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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第3章
89/102

コスプレコンテスト

 中庭では音楽フェスが終了し、次は生徒会主宰によるコスプレコンテストが始まろうとしている。


 司会は生徒会副会長の2年神谷神露(かんろ)と1年書記の時田りりあだ。


 他の生徒会の生徒は審査員を努める。

 生徒会の目的はコスプレした人が校内を歩き回れば文化祭が盛り上がるだろうという魂胆だったため、コスプレ参加者は文化祭が終了する30分前の3時半までその姿でいることが参加の条件だった。


 コンテストと(うた)いながらも、投票で順位をつけるのは集計作業が増えて面倒なのでためらわれた。なので生徒会内で優勝者1人だけを選ぶことになっている。



「あー、あー、新巻鮭、けーけー毛ガニ、にーにーにしん、はいっ!マイクおっけー!お待たせしましたー!生徒会主宰の『烏滸(おこ)な野郎ども来いや!!コスプレキングはおまえだっ!』ついに始まりまーす!さてどんなコスプレイヤーが降臨するのでしょうか!たのしみですねー!」


 りりあは柔道着姿で、頭には黄色のリボンのカチューシャを着けてマイクを握っている。


「ちなみに私は柔道界では有名な、昭和時代の柔道少女のアニメキャラなりきりでーす!そして、副会長神谷先輩はー‥‥‥‥‥‥」


「こんにちは!お集まりのみなさん、生徒会主宰の『烏滸(おこ)な野郎ども来いや!!コスプレキングはおまえだっ!』にようこそ!ちなみに僕は普段の制服姿ですが、これは男子高校生のコスプレです。では、最初の方登場です!エントリーナンバー1、どうぞ!」


 神露用にコスプレ衣装が生徒会で用意されていたが神露は頑なに拒否した。

 神露にとっては今の自分自身のキャラ、『クールでソフトないけてる優秀な男子』というキャラが既にコスプレなのだ。これを崩すことなど問題外だ。


 断じてカマキリの着ぐるみなど着るわけにはいかない。



 ステージ中央に二人のメイドが現れた。


「ご主人様、お帰りなさいませ。」


 二人は声を合わせて客席に向かってお辞儀をした。


「はい、エントリーナンバー1からキュートな二人の登場ですね。お名前は?」


 司会の神露がマイクを向けた。


「私はアレクです。ご主人様。」


「私はクロエです。ご主人様。何かご用はございますか?」


 スカートの端を両手でつまんで神露に向かってお辞儀した。


「では、自己アピールをしてください。」


「承知いたしました。ご主人様。」


 クロエとアレクは両脇から神露をガシッと捕まえた。



「えっ?えっ?」



 戸惑う神露をよそにクロエとアレクはりりあに向かって言った。


「私たち憧れの神谷先輩に自己アピールしてきまーす!やったねっ!うえーい!」



 神露は連れ去られた。



「えー、最初からいきなりお持ち帰られるというハプニングが起こりましたね‥‥‥‥‥、早く戻って来られることを願ってますが、次の方どうぞー!」



 素敵なアミタイツの脚をさらしたスタイルのいい二人のくの(いち)が登場した。


「わあ、とてもかっこいいですね!お名前をどうぞ。」


 背の小さい方のくの一がりりあの耳元でささやいた。


「えー、忍者なので名乗りはできないそうですが、綺羅星(きらぼし)十文字(じゅうもんじ)と名乗っております。何かアピールはありますか?」


 二人は無言で頷くとそれぞれ胸から巻物を出し、客席に向かってバッと開いた。



 達筆な筆文字で大きく文字が書かれていた。



『美術部 部員募集!』


『見学何時(いつ)でも快諾!』



「‥‥‥‥だそうですよ!みなさん!素敵なくの一さんがいる美術部に興味のある方は是非見学してみてはいかがでしょうか。美しいくの一さん、ありがとうござ‥‥‥‥‥‥‥」


 客席に向かって言ったりりあが振り向くと既に二人の姿はいなくなっていた。



「お‥‥‥う!さすが忍者さんですね!3時半までは校内に出没してくださるはずですので後で出会えるといいですね。では次の‥‥‥‥‥おう!我々の副会長が戻って参りました!私、ほっとしております。このまま1人司会かと思いました。」


 神露がいささか疲労をにじませた顔で戻って来た。


「あっと‥‥‥‥皆さん、失礼しました。ではエントリーナンバー3の方‥‥‥‥」



 この後もミニスカ赤ずきんちゃんやら有名アニメのキャラ、オタクしかわからないキャラ、バーチャルアイドルからピカピカ言うモンスターキャラまで様々なコスプレが登場した。



「さあ、これが最後のエントリーです!ナンバー21どうぞ!」


 出て来たとたん一部の女子から悲鳴が上がった。


「キャー!待ってたよー、桜果(おうか)ぁ!」



 桃山桜果が武士姿で登場した。



「はーい!皆さん、ついに来ました!前生徒会長の桃山桜果先輩です!」


 りりあが手をヒラヒラさせながら脇に寄った。


「よお!」


 桃山が手を上げるとキャーキャー高い声が響いた。


「これはどういった趣旨のコスプレですか?」


「これはな、昔この学校は城だったわけだろ?だったらさ、そのまま来てたらこの格好が俺らのスタンダードだぜ?」



 桜果は白っぽい小袖の上にうぐいす色の肩衣(かたきぬ)を重ね藍色の袴を来た肩衣袴(かたきぬばかま)スタイルで、太刀を帯刀し地下足袋を身につけている。



 桜果はちょっこっと見まねで練習した刀の殺陣(たて)を披露し、ポーズを決めた。


 歓声で中庭が沸いた。


「さすが前生徒会長ですね!かっこいいですね。ご来校の皆様、この後3時半まで校内に武士もうろついてます!会えるといいですね。ぜひぜひ、文化祭、巡ってくださいね!これですべてのコスプレイヤー全員登場しました!では5分後に優勝者発表しまーす!Wait a second!」


 りりあと神露が壇上から降りた。


 もうこれはみな最初から結果はわかっている出来レースだった。

 桃山以外のコスプレ参加者は既にここにはいない。彼らは遊びつつ、あちこちで文化祭を盛り上げてくれていることだろう。


 目的は文化祭盛り上げだけだったので、優勝したところで賞状も記念品もない。

 ただ、後の広報部による校内新聞に写真と記事が掲載されるくらいだろう。


 その後、桃山が優勝者となり、広報部に決めポーズでの写真撮影を提供した。そして無事生徒会主宰のコスプレコンテストは終了したのだった。




「さてと‥‥‥‥‥もうすぐ1時かー。錦鯉研究部の劇は2時20分スタートだったな。昼飯食ってから甲斐を見てやっか。ミアちゃんもいるしな。甲斐のやつあんなガチかわの子独り占めしやかって。俺に隠してるなんてずいぶん冷たくなっちゃったじゃねーの?させっか、まったくよー。」


 桃山がつぶやいた。













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