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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第3章
83/102

こじらせ濃濃夜

「えっと、今日の予定確認です。」


 ミチルがミーティングを始めた。


「まず時間ですが、貼ってありますが、えっと、1回目は昨日と同じで9:00スタートです。2回目は10:40、お昼を挟んで12:40、最終回が2:20です。各20分前に開場します。」


 雅秋を見て言った。


「甲斐先輩は2回目終了して昼食を取った後はすぐ牧野様の身支度始めて下さい。あまり時間がないです。」


「おう!了解。」


 雅秋が答えた。


「最終回は生徒会の視察があります。でも、気にせず思いっきり演技しましょう。だって僕たち本当にがんばってここまできたし。僕、錦鯉研究部でこんなことできるなんて思ってもいなくって‥‥‥‥だから、うん、今日もきっとうまくいくと思います。では、以上です。ではそれぞれ始めてください!」


 ミチルが夏休み明けから今までのことを思い返し少しうるうるしつつも部長らしくふるまった。



「‥‥‥ミチル、きっと今日もうまくいくわ。」


 ミアがミチルをいたわって声をかけた。


「うん、そうだね!ミア。‥‥‥そうだ!今日はココが来るんだ!両親も。最近はミアと会ってないし、手紙交換もしてなかったからミアに会うの楽しみにしていたよ。1回目か2回目に見に来るって。」


 ミチルが言った。


「わあ!ココちゃんが!嬉しいわ。私、ココちゃんが大好きだもの。ミチルのお父様とお母様も久しぶりだわ。」


 ミアがミチルの顔を見て言った。


「‥‥‥‥うん。」


 ミチルが少し憂いた顔になった。


「どうしたの?ミチル。」


「あ‥‥‥うん。ちょっとね。ここのとこココが反抗期気味でさ、さすがに今日は大丈夫だと思うけど。」


「そうなの?ココちゃんももう6年生だしね。センシティブな年頃になってきたのね。きっと‥‥‥‥」


「うん、でもココは小さいし3年生くらいに見えるけどね。あ、これ内緒だよ。」


「あら、外見と中身は違うのよ。乙女心は繊細なんだから気をつけてあげてね。」


 ミアが知ったか風に人差し指を立てて言った。





 既に廊下がざわざわし始めていた。


 雅秋とリアスは既に廊下でゲスコンを始めていた。



「そろそろ開場よ。すぐに出番のミチル以外はグリーティングについてちょうだい!」


 のばらが指示した。



「あ‥‥‥僕もグリーティング出るよ。ココが来るかもしれないし‥‥‥」


 ミチルが言った。


「ああ、妹さんね?あうっ!ご両親が来るんだったわね‥‥‥‥」


 のばらが言った。


 雅秋が戸を開けて言った。


「おい!そろそろ入れるぞ。」


「いいわよ。」


 のばらが答えた。



 グリーティングにはのばら、マナカ、中村、ミア、ミチルの順で並んでいた。


「おはようございます!錦鯉研究部にようこそ!」


 ぞろぞろと入ってくる来場者に並んだ5人は笑顔で手を振りながら挨拶をした。



「ミアちゃーん!えっと、どこ?いたっ!」


 薄い色のふわふわの長い髪にピアノの発表会のようなワンピースを着たかわいらしい女の子が飛び込んで来てミアに飛びついた。


「ココちゃん!」


 ミアがとびきりの笑顔になった。


「久しぶり!ココちゃん!会えて嬉しいわ。」


 ミアはココを受けとめた。


「ミアちゃん!」


 ココはミアの胴に巻きつきながら顔を上げて言った。


「なんかミアちゃん違うね?」


「うん、今日はお姫様役だから特別にお化粧してるのよ。」


「すごくきれいだよ!」


「うふふ、ありがとう。ココちゃん。」




 ココが急に表情を硬くしてミアの顔を見上げ言った。


「‥‥‥ねえ、ミアちゃんひどいよ!ミッくんじゃない彼氏が出来たなんて!そんなの嘘だよね!ミアちゃんはミッくんと結婚してココの本当のお姉ちゃんになってくれるよね?」



