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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第3章
82/102

文化祭二日目、始まる

 文化祭二日目を迎えた。


 今日は一般公開なので、たくさんの生徒の家族や他の高校に進学した友人、近隣住人、来年度進学を視野に入れた見学の中学生も来る。昨日より大変なにぎわいになるだろう。


 早々に理科講義室に集まった部員と雅秋、リアスはわさわさと準備を始めていた。


 一番に身支度を終えたのばらはきょうはりりしい男物の浴衣を着ている。

 ポニーテールを高い位置で結び、メイクも昨日の艶やかなお姫様とは違い、きりりとしたものに変わっている。


「のばらさん、女子のファンが増えそうですね。かっこいいです。僕よりずっと男っぽく見えます。」


 ミチルがほほを赤らめてのばらを見た。


「うふふ、そう?ありがとう、ミチル。」


 ミチルの表情がかわいくてのばらは和んだ笑みを浮かべた。


「今日は午前中に僕の両親と妹が来るんです!それでのばらさんに会うのを楽しみにしてるんです!」


 ミチルが嬉しそうにのばらに告げた。


「はっ?」


 のばらが驚いてミチルを見た。


「ミチルの家族は私のこと知ってるの?」


「当たり前じゃないですか!僕の初めての大切な人なんですから。」


 ミチルが当然の如くのばらに言った。


「‥‥‥‥そ、そうなの?わ、わかったわ。ご挨拶くらいなら簡単なことだけど‥‥‥‥」


 ミチルは気付いてはいないが、のばらは一時の煌への当て付けのためにミチルを利用し、その贖罪のために仕方なくミチルとつき合っている。


 ーーーああ、私の贖罪はいつまで続くのかしら‥‥‥‥?


 だからといってこの天使のような純真なミチルを傷つけることも出来ないし‥‥‥‥

 家族に紹介されるなんてまるで結婚でもする勢いじゃないの!ああー、もう!


 ま、まさか‥‥‥私、このまま一生贖罪?なんてことないわよね?



 のばらは不安に駆り立てられた。




 今日の午前中2回の配役は、蓮津姫がミア、牧野様はのばら、那津姫がマナカ、鯉の化身と救いの神は中村、朗読はミチルだ。


 のばらは中村の着付けを確認に行った。


「ねぇ、ヒトミ。出来た?」


「はい、のばらさん。座家がさー、ユーチューブ見ながらさ、手伝ってくれてさ、こいつなんか器用でさぁ。」


 中村が楽屋スペースから出てきた。


「あらー!あなたなかなかいいわよ!ヒトミにも衣装ね。マナカに見せて来なさいよ!」


 のばらが笑った。


「な、な、何でマナカにって言うんですかぁ?のばらさん!」


 中村が焦って言った。


「何でって?あなたたちつきあっているんでしょう。違ったの?」


 のばらがキョトンとして言った。


「そ、そうなのかどうかわかんないけど、そうなったかもしれないしそうじゃないかも‥‥‥?」


 中村がぐにょぐにょ言った。


「よくわかんない子たちだわね!」


 のばらは次はミアとマナカ支度を見に行った。


「ミアちゃん、マナカ!どこまで出来たの?手伝うわよ。」


「のばらさん、私はもう出来ました。以前練習したことがあるので一人で着られましたから。」


 ミアが楽屋スペースから出てきた。


 今日のミアはアイラインを効かせてマスカラも使用し目力アップしている。髪は後ろで緩く一つに結わかれて紫色の和柄のバレッタが付けられていた。

 清純な色香が漂い、美しかわいいがマックスだ。

 今日は更に人目を引くことになるだろう。



 一瞬ふっと見とれてショックを受けてから、のばらのテンションがだだ上がりした。


「‥‥‥‥き、きゃいん!ミアちゃん、なんて尊いのかしら!えっとスマホはここに!はい、一緒にとるわよ!カシャッ‥‥‥きゃー!私とミアちゃんツーショットだわ!ねぇ、もう一枚いいかしら!きゃー!」





