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4 クラスでイジメられている深見


「そう。深見」私は肯定した「私と同じクラスの男子。ほら、高柳たちより後ろで、一人でご飯を食べていたでしょう」


「いたっけ?」


「いたよ」いつも存在感を消しているから、気付かれなかったのかもしれない。深見はクラスメイトから、逆らわないことをいいことに、いじめの被害をうけていた。


「どこに行くのかしら。手提げ鞄を持っているけれど」昭子が不審そうな声をだした。向かう方向には下駄箱しかない。


「さあ」私は首を傾げる。使い古されてくたくたになった手提げ鞄には『エロする気持ちも 持って歩こう エロバッグ』と書かれている。誰かがいたずらで『エコ』の印刷文字の『コ』を油性ペンで『ロ』に書き換えてしまったようだ。


 エコバッグの中身はものが入る空間があった。


「こんな雨の中外に出るつもり?」


「もしかしたら、これから盗む靴を探すつもりだったりして」私は思い付きを口に出す。出した後、不謹慎かなと思った。


「まさか」昭子は否定をした。が、廊下を斜めに進み、掃除用ロッカーの陰に入って、顔だけ出すように深見の動向を伺った。私も続けて掃除ロッカーの裏に回る。掃除ロッカーと昭子に挟まれる形で、深見を見た。


 何も知らない深見は下駄箱に向かって歩く。


「結月ちょっと下がって」昭子がブレザー越しに肩を下に押した。私が邪魔で、前の様子が見えないらしい。体重が掛かり、前のめりの態勢になった。


 あ、と思った時には手遅れだった。手に持っていたノートの山が雪崩を起こした。スローモーションのように落ちるノートを見つめた。


 バサバサとノートが落ちていく。


 音に反応した深見がこちらを見た。不審な顔で数秒見つめられたが、結局声をかけられないまま、下駄箱に行った。下駄箱の扉を開け、上履きを脱ぎ、靴に履き替えると、傘を広げ、校舎の外へ出て行った。


 二人で顔を見合わせ、溜め息を吐く。


「今、決定的瞬間を見逃したかもね」昭子が悔しそうに言った。


「そうだね」靴隠しの犯人を取り押さえられるかもしれなかった。落胆しながら、かがんで、落ちているノートを拾う。


「ねえ、結月」ノートを拾おうとしない昭子が、立ったまま声を掛ける。


「何?」


「6月から始まった、靴隠し事件さ」


「うん」


「誰が犯人なんだろ」昭子はぼそりと言った。


「いまどき靴隠しなんて幼稚だよね」私は話を合わせる。


「学校の規則で定められた、全員同じ、白色で白い紐の運動靴なのに」


「今月から始まってもう6足盗まれているんだよね」朝学活の時間に先生が話していた内容を思い出す。盗まれた生徒は、学年もばらばらで、共通点がないそうだ。


「私さ、犯人が許せないの」昭子が珍しく正義感を見せる。しかし、許せないといったところで、靴隠しの犯人なんて見つかるはずがない。


 私は、話題を変更する。


「合原って新しいストーカー?」

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