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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第3章
78/102

雅秋の憂い

 ミアと雅秋は理科講義室を出た後、新校舎の2Fにある3年7組の教室に向かうことにした。


 そこには、雅秋が中心となり描かれた黒板アートの展示がある。


「楽しみだわ。何の絵なの?」


 ミアが雅秋と並んで4Fの渡り通路を歩きながら雅秋に聞いた。


「風景画さ。星空の湖と森と城。おとぎ話の世界みたいな。皆で白いチョークだけで描いたんだ。」


「うわぁ、素敵!早く見たいわ。」



 雅秋がミアの足元に気づいた。


 ミアは演技の時は草履か裸足だったが今は浴衣姿のまま上履きシューズを履いている。


「何かおかしな格好だな、ミア。」


 雅秋が立ち止まってミアの足を見た。


「だって、ずっと草履では足が痛くなってしまうでしょ。」


「そういえば、ミア!足といえば、井戸に飛び込む前に裾めくるの上げすぎじゃねーか?」


 雅秋の眉間に力が入っている。


「そう言われても‥‥‥‥‥裾をあげないと足が上がらなくて井戸に飛び込む演技が出来ないじゃない。」


 ミアが言った。


「それに、座家の野郎に気安く触らせんな!いいな?」


 雅秋が正面からミアの両肩にぽんと手をおいた。


「そんなこと言われてもそういう役なんだもの。」


 ミアが困惑して言った。


「だからってあいつはやりすぎだ!」


 雅秋は先ほどの劇の最中にリアスが舞台の袖でミアに馴れ馴れしくする態度に腹を立てていた。

 さらに舞台上でミアを抱き上げながらはけて行くとはまるで王子様気取りだ。



「雅秋?」


 ミアは肩に両手をかけ、真正面に顔を向けてきた雅秋の目をじっと見つめた。


 浴衣姿でメイクを施して更にかわいさが引き立てられたミアに見つめられた雅秋は内心ドギマギしていた。


「雅秋はリアスを気にし過ぎよ。いつまでもあのことにこだわらないで。」


 ミアは言った。





 俺の心は10月最初のあの月曜日からひどいハウリングを起こし始めた。


 原因はすべてこの目の前にいる俺の彼女ミア。


 ミア。ミアが俺の彼女になってまだ3ヶ月あまりだ。そのたった3ヶ月の間に俺たちの間には色んな事が起きた。

 すべてはミアのせいで。ミアに吸い寄せられてくるやつらのせいで。



 俺は今年4月に初めてミアを見かけて以来、この子を絶対俺の彼女にしようと決めていた。世間によくある一目惚れってやつだった。人目を引く美しい彼女を連れて歩くだけで俺のステータスは更に上がるだろう‥‥‥あの時はただそれだけだった。


 それからすぐに俺はミアとの接点を作るため、ミアに美術部の絵のモデルになってくれるよう頼みに行った。

 だがミアにはいつもそっけなく断られ続けた。しかし俺は諦めず、毎週のように彼女のクラスへ足を運びようやくオーケーをもらった。


 ミアが美術部に来るようになって知り得た彼女の内面は、見かけとは全然違うものだとわかった。


 ミアは目立つことを嫌う控え目で穏やかでうぶな女の子だった。彼女は自身が美しいことで受ける嫉妬や悪意をえらく恐れているようだった。悪くいえば小心者。もしかしたら過去に何かあったのかもしれない。


 そして真面目で成績優秀、誰にでも優しい。自慢げに何かをひけらかす事もなく誰かに悪意を向ける事もなくひっそりと佇む。こんな傑作な美貌とスラリとした肢体を持っているのに。それを利用して何かすることもなかった。


 こんな女の子は初めてだ。


 俺は思った。

 この子と一緒にいれば俺はどんなにか満たされ癒されるだろう。


 俺の求めていた理想像以上の理想がミアだった。

 俺は本気になった。



 大概の女子は俺とちょっと話したりちょっと笑いかけただけなのに俺を意識してくる。中には俺の気を引こうとあれこれしてくる子もいて俺は恨まれない程度に適当にあしらう。



 そんな俺の誘いをミアは一刀両断に断った。


 しかも、誰だか忘れてしまったが、わざわざかなりのイケメンを使いに寄こして。そいつから今後ミアを誘わないようにと釘をさされた。


 さすがに俺はへこんだ。俺と張り合えるイケメンを即座に送り込んでくるとは‥‥‥!