「おいおい、あいつ左脳は大丈夫かよ?」


 のばらのはしゃぎ声を聞いて雅秋が顔をしかめた。


「ずいぶんハイテンションだなー?のばらさん。今日はやる気満々だな。」


 リアスがのばらを見て不思議そうに言った。


「ああ、昨日のお前と一緒だな!はんっ!」


 雅秋がリアスを一瞥した。


「昨日の俺と同じ?」


 リアスは雅秋の顔を見たが、ただ不機嫌そうにのばらの浮かれぶりを見ている。


「え?え?どーゆーこと?どーゆーこと?」


 のばらと雅秋をきょときょと交互に見た。


「そういうことさ!気づいてなかったのかよ?鈍いやつだなっ。」


 雅秋はあきれた顔でリアスを見た。


「‥‥‥‥‥‥え?俺とのばらさん、同志って‥‥‥‥ミアの素晴らしさについて一緒に語ろうって‥‥‥‥昨日のムービー中、突然太ももバシッって‥‥‥えええっっ!!」


 リアスは今までの腑に落ちなかった事が急に腑に落ちたのだった。




 マナカの着付けをのばらとミアで手伝った。


「よし、出来たわ!マナカ、これはなかなかいいわよ!」


 のばらが言った。


「ほんとうだわ!なんてかわいいらしいのかしら!やっぱり、那津姫は私より池中さんの方がぴったりね。」


 ミアがマナカを見て微笑んだ。


 今日はマナカは髪を下ろし、両サイドの髪をピンクの鹿の子の紐で蝶々結びにしている。丸顔で小柄のマナカのロリぶりが強調されていた。


「えへー、のばらさん&ミアさんにそんなこと言われると照れくさいじゃん。」


 褒められてマナカはてれてれになっている。






「さあ、昨日とは役が違うのよ!5分後リハーサル始めるわよ。」


 のばらが真面目な顔に戻って大きい声で全体に言った。





「マナカ!」


 中村が支度を終えたマナカに引き寄せられて来た。


「うわあ!ヒトミ浴衣姿かっけーじゃん。ねぇ?私はどうよ?」


 マナカがくるりと一回転した。


 マナカの少しウエーブした長い髪が揺れた。


「い、いいんじゃね?」


 中村が向こうを見て言った。


「何よ、それ?全然見てないじゃん!」


 マナカがむすっとした。


「‥‥‥‥マナカがかわいすぎて真っ直ぐに見れねーよ。」


 中村がぼそぼそ言った。


「‥‥‥‥え?」


 マナカが赤く染まった。





「ミア!」


 のばらがミアから離れたところで雅秋がミアを呼んだ。


「雅秋!」


 振り向いたミアに雅秋はドキッとした。


 ミアがこちらに歩いてくる。


 目の前に来て雅秋の顔を見た。


「どう?蓮津姫っぽくなったかしら?」


 ミアが雅秋に微笑んだ。


「ああ、俺このままミアと二人でどっかに行っちまいたい‥‥‥‥」


 雅秋はミアをうっとりと見つめた。今、このまま抱きしめてキスしたいところだがそういうわけにもいかない。


「うふふ、雅秋ったら。池中さんにメイク手伝ってもらったの。なんだか自分じゃないみたい。」


 ミアが照れながら雅秋に言った。




 リアスはミアと雅秋が仲むつまじく話しているのを一人離れて見つめていた。




「さあ、リハ始めるわ!こっちに来て!」


 のばらが手を上げて皆を呼んだ。


 ミア、ミチル、マナカ、中村が集まってリハを始めた。





「おい、座家!俺たちも準備始めるぞ。お前、下手(しもて)に神の早替えの衣装と小道具セッティングしろ。俺はCDの用意すっから。」


 雅秋が言った。


「あ、はい。わかりました。」


 リアスも動き出した。



 途中で顧問の地衣が来て氷を入れたクーラーボックスに色々なペットボトルを詰めて持ってきた。約束した差し入れだ。


 女子3人の出来映えを嬉しそうに眺めて褒め称えた。


 そのあと皆で集合写真を撮り激励してから戻って行った。




 リハも終わり舞台セッティングも終了した。


 ミチルは祈った。


 ーーー今日もうまく行きますように!




 じわじわ来る緊張感を押し退けてミチルは大きな声で言った。



「みんな、ミーティング始めます!」







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