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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第3章
97/102

隘路

寒いですね。

先日最終回詐欺をしてしまいましたが、今度こそ本気で最終回まで行きます!

6話分あります。


こんな深海の底に沈んでいるタイトルを選んで読んで下さった超絶レアな方々に御礼申し上げます。( ´Д`)ノ


                                 

 

「‥‥‥‥ふーん。甲斐がそこまでいうなんてますます興味が湧いてくるじゃん。あの子、純情そうだったよな。どうせおまえのしてきたこと全然知らねーんだろ?上手いこと言って騙してんの?ま、この話は後でね。ふふん。」



 桃山は雅秋に耳打ちした後、今度は不安げに見ていたミチルに指図した。


「おい、おまえ!俺の椅子この神谷の横に持ってこい。俺は前生徒会長だからな。こいつらに教えることがある。」



 雅秋は舌打ちして桃山を一睨みしてから舞台へ向かった。


 桃山は用意された椅子に座り神露にミアのことを聞いた。


「ミアさんについて桃山先輩に話す情報は特に持ち合わせていません。」


 神露は無表情クールフェイスで答えた。


「じゃあ、隣の女子。おまえは知ってんだろ?」


 りりあは椅子に一人座って先ほどから神露の様子を観察していたため事態の成り行きは最初から気がついて見ていた。


 りりあには雅秋と桃山の会話は聞こえなかったものの、二人がミアを取り合い揉めているのはわかった。

 だが皆、周囲と歓談したり、準備でわさわさしていたため、この事は周りは気づいて気にしている人は余りいないようだった。



「わっ、私ですか?」


 傍観者でいたのに急に話を振られ、りりあは焦った。

 神露は冷たい視線をりりあに送ったが気がついてはいなかった。


「そうですねー、ミアちゃんはー、ガチかわいくてー、誰にでも優しいし親切でー、おとなしくって、目立つのはあんまり好きじゃないみたい。勉強はトップクラスでー、えっと、柔道には興味ないみたい、あー、イケメンとは結構仲いいかもね。柊也とも噂があるし。っていうか、ミアちゃんイケメンしか相手にしないんじゃん?多分。」


 りりあが私見を述べた。


「ふーん、そうか。じゃあ俺おっけーじゃん。さんきゅー!」



 のばらに付きまとっていた煌が席に戻って来た。


 久々にのばらとたくさん話せた煌は上機嫌だった。


「よお!コスプレ審査員御苦労だったな!雪村。」


「桃山先輩、居たんですか?」


「ハイハイ、いたよいたよん。で、雪村、ミアちゃんのこと何か知ってる?」


「ふっ、先輩、あの子に興味が?あの子は‥‥‥‥美人ですが性格がね。変に気が強くて突っかかってくるかと思えばすぐに泣くし。直球しか投げられないつまらない子ですよ。あ‥‥‥‥それに隠しているみたいですが厨病にかかっています。」


 煌はミアのことを聞いてくる桃山を小馬鹿にする目でちらりと見てから席に着いた。


「そうかー。甲斐が夢中になってんのはイケメン好きの素直な厨病美少女ってか?」


 桃山はとりあえず解を得た。




 上手(かみて)ではリアスがミアに事情を聞いていた。


「大丈夫か?ミア。あいつに何かされなかったか?」


「‥‥‥うん、大丈夫よ。ありがとう。でも怖かった‥‥‥‥セクハラ発言をされて。」


「あいつ!何言われたんだっ?」


「‥‥‥‥とても言えないわ、リアス。」


 ミアはリアスから顔を背けた。


「‥‥‥‥そんなめちゃ恥ずいこと言ったのかよ?もしかして18禁用語?あの侍野郎!」


 リアスは顔を赤らめて気色ばんだ。





 下手(しもて)袖では、特に何も気づいてはいないマナカと中村がハートマークを飛ばしていた。


 その中で雅秋は一人、苦悩していた。


 ーーー俺、ミアに嫌われたら‥‥‥‥ミアが俺から去って行ったら‥‥‥‥?