「な、何言ってんだ!ココ!」


 ミアの隣にいたミチルがあわててミアからココを引き剥がそうとした。


「えっ!ココちゃん。それは‥‥‥‥」


 ミアが戸惑っているとミチルの両親が来た。


「ちょっと、父さん、母さん、ココを何とかしてよ!」


 ミチルがココを引っ張りながら言った。


「ミアちゃん、ごめんなさいね。こらっ!ココ!みんなのご迷惑になっているわよ。言うこと聞かないなら帰るわよ。」


 ミチルの母親が言った。


「ああ、ココのわがままには困ったものだ。ミアちゃん、ごめんね。」


 ミチルの父親がココを引き剥がした。


「だってー、パパとママだってそうなったらいいねって言ってたでしょ!」


 ココが不満そうに両親を見た。


「ほら、3人とももう客席にさっさと行ってよ!もうっ!」


 ミチルが珍しく不機嫌になって言った。


 隣でミアが当惑していた。


「ごめんね、ミア。」


 ミチルは両親とココが客席についたのを見ると、そうひと言ミアに言ってから朗読のスタート準備に舞台袖に入っていった。



「ミア、大丈夫か?今の‥‥‥‥ミチルの妹?」


 雅秋がミアの肩に手をかけた。


「あ‥‥‥‥うん、大丈夫。気にしないで‥‥‥」


 ミアが気落ちしたように言った。



 突然来てミアと親密に振る舞う雅秋をココは客席から睨んだ。





 ーーーなんだか知らないけど、助かったわ。このままこっちには来なきゃいいけど‥‥‥‥


 のばらの方はとりあえずほっとしてグリーティングを終えることが出来た。







 開演時間になった。


 ミチルの朗読が始まった。


「これは今、正にあなたがいるこの地この場所で生まれた物語。はるかはるか遠い昔から伝わる物語。そう‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」




「ミッくん家で練習してたより上手だね、ママ。」


 ココが母親のユミに耳打ちした。


 ユミは微笑んでうなずいた。





「ねぇ、こっちにおいでよ。池に魚もいるよ。」


 のばらが言った。


 女子の割りに上背もあるのばら演じる牧野様は、舞台でも見映えし、男役も難なくこなしている。



「ほんと?見せて!」


 蓮津姫役のミアが立ち上がって言った。


 美しいミアと凛々しいのばらの組み合わせは皆の目を惹き付けた。


「こっちだよ。」


 のばらがのミアの手を引いた。



 順調に進み、第1幕は華やかな二人により、観客を引き込んで無事終了した。



「ねえ、ママ。ミアちゃんすごくかわいいね。一緒に出てた人もカッコいいね。あんなお兄さんがいたらいいなぁ。」


「あらー、ココがそんなこと言ったってミチルが聞いたら泣いちゃうかもよ?」


「えへへ、これは秘密!」


 ココがぺろっとした。




 ついにのばらの力を入れた第2幕に入った。


 のばらテンションはさらにあげあげだ。2幕にはのばらのお楽しみにしているシーンがある。


 ミアとの絡みシーンこそのばらのやりたかった場面だ。

 すべてはこういうシーンを夢見たことから始まったと言っても過言ではない。


 のばらにとってこの劇の意義はここにある。




 今、のばらは蓮津姫と再会できる機会を得て、橋の上に控えて待つ牧野様だ。



 ミアの演じる蓮津姫がしずしずと現れた。



「お久し振りでございます。蓮津姫様。」


 のばらは顔を上げ、低めの声で口元と瞳を上品にほころばせた。


「!」


 ミアがはっとして立ち止まった。


「またお会いすることがかないました。」


 そう言いながらすっと立ち上がったのばらはいかにもカッコいい立ち姿だった。

 男らしいいけてる見映えのする足の開き具合と角度は研究済みだ。

 ただし、これは客席に向けたものではなくミアに見せるためのものだ。



「牧野様!」


 ミアは幻を見たかのように驚いてのばらを見ている。


「蓮津!わたしは元服しお城にあがったんだ。」


 のばらは微笑みを添えつつきりっとした爽やかな表情で言った。


「‥‥牧野様、もう1年近く経ってしまったわ。もう二度と会えないかと思ってわたくし‥‥」


 ミアは感極まったようにのばらを見つめている。



 ーーーなんて快&感!ミアちゃんにこんな瞳で見つめられるなんて!




 そして次はついに橋の上で走り寄ってくるミアが転びそうになってのばらが受け止めるシーンだ。



 さあ、来るのよ!私のこの腕の中に!

 100%ちゃんと受け止めるわ!ミアちゃん、私はもうready and waiting !



 ミアがのばらに駆け寄ってきた。リハ通りの位置で転びそうになったミアをのばらはがっしりと支えた。



 ーーー私はミアちゃんをしっかり支えるためにここ1ヶ月筋トレメニューを追加して強化月間としていたのよ!



 効果は発動され、のばらはミアをしっかと抱きとめた。




 リアスは袖からそんなのばらを複雑な思いで見ていた。



 ーーーあれは俺の昨日の姿なんだ‥‥‥‥‥


 確かにひと味違うよな‥‥‥‥‥気合いがさ。


 俺はてっきり、のばらさんは甲斐先輩にまだ想いを寄せてるとばっかり思いこんでた!この間二人で帰った時のばらさんが言ってたことは、まさかミアの方を指して言ってたんなんて!マジかよ?しかも甲斐先輩ものばらさんの気持ちを知ってたなんて!

 だから部活中もあの二人は張り合ってたのか‥‥‥‥‥‥




 だからといってのばらさんとミアが劇中でからんでもジェラシーは感じねーな。


 俺ら、傷心同盟結んでっからかな?





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