【12】久しぶりの帰宅
「2人とも母さんの言うこと聞いて、いい子に過ごしていたか?」
「もちろんだよ!!」
「うん……!!」
「そうか、そうか!!」
街での仕事がひと段落したとのことで、久しぶりに父さんが帰ってきていた。プルスとミーヌは久しぶりに父さんと会えたとのことで、いつも以上に父さんにべったりである。
「今回はどの位いられるの?」
「そうだなぁ……。移動のことも考えると、3日ぐらいかな」
「あら、意外といられるのね」
「あぁ、順調に進んでいてね。この感じだと予定よりも早く終わりそうだよ」
母さんはいつもと変わらない様子で夕食の準備をしている。そんな母さんだが、前日の夜、トイレに行こうとダイニングを横切ったとき、ウキウキで何を作ろうかなぁと鼻歌交じりで洗い物をしていたのを見たのは内緒だ。
「シェイドも元気だったか?」
「うん!!」
「そうか、それならいいんだ」
父さんはニッコリと笑うが、受特の儀の後、すぐに家を離れてしまったことを気にしていたようで、定期的に家に届く手紙の中で俺のことを心配しているようなことを毎回のように書いていた。と母さんからこっそり教えてもらっていた。
夕飯ができるまでの間、父さんが街の話をしてくれた。
「そういえば、街で面白いスキルを持ってる人に会ったんだ」
その父さんの言葉にプルスとミーヌが首をかしげる。
「スキルってなに?」
「あー、そうか、2人は知らないか。シェイドも知らないか?」
「何となくは知っているけど……」
スキルについてはその存在を知っているだけで、どのようなものがあるのか、どうすれば獲得できるのかといったことは知らなかった。
「それじゃあ、簡単に説明しようかな……」
父さんの説明によると、スキルには、剣術や魔術などの戦闘系のスキルもあれば、物作りや農業など生産系のスキルもあるとのことだ。その数は数えきれないほどあるが、覚え方まで確認されているものはごく一部なのだという。また、スキルを確認するには特別な機械か能力が必要なのだが、能力に関しては、スキルなのか特性なのか分かっていないとのことだった。
「あとは、そうだなぁ……」
父さんは思い出したかのようにハッとしたかと思うと、俺の方をチラッと見て、あー、と少し何かを考えた後に、
「スキルはそれぞれランクで分けられているんだが、魔術スキルはLvといったもので表されて、強い魔法を覚えるほどその属性の魔法Lvの数字が上がっていくんだ。それに対して、他のスキルには熟練度っていうものがあるんだけど、その熟練度はF~Aの6つに分けられて、スキルを鍛えれば鍛えるほどランクはAに近づいてスキルの威力が上がるんだよ」
「へー!!おとうさんはどんなスキルがつかえるの?」
「お父さんはなぁ……」
父さんとプルス、ミーヌはスキルに関して楽しそうに話していたが、俺はそれどころではなかった。
(もしかして……俺が見えているのって、スキルなのか……?)
今まで見えていた火炎魔法Lv.1というのが、もしかしてスキルなんじゃないかなぁと思ってはいたが、まさか本当にスキルのことを表しているとは……。
「おとうさんは、どうやってスキルをおぼえたの?」
「うーん、そうだなぁ。気が付いたら、覚えていたって感じだけど、ひたすら同じことを繰り返したかなぁ……」
「父さん!!」
話している3人の間に割って入るように、大きな声で呼びかけると、
「おぉ……、どうした?」
父さんは驚いた様子で俺の方を見る。
「……スキルに関する本を買って欲しい」
真っすぐ父さんのことを見つめると、父さんは腕を組んで考え込んでいる。厳しいかもと思いながらも、父さんの返事を待つ。
「うーん、そうだなぁ……。絶対に買えるとは約束できないけど、シェイドも頑張ってるみたいだし、街に戻ったときに探してみるよ」
父さんは少し微笑んでそう答えた。
「本当に!?」
「あぁ、良いお兄ちゃんをしてくれているみたいだしな」
そう言って父さんは俺の頭をワシャワシャと撫でる。
「スキルに関する本って言ってたけど、どんな本が欲しいんだ?」
「えっと、スキルの種類と覚え方についてたくさん載ってる本がいいんだけど……あるかな?」
そう言うと、父さんは再び考え込んで、
「そうだなぁ……あるかないかは分からないけど、まぁ、探してみるさ」
「ありがとう、父さん」
クシャッと笑う父さんは何故か嬉しそうにしている。何で嬉しそうなのかは分からなかったが、この笑顔久しぶりに見たなぁと思っていると、夕飯の準備を終えた母さんが、料理を机の上に並べ始める。
夕飯の時は、どんな仕事をしているのか、どんな風に過ごしていたのかといった会話をしつつ料理を食べ、久しぶりの5人での食事は賑やかなものであった。
夕飯を食べ終えた後、父さんと弟達は一緒に風呂に入りに行ったため、俺は母さんの食器洗いを手伝うことにした。
「お父さん疲れてそうだったわね」
唐突に母さんがそう言った。
「え、そうは見えなかったけど……。どうして、分かったの?」
疲れている様子など微塵も感じなかった俺は、不思議に思いながら母さんに尋ねると、
「フフ、そりゃあ、何年も一緒にいるんだもの、それぐらい分かるわよ」
照れくさそうにそう答える母さん。
「へー、さすがだね」
父さんと母さんは幼馴染だったこともあり、小さいときからほとんど一緒にいたと昔聞いたことがあった。それだけ一緒にいると、少しの変化も気が付けるもんなんだなぁと思いながら皿を洗っていると、風呂から出てきたプルスとミーヌがはしゃぎながらダイニングの方にやってくる足音が聞こえた。
「おかあさん!!おみずちょうだい!!」
後ろを振り返ると、プルスとミーヌが立っていたのだが、ポタッポタッと髪から水がしたたり落ちている。
「もう!!ちゃんと拭かないとダメじゃない」
そう言うと、母さんはプルスの首に巻いてあるタオルを手に取り、プルスの髪をワシャワシャと拭いていく。
父さんのこういうところが雑なの変わってないなぁっと思いながら食器洗いに戻ろうとすると、服を引っ張られた感覚がして再び後ろを向くと、引っ張っていたのはミーヌであった。
「ん?どうした?」
ミーヌにそう尋ねてみると、ミーヌはもじもじとしながら、どこか恥ずかしそうに、
「おにぃちゃんかみふいて……」
消え入りそうな声で頼んできた。
「まったく、ミーヌ甘えん坊さんだなぁ」
そう言ってタオルを手にしてミーヌの髪を拭いていくと、ミーヌは二へラと笑いながら、嬉しそうにしている。
しばらくすると、父さんが風呂から上がってきたが、上がるや否や拭き方が雑だと母さんに注意されて、父さんが笑いながら謝っていた。懐かしいなぁと思いながらそんな光景を見ていると、ふと、後どれくらい家族と一緒に暮らせるんだろうかとどこか寂しい気持ちになった。




