表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/54

結婚


淳と奈緒子の事情を知った淳の両親は、急ぎ一ツ橋家に向かいます。


――――


いきなりの娘の彼と両親の訪問に奈緒の両親は驚いた。幸い日曜日の夕方と言うこともあり、奈緒の父親もいた。


「奈緒子、どういうこと。山之内さんのご両親までおいでになるとは」


その言葉に

「淳、もうこちらのお宅には、ご挨拶には見えているの」


母親の言葉に

「うん、前に」

「まあ」

と言うと奈緒の父親が、


「申し訳ありませんが、事の事情が呑み込めないでいる。奈緒子、説明してくれないか」


お父さんの言葉に奈緒は、僕を見ると


「僕が説明していいでしょうか」

「まあ、それは良いが」

「ありがとうございます。いきなりで申し訳ないですが、奈緒子さんを僕の妻に迎えたいと考えています」


いきなりの言葉に奈緒の両親が驚くとさらに続けて


「奈緒子さんのお腹には僕と奈緒子さんの子供がいます。順番間違えて済みません」


頭を下げる僕に奈緒と僕の両親も下げると奈緒の父親は、母親と顔を見合わせながら


「取りあえず、顔を上げて下さい。しかし、いきなりだな」

妻の顔を見ながら言うと


「奈緒子、あなたの気持ちは」


お母さんの視線に頷きながら

「お父さん、お母さん。私は、淳の妻になります。お腹の事は、彼と一緒に育てます」


ついこの前まで、右も左も知らなくて心配していた娘が、はっきりとした物言いに驚きながら

「奈緒子、それでいいんだな」

「はい」


父親は少し考える様な仕草をすると、

「分かった。後は、お母さんに任せていいか。男は、もう必要なかろう。山之内さん、始めまして。順番どうも違うが、これから宜しくお願いします」

そう言って頭を下げる奈緒の父親にソファから立って淳の父親も


「一ツ橋さん、これから宜しくお願いします」

そう言って頭を下げた。


奈緒は淳の顔を見て微笑むと

「お母さん、急いで明日、入籍して来る。母子手帳もらう必要がある」


娘の言葉に

「何を言っているんですか。入籍届は二四時間受付です。まだ六時です。世田谷区役所は開いていますよ。用紙を貰って来なさい」


奈緒の母親の積極的な言葉に驚きながら

「はい」

と言うと彼に視線を送った。


「お母さん、取りあえずここは、我々も家に戻ろう。淳、結婚届を区役所から貰ったら、家に戻りなさい。結婚届けには、証人が必要だ。お父さんが書いてあげる」


その言葉に奈緒が微笑むと

「お父さんありがとう」


淳の父親は、

「一ツ橋さん、日曜の夕方に突然訪問して申し訳ない。今後の事については、改めて日を決めて話しましょう」

「分かりました」

そう言って、淳と奈緒の父親が同時に頭を下げると


「しかし、いきなり孫ですな」

「はははっ。確かに」

二人の父親が笑った。

 

