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よふけ たそがれ さざなみ  作者: 平家八草
4/4

ヨタサ

結論から書こう。ヨタサの願いが叶えば地球は滅ぶ。


誰かと交わって新たな存在を生み出さんと願う事を愛と言うならば、

ヨタサのやろうとしている事は愛であるとしか言いようがない。

地球にある全てとヨタサの種族全てを飲み込み、ありとあらゆる意思と生命と物質とで溶け合い、一つの蛹の殻、別の新たな高次元存在を生み出す為の胎液に創り変える。

それはヨタサにとっての進化であり愛の結晶でもあるのだ。

ヨタサは備後耀を愛しているからこそ彼女の星である地球を選んだ。

ヨタサは喜んで彼女とその種族を備後耀に捧げるし、備後耀と地球の全てが新たなる存在への唯一無二にして絶対の捧げ物であると全く疑っていない。

「全ての生命は高次元存在への贄となる為に存在しているしそれが無上の幸せである」故にヨタサは愛する備後耀と一つになって彼女に絶対の幸福をもたらそうとしている。


ただし備後耀の意思は問わない。

何十億どころではない意思と星の全てが一つの人格に流れ込むのだから、

その時は備後耀の、個人の人格などは跡形もなく押し潰されるが、

ヨタサにとってそれは何の問題にもならない。

ヨタサが愛しているのは備後耀の生命そのものであって、

その意思でもなければ人格でも無いのだから。

というよりそもそもヨタサの種族には意思もなければ人格もない。

彼女達はただ一つの目的であり愛であって、

人類が人格と呼ぶような存在ではないのだ。


無論これはヨタサにとっての愛でしか無い。

一つの高次元存在が離床した後に残るものは羽化した蛹の抜け殻である。

ヨタサの種族と地球とそこにある生命の全ては塵屑のように打ち捨てられる。

だいたいの人間にとってヨタサは邪悪であろうし、

備後耀がヨタサの望みを知れば拒絶するだろう。

どうやって拒絶するのかはともかくとして。


難しくはない。

ヨタサの種族は一つの人間を模した端末として備後耀と交わる事を望んでその通りになった。だから今の端末であるヨタサは人間みたいに死ぬし、死ねばそれでヨタサの願いは終わりだ。

ただし他にヨタサを知っている者、ヨタサに知られている者が、ヨタサに害意を抱けばその瞬間に溶けて無くなってしまうのは先述の通り。

生きている者であればそこに一切の例外はない。


一番手っ取り早いのは備後耀がヨタサを殺すか止めるかである。

それが出来ないのなら他の誰か、あるいは何かがやるしかないが、

その為には「知ってはならないし知られてはならない」という、

ヨタサの呪いを出し抜く必要がある。何らかの手段はある筈だ。

それにあるいはヨタサが頓死するかもしれないし、

何よりヨタサ以上の邪悪なら地球にもありふれているだろう。


地球とその全ての生命。

ヨタサがその半分を知るか知られるかした時点で全てが終わってしまう。

残された時間はそんなには長くない。遅くとも来年の四月半ばにはヨタサの目が開き耳が通るようになる。ヨタサは見て、聞き、知って、何もかもに芽を打ち込んで備後耀に引きずり込んでしまうだろう。


そしてこれを読んでいる方々の中にも。

よふけ、たそがれ、さざなみ。

ヨタサの芽は。

既に。




──




ぱちゅっ



──十人目 ヨタサ

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