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3 昭子をストーカーする合原の話


「そういえばさ」高柳は神妙な顔で昭子を見ていた。ここで言うべきかの逡巡の色も伺えた。


「何?」昭子が訊ねる。


「あのさ…」


「何よ」昭子はきく。


「合原にストーカーとかされてない?」合原という単語が出た途端、昭子は露骨に顔を歪めた。高柳が続けて言う。「あいつ、黒木の持ち物ならなんでもいいから欲しいとか気持ち悪いこと言っていたな。『昭子ちゃんのシャープペンシルが手に入ると、勉強頑張れる~』とかな。盗まれないように気を付けろよ」


「大丈夫よ」昭子は引きつった笑顔を浮かべて言った。


「もしかしたら今流行っている靴隠しに紛れて、靴を奪うかもしれない。木は森の中に隠せ、靴を奪うなら靴隠しの中に隠せという理論で」


「なるほど」昭子は余計にひきつった顔をする。「その可能性は考えてなかった」


「何かあれば俺に言えよ」真剣な声で高柳が言った。


「俺に言ってもいいぜ」隣の男子も言った。


「俺でもいいぜ」別の男子が言う。


「ありがとう」感謝の感情がこもっていない素っ気ない声で昭子は言った。数人の男子が顔を赤くしている。モテるとはこういう女子のことを言うのだと、改めて思った。


全員分のノートを受け取ると、私と昭子は教室を出た。売店を利用する学生は既に教室に戻っており、誰も人がいない。二人きりで廊下の真ん中を歩く。


「高柳とは知り合いだったの?」何気なさを装って訊ねてみる。


「四月に少し遊んだことがある程度で詳しくは知らない。どんな人なの?」疑問文で返答をうけた。遊ぶことはおろか、会話すらしたことがないのに知るわけがないではないかと、言いたくなる。整っている昭子の容姿をうらやんでしまい、そういう自分が少し嫌いになる。


「彼が動かなくても、彼の周りにはいつも人が集まるタイプの人。今月は高柳が窓際の席に位置するから、高柳の友達が窓際にご飯を食べに移動したの」


「そんな雰囲気は感じ取れた」昭子が同意する。「顔が整っているし。落ち着いていた」


「そうなんだよね」自然と頬の体温が上がる。「授業中は頬杖をついて窓から他のクラスが体育をしている様子をよく眺めているの。気怠そうな横顔がたまに笑顔になり、それを悟られていないか、周囲を見渡す姿が可愛いくって」


「授業中は黒板を見なさいよ」正論の指摘が返ってくる。


 階段を下り終え、一階の廊下に出る。雨の日は蛍光灯がやけに主張して、白く光っており目を細めた。数メートル前を男子が歩いている。左手にエコバッグを提げている。


「あ、深見」小さく声が漏れた。


「深見?」昭子が尋ねる。



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