 この俺がまさかこんな目にあうなんて‥‥‥‥


 だが俺は諦めなかった。


 俺は二日間家で悩み抜いた末、ミアを待ち伏せて壁ドンして告った。さすがに俺がここまですれば落ちるだろう。



 いや‥‥‥‥今時珍しい清らか清楚系パーフェクト美少女の壁は厚かった。


 この俺がここまでしてんのに、この俺がこんなに本気を出してんのに!

 ミアは迷惑そうに俺から顔を背けた。



 だが天は俺に味方した。


 その後、俺は中庭で倒れ虚ろになっているミアを助けた。そのとき、ミアが意識朦朧になる前に俺とつき合うことを承諾した、ということで俺はミアに無理やり押し通した。


 ミアは俺の彼女になることに同意した記憶はない、と言いつつも俺の言葉を信じた。そして真面目なミアは自らの言葉の責任をとって俺の彼女になった。


 今だから言えるが、俺はあの時ミアを騙して彼女にした。自分自身さえ騙して正当化して。


 どうやらそのしっぺ返しが今来たようだ。



 俺は先月、生まれて初めて女に泣かされた。このミアに。俺はどうしても彼女の心が欲しかった。ミアには俺だけを見ていて欲しい。


 かわいくて誰にでも優しいミア。


 ミアは野に咲く美しく可憐な花。


 本人は目立たぬようにひっそり咲いているつもりでも全くそうではない。

 美しい花の蜜を奪おうと次々と虫が飛んでくる。俺はその虫を追い払うのにこの3ヶ月間てんてこ舞いだ。


 中には座家みたいに密かに俺の隙をついてまんまと蜜を奪ったやつがいる。



 ミアの優しさは一方で優柔不断だ。自分に想いを寄せてくる座家を排除しない。というか出来ない。すべてを優しく包み込もうとする。向こうが引いて行かない限りは。


 ミアに悪気がないのは解っている。だけど、そこはスパッと切るのが自分にとっても相手にとっても真の思いやりになるんじゃねぇか?



 こんなこと繰り返してたらそのうちミアのハーレム出来ちまうぜ?ミア、いい加減気づけよ!


 俺の頭の中で座家緊急非常警戒ベルは鳴り止まない。





「よお!甲斐。こんなとこでいちゃついてんじゃねーよ!」


ミアに憂いを込めて見つめられていた雅秋を冷やかす声がした。


「っなんだよ。桃山か。」


 雅秋と同じクラスの仲のいい男子が通りかかった。

 雅秋と同類の、更にチャラくなった雰囲気の男子だった。


 桃山はミアに上から下までさっと目線を這わせた後、ミアの顔をじろじろ見た。


「あ、あの‥‥‥初めまして。私、1年の真夏多ミアと申します。」


 目が合った桃山にミアは恐る恐る挨拶した。

 ミアの苦手なタイプだ。


「‥‥‥‥‥お、おう、俺は桃山桜果(おうか)よろ!ミアちゃん、ガチかわじゃん!完全理解!甲斐が変わっちまったのはミアちゃんのせいだぜ。お陰で俺は最近つまんねーんだからな。だから責任とって今度おれとも遊ぼうぜ!」


 桃山の目がミアに釘付けになっている。冗談ぽく言っているが、わりと本気度が高いのが雅秋にはわかった。


「おい、桃山!俺の目の前でふざけてんじゃねーぞ。」


 雅秋が鋭い目付きで言った。


「あはは!冗談だってー。俺、明日の生徒会主催のコスプレコンテスト出るじゃん?その準備でさ、この荷物、旧校舎の4Fの男子臨時更衣室の教室へ置きに行くとこ。」


「あん?そんなこと言ってたな。何になるんだよ?」


「ふっふーん。明日のお楽しみだからー。」


桃山が髪をかきあげながらちらりとミアを見た。


「ふんっ。もったいぶりやがって。俺、明日劇で忙しいから見られねーよ。」


「俺がそっちに行ってやるさ。ミアちゃんもいるんだろ?」


桃山はミアの顔を見てミアに聞いた。


「お前、おかしなコスプレで来んじゃねぇ!」


 ミアが答える前に雅秋が嫌そうに言った。


「まあまあ、そう言うなって!なぁ、ミアちゃん、会いに行くから待っててね。じゃあなー!甲斐!」


 桃山は浮かれて去って行った。





In my mind 美少女周囲ーーーの第3章がミアと雅秋の出会い編になってます。

( `・ω・´)ノ ヨロシクー

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