ラストパフォーマンスの始まりは繚乱
「あー、散々だったわね‥‥‥‥‥。」
部外者がいなくなった理科講義室でのばらが言った。
輪になって座りこみミーティングしていた。
「さっきはすげーヤジだったな?ミア‥‥‥‥気にすんなよ。」
リアスがミアの顔色を見た。
「‥‥‥ありがとう、リアス。」
ミアは無理に少しだけ笑って見せた。
「だいたいねっ、あんたがいけないのよ!注意されてたのにミアちゃんにくっつくから!」
のばらが険しい表情で雅秋を指差した。
「いいじゃん、あんな奴らどうだって。俺だってミアの推しのやつらに『真夏多さんが穢れる!』だの『狡猾野郎』だの『女たらし』だの、『女子の敵』だの散々だったぜ?」
「それは本当のことだからあんたが甘んじて受ければいいけど、ミアちゃんは違うのよ!ミアちゃんはあんたと違ってナイーブなのよ!」
おかんむりで言った。
「次回はミアちゃんのために自重しなさいよ!」
「はいはい、わかったよ!監督様。」
「後、ミチルはもう無理ね、代役は座家くんだったわね?お願いするわ。」
のばらリアスを見た。
「えっ!俺が‥‥‥‥朗読の練習あんましてねーって!鯉の化身なら張り切って練習してたけどさ。」
「だっ、だめだぞ!マナカの相手役は俺だからなっ!」
中村がリアスを睨んだ。
「ちっ!しょうがねーな。ミッくんのピンチだもんな。わかった!俺に任せろ!」
リアスはミチルに親指を立てて見せた。
「ごめんね、ザッカリー。朗読は最初から最後までずっとだし、緊張感もあって結構大変で喉にきちゃったみたい。」
ミチルがときどき声をかすれさせながら言った。
「ミチル、このキャンディあげる。」
ミアが小さい小袋からミチルの手のひらに乗せた。
「ありがとう、さすがミア。今僕の欲しいものがわかるなんて。」
ミチルが微笑んだ。
「う、うううん。じゃ、次の用意だな!ほら、座家、今からでも練習しとけよ!」
ミアとミチルを横目で見つつ雅秋がリアスの背中をバシッと叩いた。
「言われなくてもするしー。甲斐先輩こそミアをこれ以上困らせんなよ!ふーんっ。」
リアスは顔を背けて離れていった。
「ったく、座家は今頃反抗期かよ?」
「ミチル、生徒会用の椅子を3脚ここに並べて。」
のばらが壁際を指した。
「はい、わかりました。」
「‥‥‥‥いよいよフィナーレだわね、ミチル。よくやったわ。後もう少しよ。」
「はい。最終回はどうなるんでしょうか?さっきみたいにならなきゃいいけど‥‥‥‥‥」
「大丈夫よ!前もって注意しておくし、次は態度が悪い人は退場してもらうわ。ミアちゃんに罵詈雑言を浴びせるなんて許せないもの。それにさっきのヤジの人達の顔は覚えたわ。だから‥‥‥‥うふふ。」
「え?」
ミチルはのばらのミステリアスな微笑に戸惑った。
廊下に観覧希望の人がならんでいる。
のばらとミチルがゲスコンしていると生徒会視察メンバーが来た。生徒会長雪村煌と副会長神谷神露、書記時田りりあの3人だ。
「やあ、今日はよろしく。早く来てすまないが先にセットを見させてもらっていてもいいかな?」
煌がのばらに言った。
まだ開場の時間まで15分ほどある。
「わかりました、どうぞ。」
「じゃあ、のばら、君が僕たちに説明してくれ。のばらが工夫したんだろう?」
「はい、そうです。わかりました。じゃあ、どうぞ中へ。ミチル、後頼むわね。」
「はい、わかりました。」
ミチルは並んだのばらと煌がしっくりお似合いに見えることに心がざわざわした。
のばらは、煌には事務的に接しているが。
のばらが戸を開けて知らせた。
「生徒会の視察です。私がセットの説明をします。皆はそのまま準備していてね。」
のばらに続いて煌と神露、りりあが来た。
「こんにちは。」
煌とのばらはそのままセットの方に歩いていったが、りりあがミアを見つけて捕まえた。
「きゃー!ミアちゃん。来たよー。私超ラッキー!また役得だよぉ。私、今日は忙しくてさー。やっとくつろぎお楽しみタイムだよ。えへへ。ミアちゃん、すごくかわいいよ!がんばってね。」
「ありがとう。りりあちゃんが来てくれて嬉しいわ。」