 ミアと出会うまで、女の子の気持ちなんて気にすることすらなかった。

 

 女の子に優しさも愛情さえないままふざけたことをしていた。


 俺、桃山とあんな笑えない黒歴史刻んじまってたなんて。


 でも、今は‥‥‥ミアに出会って俺は変わったんだ。俺を信じて欲しい‥‥‥ミア。たとえ桃山が俺がミアと出会う前のことバラしたとしても。




 舞台上ではのばらが挨拶を始めた。郷土伝説について手短に説明し、節度の守れない観客は途中退場をお願いする旨を述べてついに集大成となるべく最期の舞台が始まった。



 リアスは台本を手に朗読を始めた。


「これは今、正にあなたがいるこの地この場所で生まれた物語。はるかはるか遠い昔から伝わる物語‥‥‥‥‥‥‥‥‥」



 ミチルのような通る声でも中村のようにアナウンサーのような淀みないすらすらした朗読でもなかったが、一生懸命さが生み出すぎこちなさが好感の持てる朗読になっていた。



 第1幕のミアと雅秋の出会いのシーンはミアの前回でのヤジのトラウマにより、ぎこちない演技となった。

 雅秋の方も、桃山にミアを諦めさせ自分の過去を口止めさせる方法のことで頭が支配されており、ただセリフを言っているだけの有り様だった。





 上手(かみて)に戻ったミアにのばらは苦言を呈した。


「ミアちゃん!もうあのヤジの下品な人たちはいないのよ。そんなんじゃわざわざ並んで見に来てくれた人に申し訳ないわよ?」


 ミアの両肩に手を置き正面から顔を合わせた。



「‥‥‥‥‥そうですね。私ったら‥‥‥気が弱くていつもびくびくして‥‥‥。こんなんじゃだめですよね‥‥‥‥‥のばらさん‥‥‥‥私、のばらさんみたいに強くなりたくて‥‥‥‥がんばろうって思っていたはずなのに。」



 涙ぐんだミアがのばらの肩におでこをつけた。


 のばらはミアの背中をぽんぽんと叩き元気づけた。


「ミアちゃんなら出来るわ!あなた、もっと自信を持ちなさい。妬まれるくらいミアちゃんは素敵ってことなのよ!ね、ミチル!」


 のばらはミチル方に目をやった。


「うん、僕たちがついてる。がんばって、ミア!」


「‥‥‥‥‥ミチル、のばらさん‥‥‥、はい、第2幕はさっきの分まで蓮津姫の気持ちを込めてがんばります。」




 すぐそこの舞台上の隅ではリアスが不器用ながらも一生懸命朗読を続けていた。

 ミアはリアスの頑張っている声を聞いて自分もできる限りのことをしようとモチベーションを上げた。


 第2幕になった。


 お城の池の橋の向こう側のたもとに雅秋演じる牧野様が現れ蓮津姫と再会する二人の大事なシーンだった。


 雅秋が下手(しもて)から舞台上に現れた。


 雅秋は未だに舞台には集中出来ていないようだが、ミアは先ほどの、のばらとミチルの励まし、リアスの朗読の声を聞き集中力を取り戻していた。



「お久し振りでございます。蓮津姫様。」


 雅秋がうずくまって言った。


 その時、がらりと教室の戸が開けられた。


 そこには一人の凛々しい若侍姿の男子が立っている。


 彼のコスチュームは本物のアンティークの着物のようだ。そして腰に差した刀も重さを感じるもので、コスプレの見るからに軽いレプリカとは違うようだった。


 若侍男子が歩くと重みのある金属のぶつかるした音がした。


 皆が驚いて黙って彼を目で追っている。



「おい、おまえ!途中から急に入ってきてなんなんだよ?」


 桃山が舞台めがけて歩いてくる若侍に立ち塞がった。


「私はミアに会いに来た。」


 リアルな若侍男子は静かに言った。


「はぁ?誰だか知んねーがミアちゃんは次俺のターンだからな!近寄るんじゃねぇよ!」


 桃山が凄んだ。


「邪魔だ!どけっ!」


 若侍が鋭い目付きで言った。


「はぁ?おまえこそ、消えろ!」


 桃山がレプリカの刀を抜いた。


 とたん若侍は抜刀することなく左腰に帯刀したまま鞘ごとくるりと回転させるだけで桃山の刀を凪ぎ払った。


「うわっ!何すんだよ‥‥‥‥‥おまえ!今のすげースキル!何も見えなかった!どうなってんの?」



 若侍は桃山を無視し、舞台に上がっていた。



「!」



 上手(かみて)から出たばかりのミアが目を見開いてリアルな若侍コスプレ男子を見た。









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