【13】ガレントの変化
魔導書に載っている初級魔法のほとんどを覚えたことで魔法熱も落ち着いてきて、幼馴染や弟達と一緒に遊ぶ時間が戻りつつあった。今日も幼馴染と遊ぶため、いつもの集合場所に向かっている。ちなみに、プルス達は父さんと遊ぶようで一緒には来なかった。
「いつか教えると言ったけど、どうしようかなぁ……」
向かっている途中、遊べる時間が減ると告げた時に、上手くいったら教えると約束していたことについてどうしたものかと悩んでいた。3人とも深く聞いてはこないが、急に遊ぶ時間が減ったのだから気にはなっていると思う。それに、幼馴染には教えてもいいかもと思いつつも、それだったら家族にも教えないといけないよなぁ、という後ろめたさに似た感情もあり、中々伝えられずにいた。
そんなことを考えながら歩いていると、ガレントとスレイアが見えたため、声を掛けようかと思ったが、どうやら木の棒で打ち合いをしているようだ。邪魔しちゃ悪いなと思って、静かに近寄り、2人の邪魔にならなさそうな場所に腰を下ろして2人の戦いを観戦することにした。
「はぁぁ!!」
振り下ろされたスレイアの木の棒は空を切り、その隙をついてガレントがスレイアの腕を狙うも、スレイアは転がり込んでそれを避ける。両者一歩も引かぬ戦いであったが、次第にガレントが押し始めて、スレイアが剣を弾き飛ばされたところで決着となった。
(ガレント強くなったよなぁ……)
ガレントは木の棒とはいえ、日を増すごとに振るスピード、鋭さが増していっているのが素人目からでも分かるほどであった。
戦いがひと段落したため2人に声を掛けると、こちらに全く気が付いていなかったようで驚いていた。しかし、声の主が俺だと分かると、ガレントが俺に木の棒を差し出してくる。ガレントの意図が分かった俺は木の棒を受け取り、レシリアが来るまで2人と一緒に打ち合いをすることになった。
3人でしばらく打ち合っていると、レシリアが来たためこの後どうするかという話になったのだが、ガレントが何やらソワソワしている。
「……ガレントどうしたの?」
どうやらレシリアもガレントの様子がいつもと違うことに気が付いていたようで、そう尋ねるとその言葉を待っていたと言わんばかりに立ち上がったガレントは、近くにある木の方まで走っていった。
「……何やってるんだ?」
「……さぁ?」
ガレントの急な行動を不思議に思いながらも待っていると、ガレントは木の根元から何かを取り出した後、何かを持ってこちらに戻ってくる。近寄ってくるガレントの手には木剣が握られていた。
「ジャジャーン!!」
木剣を嬉しそうに俺達に見せるガレントであったが、
「それは……何?」
特に興味なさげなレシリアの言葉にガレントは目を見開いた。
「木剣だよ!?」
レシリアが聞きたいのは多分そういうことじゃないと思うのだが、ガレントがあまりにも驚いた様子でそう答えたため思わず笑ってしまいそうになる。
「いや、それは分かるけど……。その木剣がどうしたのよ」
レシリアがそう言うと、ガレントはフッフッフと意味ありげに笑い、
「あ、やっぱり気になっちゃう?」
勿体ぶりにながら、俺達のことをチラチラと見てきたため、レシリアはため息をつく。
「……はいはい、気になるからそれが何なのか教えて」
レシリアがそう言うも、ガレントは木剣を片手に持って腕を組みながら、
「んー。どうしようかなぁ……」
チラチラと俺達のことを見ながらそう言った。
(あ、まずい)
そう思ったのも束の間、
「そんなもったいぶらずに早く教えなさいよ!!」
レシリアがものすごい剣幕でガレントに怒鳴りつける。
(あちゃー……遅かったか……)
「はい……。これは、親父が買ってくれた木剣です」
シュンっとしたガレントがすぐに答えた。
「あー!!やっと買ってもらえたんだね!!」
レシリアとは対照的な明るい口調で尋ねるスレイアの言葉に、ガレントは再び元気を取り戻した。
「……!!そうなんだよ!!何回も説得してやっと買って貰えたんだ!!」
心底大切なものを扱うように頬ずりをするガレント。以前から欲しい欲しいと言っていたため、ようやく買って貰えたのが嬉しかったんだなと、微笑ましいものを感じた。
「ちょっと見ててくれよ」
そう言うと、ガレントは俺達から少し距離をとり、木剣を上段に構える。目をつぶり、フーっと一呼吸おいて、目を開くや否や素早く木剣を振り下ろした。
木の棒の鈍い音とは違い、空気が鋭く切り裂かれる細い音が聞こえた。そして、辺りは静寂に包まれる。
「……どうだった?」
木剣を振り下ろす姿に心を奪われていた俺は、ガレントの言葉でハッと我に返る。
「すごかったよ……!!」
スレイアも同じだったようで、その言葉には驚きや感動といった感情が込められていた。
「いやー、親父にも見せたんだけどさ、剣の振りが良くなったって言われたんだよ」
そう言いながら頭を掻くガレントは、口元がにやけている。
「木剣になるとそんなに違うんだね」
木剣を振るから見ててくれとガレントに言われた時、木の棒と何か変わるのか?と思っていたのだが、実際に比べてみると全く違った。ただの木の棒と剣として加工された木の棒とでは、こんなにも違うのかと感動すら覚える。
「そうなんだよ!!親父がスキルでも覚えたんじゃないかって言ってたんだけど、スキルって何なのか知ってるか?」
ガレントの言葉にレシリアもスレイアも首をかしげて分からないといった様子であった。
「親父に聞いても詳しくは知らないから、他の奴に聞けって言われてさ」
大した知識を知っているわけではないが、一応手を上げる。
「あー、スキルなら何となくなら知っているよ」
「本当か!?教えてくれ!!」
「うん。そんなに知っているわけじゃないけど……」
父さんに教えてもらったスキルに関する知識を3人に説明すると、3人ともスキルに興味を持ったようで、すごい質問攻めにあった。ただ、父さんから聞きかじった程度の知識であったためほとんど答えられなかったが、できる範囲で答えていく。
「へー、そんなのがあるんだ……!!」
一通り説明と質問返しが終わると、3人とも目をキラキラとさせている。ガレントやスレイアはまだしも、レシリアもスキルについて興味を持つなんて意外だなと思ったが、3人の様子を見ていると、レシリアが1番興味を持っているのかもしれない。
「じゃあさ!!俺もスキルを身に着けたってこと!?」
「うーん、断定はできないかな。スキルを見たことがないし、ガレントのそれがスキルなのか分からないから」
「だよなぁ……。くぅぅ……!!早くスキルを鑑定してもらいてぇぇぇ!!」
先程のガレントの縦切りは、今まで見てきたガレントの縦切りとは明らかに違うものを感じたため、スキルなんじゃないかと思った。しかし、下手なことを言ってガレントを傷つないためにも断言はしなかった。
(父さんに頼んだ本に載っているといいけどなぁ)
ガレントの件のこともあり、より一層父さんから本が送られてくるのが待ち遠しくなった。
「まぁ、俺の剣の話はここまでにしておいて、今日は何する?」
切り替え早!!と思ったが、話はこの後の予定のことになった。
「そうねぇ……」
ガレントの言葉で3人の注意がこっちに向いていなかったため、コッソリ右目でガレントのことを見てみると、いつもの名前やLv、MPの他に、一刀両断14/100の文字が見えた。




