星5のモノを召喚することもあれば、星1どころかマイナスを付けてもよいほど、召喚者にとって害しかないモノを召喚する可能性があるとのことであった。


「マイナスか……」


 召喚されるモノが自分にとって有益なモノだけだと思っていた俺は、害を与えるモノを召喚するという記述を見てページを読むのを止めた。


「どうしたもんかなぁ……」


 先ほどまでやる気満々で習得してやるぞ!!と意気込んでいたのだが、自分が特性を貰えなかったということもあり、このまま習得してもいいものかと悩む。


 その後も、ページを読み進めていったが、先程の記述以降は召喚されるモノに関する記述は無かった。召喚されるモノが悪いモノだったらどうしようと目をつぶり考えたが、一向に良いアイデアは浮かばない。


「……やるだけやってみるか」


 そう言うと俺は立ち上がる。どのみち習得しにくいスキルだから数回やっただけでは覚えられないだろうし、練習しながら考えればいいか、と指南書に書かれていた方法を試してみることにした。


 指南書に載っているやり方をおさらいして、覚えていない部分が無いか確認した後で目をつぶる。

 

「えーと、まずは……、召喚したいモノをイメージする……」


 召喚したいモノかぁ……。


 特に召喚したいモノが思い浮かばなかったが、ふとあるモノ思い出した。


 そういえば、あの魔導書を手に入れたときの光の球……。


 魔導書までの道を案内してくれたフヨフヨと浮かぶ光の球を思い出した俺は、ちょうどイメージしやすいし、特に思いつかなかったため、フヨフヨと空中を浮かんで小さくて丸い光をイメージする。


「次は、生命力または魔力を込めると……」


 生命力の込め方は分からなかったため、魔法の練習の時と同じように魔力を光の球に込めていく。目をつぶっているため確認はできないが、上手く魔力が込められている感覚がする。


 もういいかなと思うところまで魔力を込める。ここまでは上手くいっている気がするが、ここからが難しいと指南書に書かれていた。


「ふぅ……」


 俺は大きく息を吐いて心を落ち着かせると、指南書に書かれていた呪文を唱えていく。呪文を唱えていると段々魔力が安定しなくなり、集めた魔力が空中に逃げようと暴れた。しかし、このことも指南書に書かれていたため特段驚くこともなく、集中して光の球から魔力が漏れ出さないように何とか対処する。


 呪文を唱えることにも、魔力もコントロールすることにも集中することで、頭がパンクしそうになりながらも何とか呪文を唱え終わる。ホッとして、目を開けようとした瞬間、眩い光が部屋中を照らす。あまりの眩しさに俺は目をギュッとつぶる。


 数分間光は収まらなかったが、しばらくすると(まぶた)を通しても感じる眩しさが消えたため、恐る恐る目を開けるとそこには俺の体よりも大きな体で、頭に白くて小さな角を生やした狼がそこにはいた。


「……」


 まさか1回目の挑戦で成功するとは思っていなかった俺の頭の中には、この狼は良いモノなのか悪いモノなのか、強いのか弱いのか、狼っぽいけど魔物なのかといった疑問が次々と浮かび、何も言葉を発せずにただただ茫然(ぼうぜん)と立っていると、


「あなたが召喚主か……?」


 と狼が語り掛けてきたため、ハッと我に返る。


「あ、あぁ、そうだ」


「なるほど……」


 狼は俺のことを値踏みでもするかのようにつま先から膝、胸と視線を上げていって、顔の所で止まった。狼は俺の顔をジーっと見て、ハッとしたかと思うと、


「リーシェ様!!リーシェ様!!」


 誰かの名前を連呼している。


 いったい何だ?と不思議に思いしばらく眺めていると、


「もー!!いったい何!?」


 と何処からともなく声がして辺りを見渡すが、誰もいない。その後、狼と姿の見えない何者かが会話しているが、どうやらその声は狼の方から聞こえる。


「いったい誰の顔を見ればいいのよ!!」


 その言葉と共に狼の頭の上に現れたのは、拳ほどの大きさの女の子だった。どうやら、角だと思っていたものは、その女の子の足だったようだ。


 女の子はむすっとした顔でしばらく俺の顔を見た後、


「あー!!あんたは!!」


 目を大きく開き、ビックリした様子で俺のことを指さす。どうやら、この女の子は俺のことを知っているらしい。

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