「時田さん、ミアさんと話すのもいいけど、先にセットを見せてもらおう。写真撮っておいて。」
神露がりりあに注意した。
「はーい。了解でーす。」
「ミアさん、後でね。」
神露はミアに手を上げて挨拶した。
ミアは煌とはなるべく離れていたかった。神露に軽く微笑んで会釈して返した後すぐ目立たぬように他の出演者の輪に紛れた。
のばらは煌に舞台の造りや造ったプロセスを説明した。煌はそれについて質問した。りりあは写真を撮り神露はメモをとった。
ほんの10分ほどで終わり、丁度グリーティングの5分前だった。
のばらは用意してある椅子に3人を座らせた。
煌は席についたがまたすぐに立ち上がりのばらについて回っている。
神露もその後すぐにミアの下へ向かった。
椅子に一人取り残されたりりあは、普段はクールに振る舞っている二人から、時折かいま見える本心をにやけながら観察していた。
ミアたちは既に入口に一列に並んでグリーティングに備えている。
「やあ、ミアさん。すごくいいね、その衣装、似合っている。」
神露がミアの前に来た。
ミアの隣で雅秋が神露を睨んで来たが神露はないもののようにシカトした。
「あ‥‥‥神谷先輩、ありがとうございます。」
軽く微笑んだミアは普段はしないメイクと浴衣姿のせいか色香が漂い、神露をどきっとさせた。
「記念に一緒に写真撮ってもいいかな?」
「ええ、もちろんです。」
神露が並んで写真を撮っているとミチルが戸を開けた。
「会場しますけど、用意はいいですか?」
「おう!みんな準備OKだぜ!」
雅秋が代表して言った。
並んでいた来客が入場してきた。
神露は雅秋の様子をちらりと見た。
すぐに女子に囲まれてしまい何か話している。もうこちらのことまで気がまわってはいない。
神露はアピールのチャンスだ。
「ミアさん、先程の回は大変だったようだね?」
「あ‥‥‥‥あの、何か知っているんですか?」
ミアが困惑した顔になった。
「甲斐先輩への生徒会の注意が守られなくて残念だった。そのせいで、ミアさんは辛い目にあったんだろ?」
「でも甲斐先輩も心無いヤジを浴びたし私だけって訳ではないんです。」
「ミアさんは大丈夫なの?助けが必要なら僕に言ってくれていいんだよ。」
神露は誠意を見せて真面目な顔でミアの目を見つめた。
神露に目を合わされたままじっと見られてミアはどぎまぎした。
「いえ、さっきは確かにきつかったけど‥‥‥‥」
「おやー?何か困ってんの?ミアちゃん。だったら俺に言えよ。」
いきなり神露の後ろから桃山が武士姿で割り込んで来た。
「来たぜー!ミアちゃん。どうよ?おれの姿。きまってるだろ?」
桃山がミアの横に並んで左腕をミアの肩に回した。
「おい、お前!俺とミアちゃんの写真とっとけ!」
桃山が神露にスマホを投げた。
「うわっ!」
神露はあわててキャッチした。
雅秋は桃山に気づいたが、雅秋は雅秋で女子に捕まっていて動けない。
「で、何困ってんの?ミアちゃん。あ、おまえは早く語らう俺たちの写真とってくれよ。」
桃山が肩を抱いたままミアの口許に耳を寄せた。
「あの、私はもう大丈夫です‥‥‥‥」
ミアはあまりに近づいている桃山に戸惑い、左の肩に乗っている桃山の手を見た。
桃山はそれに気付くとにやっとして力を入れ更に自分に引き寄せた。
「桃山先輩、撮りましたよ。先輩、僕ミアさんに話があるんですが。」
桃山にスマホを差し出した。
「どうぞ、言っていいぜ。」
そのままミアの肩を抱き寄せたまま右手でスマホを受け取った。
「そのままでは話しにくいのですが。」
神露は毅然といったが桃山は却下した。
「だったら後にしてくれ。俺は今ミアちゃんの相談にのってっやっから。」
桃山はミアの肩を掴んでくるりとに壁の方に向いた。
片手で抱き寄せたまま内緒話をするかのように猫背になってミアに顔を寄せた。
「ミアちゃん。甲斐とどこまでいってんの?ねぇ、俺とも遊んでくれよ。俺のくちびるにもラメつけてもいいんだぜ?絶対俺の方がいいって。」
「‥‥‥何を言っているの?‥‥‥私‥‥‥」
ミアは怖くなってそのまま固まってしまった。