 僕と奈緒は、家を出て通りでタクシーを拾うと世田谷区役所に行った。そして用紙を貰うと僕の家に戻った。


「お父さん、お母さん。ただいま。用紙を貰って来た」


その声に母親が玄関に来ると

「お帰りなさい、淳。奈緒子さん上がって」


今度は二人をしっかりと見ていると玄関を上がった淳の靴を揃え、自分の靴は揃えて隅に置く奈緒の姿に

大丈夫そうねと思って微笑むと


「お父さんが、応接で首を長くして待っています。行ってあげて」

そう言って自分はキッチンに行った。


結婚届を書き終わると

「ところで淳、これからどうするんだ」

「えっ」

「えっではない。届を出した時点で、お前たちは正式に夫婦になるんだ。結婚式もあげなければいけないし、住むところなど、準備も色々あるぞ」


そこまで頭が回っていなかった二人は、顔を見合わせると

「結婚届を出してきます。その後、一緒に考えます」

少し、あきれ顔になりながら


「そうか、二人で考えるか。まあそれもいいだろう。相談事が有ったらすぐに言いなさい」

そう言って、父親は応接を出て行った。


 奈緒は、結婚届を見ながら山之内奈緒子。うん、悪くないそう思って微笑むと

「奈緒、どうしたの」

「うん、自分の名前、山之内奈緒子。悪くないなと思って」


その言葉に一瞬頭が冷静になると

「これからこと早く考えないといけないね。夫と妻が両親の家にそれぞれ住んでいるの、おかしいし」


淳の言葉に

「うん、まかせた」


いつもの奈緒の甘えた言葉に苦笑いすると

「行こうか」

と言って立ち上がった。


届け出を済ませると

「奈緒、これから色々することがある。明日は、月曜日だけど、会社の帰りに会って話そう」

「うん」


嬉しそうに返事をする奈緒の顔を見ながら、淳は心の中でこれからしなければいけない事、瞳の事が重く圧し掛かって来た。


『瞳、今日会える。』


会社内でも薄々分かり始めた二人の関係だが、まだ、公式に婚約をしない限り、社内では、瞳はメールだけで淳との連絡を取っていた。


 彼からの誘いにいつもは木曜日なのにと思いつつ、火曜の夕方に来たメールに、

まあ、色々あるし、会いたいのかなと思って

『うん、いいよ。いつものとこで一八時ね』


前ほどIPCのセキュリティを気にしなくなった瞳は、そのまま返事を返した。

前だったらばれないようにMtgにごまかしたのにそう思うと、淳といずれ来る時が近いと感じていた。


デスクのPCを落として、席を立つと表通りを避けて、ビルの裏門から出ると急いで新橋の駅に向かった。

歩いても一〇分は掛からない。早足で歩きながら、いつもならこの辺で後ろから声かけてくれるのにと思い、後ろを見ながら歩くといつの間にか新橋のSLの前の通りまで来ていた。

先に来ていないかと思いながら探すとSLの前で駅の方を見ながら立っている淳がいた。彼の姿を認めるとゆっくり歩いた。SLの後ろから回って、驚かそうと思った。

その時、

「へへっ、綺麗なお姉ちゃん。これからおれと楽しいことしないか」


いきなりの声の方向を見ると髪の毛が脂ぎって、太った男が立っていた。その男がいきなり自分の腕を掴むと強引に引き寄せた。瞳はその姿を見て


「きゃーっ」


信じられない程の声を出すと掴まれた腕を離そうと引き寄せるとその男が信じられない力で握っている。周りの人は、見るだけだった。


「助けてー」


誰も何もしてくれない。

「姉ちゃん、今時誰も何もしないよ。それよりおれと楽しいことしようぜ」


いきなり瞳の胸を掴もうとした時、瞳の手を握っていた腕を横からひねる様に掴まれると、右の頬に強烈なストレートが入ってその男が横に飛んだ。


瞳は、いつの間にか自分の腕が解放され、気持ち悪い男が路上に転がるの見た後、自分の助けてくれた男の顔を見た。


「大丈夫か瞳」

「淳」


恐怖の中に救いを見つけた目をすると飛ばされた男が、路上から立ち上がり


「ふざけんじゃねえよ」

と言って淳に殴りかかって来た。


殴りかかる右腕を下から流しながらそのまま男を前に出し、右腕を肘から内側に回して背中に持って行くと男がそのまま前屈みになり、膝をついて崩れた。


「このまま正当防衛で腕を折ってもいいんですよ。ついでに足の一本も」


右腕を締め上げると、男が苦しみながら

「うっ、うるせえ、なにすんだ。離せ、このやろう」

「状況が分からないようですね」


そう言って、男の右腕を更に絞め上げると

「ぐあーっ。分かった。止めてくれ」

男の腕を離すと


「覚えてろ」

と言って、右腕を抑えながら日比谷通り沿いに走り去った。


「淳、遅い。怖かったんだから」

そう言っていきなり自分の胸に飛び込んできた瞳に


「遅いって、言われても…」

べったりと体を寄せあう二人に


「すげーっ」

「かっこいいな。あんた、私があんな状況になったら出来る」

「大丈夫だよ。お前は、襲われない」

「何言ってのよ」

「やっぱり、彼女守るのは、腕っぷしだよな」

「ちょっとうらやましい」


好きな事を言いながら、段々周りで見ていた人がまばらになると

「瞳、大丈夫だった」

「大丈夫じゃないから」

思いきり目元に涙を浮かべながら言う瞳に、本当は話したかった事が遠くに行った。



―――――


結婚が決まった淳と奈緒子。

でも瞳との事は何も解決していません。どうするの淳君?


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